占部絵美、萩原ゆき
- 物価・賃金が大きなポイント-円安は経済物価に潜在的に大きな影響
- 最近の円安について日銀の政策運営上、十分注視していくことを確認
日本銀行の植田和男総裁は7日夕、首相官邸で岸田文雄首相と会談し、為替が経済物価に与える影響などについて議論した。会談後、植田総裁は記者団に対し、基調物価への影響を注視する考えを示した。
植田総裁は、会談では物価・賃金情勢が大きなポイントの一つであるとともに、為替も議論したと述べた。その上で、円安は「経済物価に潜在的に大きな影響を与え得るものであり、最近の円安について日銀の政策運営上、十分注視していくことを確認した」と言明。今後「基調的物価上昇率にどういう影響が出てくるかについて注意深く見ていく」とも語った。
両者の会談は日銀が17年ぶりの利上げを決定した3月19日以来。
植田総裁は4月の金融政策決定会合後の会見で、円安進行による政策運営への影響について現時点で大きな影響を与えてはいないと説明。一方、企業の前向きな価格設定行動などを踏まえれば基調的物価に「跳ねるリスクもゼロではない」とし、無視し得ない影響が出るなら政策の変更理由になり得るとの見解を示していた。今回の発言を受け、植田総裁は円安への懸念を強める姿勢を示したとの見方が出ている。
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、植田総裁は円に対するトーンを修正しているようだと指摘。決定会合後の会見で「懸念を示さなかったことによって円安をさらに進める一因となってしまった後、今日の発言は市場をけん制している」と語った。その上で、日銀が物価の基調を確認できるのは早くても9月とし、日銀はそれまでに円安が行き過ぎないように時間を稼ぐ必要があると述べた。
植田総裁によると、今回の会談では、日銀が掲げる2%物価目標の持続的な達成という観点から「適切に政策運営していくこと。総理との間で密接に、あるいは政府と日本銀行の間で密接に連携を図って政策運営に努めていく点を確認した」という。
関連記事
- 日本は約3.5兆円の為替介入実施した可能性、日銀当座預金見通し示唆
- 29日の為替介入は5.5兆円規模の可能性、日銀当座預金見通しが示唆
- 為替の異常な変動「看過できない」、介入にコメントせず-神田財務官
- 日銀総裁、円安が基調物価に影響なら判断材料に-金融政策は維持