Rita Nazareth
- S&P500種は5日続落、利回り上昇と強い経済統計がドル押し上げ
- 為替で緊密な意思疎通行うと鈴木財務相-金は反発、原油は変わらず
米金融市場ではこの日も国債相場が下落。強い経済統計に加え、タカ派的な連邦準備制度理事会(FRB)当局者発言が相次いだことで、高い政策金利が長期化するとの観測が補強された。
国債 | 直近値 | 前営業日比(BP) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.73% | 3.2 | 0.68% |
米10年債利回り | 4.63% | 4.7 | 1.03% |
米2年債利回り | 4.99% | 5.6 | 1.14% |
米東部時間 | 16時34分 |
米国債は全面的に下落し、2年債利回りは再度5%の節目に迫った。ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は利下げを急ぐ必要はないと発言。利上げの可能性についての質問には、自身の基本シナリオではないとしつつ、金融当局のインフレ目標を達成する上で経済データが正当化する場合は、利上げもあり得ると語った。
株式市場ではS&P500種株価指数が5営業日続落。昨年10月以来の長期下落局面となった。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
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S&P500種株価指数 | 5011.12 | -11.09 | -0.22% |
ダウ工業株30種平均 | 37775.38 | 22.07 | 0.06% |
ナスダック総合指数 | 15601.50 | -81.87 | -0.52% |
モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は「今週出たデータの大半は、経済がなおもフルスロットルで猛進していることを示した」と指摘。「連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げ計画に課題を突きつけるだろう」と述べた。
米10年債利回りは約5bp上昇。株式市場では、S&P500種で最も影響力が強いテクノロジー銘柄が特に売られた。台湾積体電路製造(TSMC)はスマートフォンやパソコン(PC)販売がなお弱いとして、今年の半導体市場の成長見通しを下方修正した。ネットフリックスは引け直後に決算を発表。オリジナルプログラムの強力なラインアップと、パスワード共有規制が奏功し、新規の加入者数が予想を上回り、2020年以来の好調な1-3月期となった。
ニューヨーク連銀総裁に続き、アトランタ連銀のボスティック総裁も金利を据え置くことに違和感はないと述べ、年末に近づくまで利下げに踏み切ることは適切ではないとの考えを改めて示した。
ナットアライアンス・セキュリティーズの国際債券責任者、アンドルー・ブレナー氏は「FRB高官の発言はわれわれをますます神経質にさせている」と指摘。「地区連銀総裁2人の発言で状況はなおさら穏やかではなくなった」と述べた。
ブレナー氏によれば、2年債利回りが5%を上回れば次は5.2%が注目される。
先週の米新規失業保険申請件数は前週と変わらず抑制された水準となり、労働市場の健全さと整合的な内容となった。4月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数は予想を上回った。3月の米中古住宅販売件数は減少し、エコノミスト予想とほぼ一致した。
市場が織り込む米利下げ見通しは2週間前から後退しているが、今週はパウエルFRB議長の発言を受けてさらに後退した。現時点では、11月に25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)での利下げが始まるとの見方がまだ生きている。
今年はまったく利下げがないかもしれないと、JPモルガン・チェースのダニエル・ピント社長はみている。
「利下げが可能になるまで、もう少し時間がかかるかもしれない」と同氏はワシントンで開かれたイベントで発言。一方でインフレ沈静化への疑念が広がる中でも、利上げの可能性は「極めて低い」と述べた。
ランズバーグ・ベネット・プライベート・ウェルス・マネジメントのマイケル・ランズバーグ最高投資責任者(CIO)は、市場が抱える最大の不安はインフレだと指摘する。インフレは再び加速しており、年内1回であれ、2回であれ、利下げの可能性を後退させていると述べた。
「今年は利下げなしの見方を当社は固持する」とランズバーグ氏。「投資家はインフレ率と金利の両面において、より高く、より長くの状況に備えるべきだと当社は考えている。予測可能な将来において投資ポートフォリオをこうした力関係に調整しておくべきだろう」と述べた。
