松野博一官房長官の定例記者会見が〝異様〟な状況になっているようだ。産経新聞が6日午後、ネットで報じた記事によると、同日午前の会見で、東京新聞の望月衣塑子記者が「私が来ているときには、大抵20分ぐらいで打ち切りになる」と苦情を申し立てたというのだ。
さっそく、会見の動画を確認してみた。会見時間は約20分だ。NHK、共同通信、北海道新聞、朝日新聞が質問し終わった時点で7分30秒ほどが経過した。そこに望月氏の質問が飛び込んできた。
望月氏は「すみません。ぎりぎりになって恐縮なんですが」と切り出し、「関東大震災直後の朝鮮人虐殺問題」や「木原誠二官房副長官をめぐる週刊文春の報道」などについて連続で問いただした。
そして、会見時間が16分を過ぎたころ、ひと悶着があった。
官邸報道室側が「この後、公務があるので最後の質問でお願いします」と呼びかけると、望月氏は「私が来ているときは、たいてい20分ぐらいで打ち切りになる。私がいないときは、20分超えもある」と語り、「少なくとも20分までは話を聞かせてほしい」と要望した。
この時点で、望月氏の質問時間は約9分にわたり、先述の4社よりも長かった。
松野氏は穏やかな口調で、「公務は、その日によって日程が違うのでご理解いただきたい。客観的な事実として、会見内における東京新聞さん(=望月氏)の質問に関しては、恐らく一番長くにわたって丁寧にお答えしていると認識している」と応じた。
結局、同日午前の会見時間の約3分の2を、望月氏による質疑応答が占めた。
私が望月氏の質問を聞いている限り、週刊誌の記事内容を確認するものや、公務に直結しないと思われるものも多い。松野氏は感情をあらわにせず、ほぼ淡々と応じているが、やはり時間が気にかかるのか、会見場後方の時計にチラチラと目をやることがある。
官邸には、東京新聞の政治部記者も常駐している。望月氏は今回、独自の質問を繰り返しつつ、自身の質問が制限されていると抗議したわけだが、これは東京新聞としての見解なのだろうか。
そもそも、望月氏は6月の参院法務委員会で、入管難民法改正法案採決をめぐり、傍聴席から発言(ヤジ)を繰り返したとして、問題になった。中立公正な記者の立場で委員会を傍聴しながらルールを破り、「国会や民主主義に対する冒涜」と指弾された。
望月氏の言動は、望月氏や東京新聞の思い描く「民主主義」「ジャーナリズム」なのか。それぞれの見解を、ぜひ聞いてみたい。(政治ジャーナリスト)