Chris Strohm、Sabrina Willmer

  • 新法は言論の自由を抑圧し、中小企業に打撃与えると主張
  • 新法が阻止されなければ2025年1月19日までにTikTokは閉鎖へ

動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」は、米国で成立した事実上の禁止法を巡り、米政府を提訴した。新法は親会社である中国の字節跳動(バイトダンス)がTikTok事業を売却しなければ、米国内でのアプリ利用を禁止する内容。

  TikTokはこれまで、新法が言論の自由を抑圧し、TikTokから経済的利益を得ているクリエイターや中小企業経営者を苦しめるとの考えを表明してきた。

  訴状では「米議会は史上初めて、単一の言論プラットフォームを永久的かつ全国的な禁止対象とする法律を制定し、世界で10億人余りが参加するユニークなオンラインコミュニティーにすべての米国人が参加することを禁じた」と主張。

  「新法により、2025年1月19日までにTikTokが閉鎖を余儀なくされ、プラットフォームを利用している1億7000万人の米国人を沈黙させることになるのは間違いない」と記した。

  新法が成立した背景には、中国政府が米国のユーザー情報を入手する、あるいは表示するコンテンツを通じて米国の世論に影響を及ぼしかねないとの国家安全保障上の懸念がある。

  バイデン政権にとっては厳しい闘いになるかもしれない。なぜ新法が正当化され、必要なのかを示すため、扱いに慎重を要する情報や機密情報の開示を迫られる可能性がある。これまで米政府関係者は、TikTokのアルゴリズムは国家安全保障上の脅威であり、中国政府による情報工作に利用される恐れがあると述べてきた。だが、政権はその主張を裏付ける具体的な証拠を提示していない。

  今回の訴訟は、期限が近づいても、バイトダンスがTikTokの買い手を見つけようとする意図がないことを示している。むしろ、新法は憲法修正第1条に違反しており、適正な手続きを経ていない違法な処罰であるなどとして、違憲との司法判断が示されることを望んでいるようだ。

  言論の自由の権利と国家安全保障上の利害の対立を争点とする今回の法廷争いは、連邦最高裁までもつれ込む可能性がある。

  コロンビア大学ナイト憲法修正第1条研究所のエグゼクティブディレクター、ジャミール・ジャファー氏は「禁止法の阻止を求めるTikTokの訴えは重要であり、成功すると予想している」と指摘。「憲法修正第1条は、よほどの妥当な理由がない限り、米国人が海外から思想、情報、メディアにアクセスすることを政府は制限できないと定めており、そのような理由はここには存在しない」と述べた。

原題:TikTok Sues US Government to Block US Divest-or-Ban Law(抜粋)