外国為替市場ではドルが主要10通貨に対してほぼ全面高。タカ派的なFRB高官発言を受けた米国債利回り上昇に、強い米経済統計が加わった。ワシントンを訪問中の鈴木俊一財務相は、為替市場に関しては日米、日米韓で緊密な意思疎通を行うと発言。また、為替は20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の議題にはなかったので発言はしなかったと述べた。これらの発言後、円の軟調な動きに総じて変わりはなかった。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1263.51 | 1.73 | 0.14% |
ドル/円 | ¥154.67 | ¥0.28 | 0.18% |
ユーロ/ドル | $1.0643 | -$0.0030 | -0.28% |
米東部時間 | 16時34分 |
ドルは対円で小幅高。前日の神田真人財務官による発言を受けてアジア時間の取引では一時153円96銭まで下げていた。
日本銀行の植田和男総裁はワシントンで、3月の政策変更については多くが混乱なく実施されたと評価してくれたと説明。仮に利上げを実施するならどういうデータを見るかという質問が他国からあったと話した。
ドルは主要10通貨の中でカナダ・ドルに対してのみ下げた。
国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事はドルの持続的な上昇は他の通貨にとって「懸念材料」であり、特にそれがいつまで続くのかはっきりしないためだと説明。「それが、私が各国から聞いていることだ」とし、「米金融当局は高金利をいつまで続けるのだろうか」と問いかけた。
地政学面ではウクライナとイスラエル、台湾への支援を盛り込んだ法案が米議会を通過する見通しとなっている。
欧州のトレーダーによれば、レバレッジファンドはドルの押し目で買いを入れる準備を整えている。
ユーロは対ドルで小幅安。欧州中央銀行(ECB)政策委員会メンバーのレーン・フィンランド中銀総裁は、利下げは6月が適切だろうと述べた。一方、ホルツマン・オーストリア中銀総裁は、6月利下げの必要性をまだ「完全」には確信していないと話した。
ニューヨーク原油相場はほぼ変わらず。イランがイスラエル核施設への攻撃を警告した一方で、ドル上昇も意識された。日中は2ドル近いレンジで上下に振れる荒い展開となったものの、前日に付けた3週間ぶり安値付近で終了した。ドルが上昇すれば、ドル建てで取引される原油は割高感が強まる
イランはイスラエルに対し、自国の核施設を攻撃しないようけん制し、攻撃を受ければ相応の報復措置を講じる構えを示した。ゴールドマン・サックス・グループは原油価格について、現時点では地政学的緊張を理由に1バレル当たり5-10ドルのプレミアムが付いており、新たな展開や緊張の激化がなければ下落する可能性があるとしている。
イラン、核施設が攻撃受ければ相応の報復と主張-イスラエルをけん制
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物5月限は前日比4セント(0.05%)高の1バレル=82.73ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント6月限は18セント(0.2%)安の87.11ドルで引けた。
金相場は反発。地政学リスクの高まりに加え、中央銀行や中国消費者による需要を背景に、買いが優勢になった。
米国と中国の関係悪化は、逃避先資産とされる金の買いをさらに誘発する可能性がある。バイデン米大統領は前日の演説で、中国について「排外主義的」だと指摘した。
この日発表された米経済指標は堅調な内容となり、早期の米利下げはないとの見方が強まったものの、金相場ではほとんど材料視されなかった。金は総じて、低金利の環境でパフォーマンスが好調となる傾向がある。
金スポット相場はニューヨーク時間午後2時18分現在、前日比0.8%高の1オンス=2380.92ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は9.60ドル(0.4%)高の2398ドルちょうどで終えた。
原題:Treasuries Hit as Hawkish Fed Views Keep Piling Up: Markets Wrap(抜粋)
Dollar Tracks Yields Higher After Policy Comments: Inside G-10(抜粋)
Oil Swings as Risk-Off Mood Vies With Increased Iranian Threats(抜粋)
Gold Rises With Traders Unfazed by US Reports That Ease Fed Bets(抜粋)