イタリアのメローニ首相=13日、マプト(EPA時事)
イタリアのメローニ首相=13日、マプト(EPA時事)

 【パリ時事】イタリアのメローニ首相(46)が就任して22日で1年。ファシスト党の流れをくむ極右「イタリアの同胞」の党首だけに、当初は「欧州で最も危険な女性」(ドイツ誌)と警戒された。しかし、ロシアの侵攻に直面したウクライナへの支援で米国や他の欧州諸国と足並みをそろえる手堅い外交を展開。西側諸国に安心感を与えたほか、国内世論の支持も厚く、安定した政権運営を続けている。

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 「われわれは火星人ではない。生身の人間だ」。イタリアで最初の女性首相となったメローニ氏は昨年11月、初外遊で訪れたベルギー・ブリュッセルの欧州連合(EU)本部で記者団にこう語った。政治信条が異なっても、会って話せば分かり合えるという趣旨だ。

 かつて「反ユーロ」などの極端な主張を唱えた欧州の極右政党の多くは穏健化し、一部が政権参画するまでになった。メローニ氏も暴力・専制のファシズムに「郷愁はない」と強調しつつ、野党時代のEU批判を控えて各国との協調をアピールする。

 ウクライナ支援では、イタリアがフランスと共同開発した防空システムを供与。侵攻開始1年の今年2月、メローニ氏はウクライナの首都キーウ(キエフ)を訪問し、ゼレンスキー大統領に「全面支援」を約束した。イタリアは対ロシア制裁を巡るEUの結束に水を差すと危ぶまれたこともあったが、杞憂(きゆう)に終わっている。

 一方、公約に掲げた不法移民の阻止は実現に程遠い。中東や北アフリカから密航船でイタリアに到着する入国者は今年に入って急増。見かねたEUが海上監視の強化に乗り出す事態となった。

 「もうけ過ぎ」とされる銀行を対象とした「超過利潤税」では失態を演じた。政権による8月の導入発表後、イタリア主要行の株価は一時10%近く急落。これを受けて課税規模をトーンダウンするなど、懸念の払拭に追われた。巨額の公的債務を抱えながら中・低所得層向けに減税を実施し、財政赤字の増大を容認しようとする姿勢も金融市場で不安視されている。

 先進7カ国(G7)でイタリアが唯一参加した中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に関しては離脱を検討中。来年はG7議長国として存在感を発揮できるか、メローニ氏の手腕が問われそうだ。