Rita Nazareth
- 取引終盤に円買い加速、対ドルで上昇率3%超える
- S&P500種は続落、日中は上昇も半導体銘柄の売りに押される
1日終盤のニューヨーク外国為替市場で円相場は突如上げ幅を拡大し、一時は153円04銭まで買われた。日本が祝日だった4月29日に一時160円17銭と約34年ぶりの安値を更新後に急騰した際の154円54銭を超えて円高・ドル安が進んだ。日本の通貨当局が円買い介入を実施している可能性があるとの観測が浮上している。
パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が連邦公開市場委員会(FOMC)会合後の記者会見で、次の行動が利上げになる可能性は低いと述べたことなどを受けてドルは下落し、ドル指数は一時0.5%下げる場面もあった。FOMCはバランスシートの縮小ペースを減速させる方針も示した。
FOMC、政策金利据え置き-インフレ沈静化の進展は失速 (3)
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1263.93 | -1.95 | -0.15% |
ドル/円 | ¥154.32 | -¥3.48 | -2.21% |
ユーロ/ドル | $1.0716 | $0.0050 | 0.47% |
米東部時間 | 16時54分 |
ジェフリーズの外国為替グローバル責任者ブラッド・ベクテル氏は「パウエル議長が利上げを示唆しなかったことへの安堵(あんど)感以外に、ドルが反応する材料はあまり見当たらない」と話した。
インディペンデント・アドバイザー・アライアンス(IAA)のクリス・ザッカレリ最高投資責任者(CIO)は「パウエル議長はタカ派的な記者会見を行わなかっただけでなく、ハト派的となるよう細心の注意を払った。予想を上回るインフレから予想を下回る経済成長率まで、あらゆる場面でデータの明るい面に目を向け、FOMCが利下げから利上げに舵を切ろうとしているとの見方を否定した」と述べた。
LPLファイナンシャルのクインシー・クロスビー氏は「FOMC声明は市場参加者が予想していたほどタカ派的ではなかった。利上げの可能性を示唆するような文言はなく、前のめりな市場が心地良いと感じる以上に高金利を長く維持するであろうと示唆したに過ぎない」と述べた。
米国債は上昇。米2年債利回りは5%を下回り、一時11ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の4.92%を付けた。金利スワップ市場では11月の利下げ観測が再び高まった。従来は12月の利下げ開始が見込まれていた。
国債 | 直近値 | 前営業日比(BP) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.75% | -3.0 | -0.64% |
米10年債利回り | 4.63% | -4.7 | -1.01% |
米2年債利回り | 4.96% | -7.7 | -1.53% |
米東部時間 | 16時54分 |
FOMCは政策金利を2001年以来の高水準である5.25-5.5%で据え置くことを決定した。金利据え置きは6会合連続。また、当局の資産ポートフォリオの縮小ペースを減速させる計画の概要を提示。米国債のランオフ(償還に伴う保有証券減少)のペースは現在、月間最大600億ドル相当だが、この上限を6月から250億ドルに減らす。前回、一連のバランスシート縮小を開始した2019年は金融市場が混乱。こうしたリスクを低減させることが狙い。
eToro(イートロ)のブレット・ケンウェル氏は「FOMCには利下げに踏み切るほどの確信はまだないかもしれないが、利上げは検討されていないと思われる点は注目に値する。さらに、バランスシートのランオフを減速させるというFOMCの計画は債券にとってポジティブなはずで、当局がそれほど遠くない将来に利上げが必要になると感じているのであれば、恐らくやらないだろう」と話した。
バンクレートのチーフ金融アナリスト、グレッグ・マクブライド氏は「FOMCは米国債のランオフペースを6月から月額250億ドルに減速させる方針を示した。バランスシートから放出される米国債が減れば、市場が吸収しなければならない国債の量も減る。これは今年これまでに急上昇してきた長期債利回りの抑制に役立つだろう」と述べた。
米株式市場ではS&P500種株価指数が続落。パウエル議長の記者会見中には、一時1%余り上昇していたが、半導体メーカーの売りに押され、引け前1時間に下げに転じた。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5020.30 | -15.39 | -0.31% |
ダウ工業株30種平均 | 37938.05 | 122.13 | 0.32% |
ナスダック総合指数 | 15594.29 | -63.53 | -0.41% |
この日発表された4月のISM製造業総合景況指数は需要減退が響いて低下し、再び縮小圏に転じた。一方で仕入れ価格は2022年にインフレがピークに達して以降で最も高い水準となった。3月の求人件数は減少し、3年ぶりの低水準となった。労働市場で軟化がさらに進んでいることが示唆された。
ニューヨーク原油先物相場は3日続落。米原油在庫が昨年6月以来の高水準に膨らんだことが、この日発表の統計で分かった。FOMCでは、当局者がインフレへの懸念を再び強めていることが示唆された。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は3月中旬以来の安値で引けた。この1カ月余りの間、下値支持線となっていた200日移動平均線も下回った。
米エネルギー情報局(EIA)が発表した週間統計で、米原油在庫は先週727万バレル増加し、2月上旬以来の大幅増となった。
BOKファイナンシャル・セキュリティーズのシニアバイスプレジデント、デニス・キスラー氏は「EIA統計で在庫が大幅増のサプライズとなり、大半のトレーダーが不意を突かれた」と指摘。移動平均線を割り込んだことによる売り加速、および米政策金利の高止まりを考えると、「原油に対するロングは魅力を失いつつある」と述べた。
パウエル議長はFOMC後の記者会見で、次の動きが利上げになる可能性は低いと述べたが、インフレ動向を巡る不確実性は相場の下押し圧力を強めるだろう。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物6月限は前日比2.93ドル(3.6%)安の1バレル=79ドルちょうどで終了。ロンドンICEの北海ブレント7月限は3.3%安の83.44ドルで終えた。
金スポット価格は3日ぶりに反発。FOMCは依然として利下げバイアスを維持しているとの見方が買い安心感につながった。相場はFOMCの政策決定が発表された後に一段高となった。
TDセキュリティーズの商品戦略グローバル責任者、バート・メレク氏は「FOMC声明には引き締めに関する協議があったことをうかがわせるものはなかった。金トレーダーにとっては、数回の利下げがあり得ることを確信させるものだ」と指摘。なお高水準にあるインフレに対するヘッジとして金を買う動きもあると述べた。
利息の付かない金投資にとって、金利低下は通常プラス材料となる。
金スポット価格はニューヨーク時間午後4時27分現在、前日比1.3%高の1オンス=2316.75ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限はFOMC決定前に、8.10ドル(0.4%)高の2311ドルちょうどで引けた。
原題:Dollar Slides After Fed Decision, Powell Comments: Inside G-10(抜粋)
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