Rita Nazareth
- S&P500は5200を回復-次の大きな動き巡る投資家の予想は二分
- 新規失業保険申請は昨年8月以来の高水準-ドル売りの材料に
9日の米株式相場は上昇。S&P500種株価指数は5200を上回り、約1カ月ぶりの高値を付けた。この日発表の新規失業保険申請件数が予想を上回ったことで、米金融当局による年内利下げの観測が強まった。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5214.08 | 26.41 | 0.51% |
ダウ工業株30種平均 | 39387.76 | 331.37 | 0.85% |
ナスダック総合指数 | 16346.26 | 43.50 | 0.27% |
ロイトホルト・グループのダグ・ラムゼー最高投資責任者(CIO)は、少なくとも統計的には、S&P500種がさらに10%上昇することは十分可能だとみている。同氏は過去80年の強気相場について分析。特に失業率が4%未満と現在と同じぐらい低く、景気サイクルが成熟期にある局面に焦点を当てた。現在の株高が過去の長期連続安局面と史上最大の上げを記録した局面と肩を並べれば、S&P500種は5705で今年を終えることになるという。
S&P500種は3月下旬に付けた過去最高値まで1%未満に迫った。大型ハイテク銘柄ではアップルが1%上昇。事情に詳しい関係者によると、同社は今年、自社製プロセッサーを搭載したデータセンターを通じて人工知能(AI)機能の一部を提供する。
22Vリサーチが実施した投資家調査によると、S&P500種が次に10%動くのは上昇との回答が52%、下落との回答は48%とほぼ二分された。
同社創業者のデニス・デブシェール氏は「資産価格の次の大きな動きに対する見方が割れたままである限り、各相関関係は低水準にとどまり、銘柄選択とミクロテーマが支配的になると予想される」と述べた。
同調査では国債市場については、10年債利回りが4%に低下すると考えている人は68%で、5%に上昇するとの回答はわずか32%だった。
先週の新規失業保険申請件数は増加し、昨年8月以来の高水準となった。米金融当局者はいつ利下げに踏み切るのが適切となり得るのかを判断する上で、労働需要と賃金の伸びを注視している。サンフランシスコ連銀のデーリー総裁はこの日、金利は足元で景気を抑制しているが、インフレを米金融当局の目標に戻すには「もっと時間がかかる」かもしれないとの考えを示した。
SF連銀総裁、政策は抑制的もインフレ率低下には「もっと時間が必要」
モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのマネジングディレクター、クリス・ラーキン氏は「今回の統計が一過性のものなのか、それとも労働市場の本格的な冷え込みの一部なのかは、時間と共に明らかになるだろう」と指摘。「投資家は金融当局が9月まで利下げを待つという考えに慣れたのかもしれないが、いつまでも待っていられるという訳ではない」と述べた。
米投資会社ブラックストーンのジョン・グレイ社長は、根強いインフレが米金融当局の利下げに踏み切る力を圧迫するため、経済成長は減速するとの見通しを示した。9日にシドニーで開催されたマッコーリー・オーストラリア・コンファレンスで同氏は、「経済成長の減速が見込まれる」と述べ、「中央銀行はインフレ高進を望まないため、利下げは遅れるだろう。米金融当局は辛抱強い姿勢を取り、年内に1回は利下げを行う機会があろう」と付け加えた。
米国債相場は上昇。米10年債利回りは約4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下した。この日行われた250億ドル規模の30年債入札は需要が堅調だった。同入札では最高落札利回りが4.635%。入札前取引水準は4.642%だった。
国債 | 直近値 | 前営業日比(BP) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.61% | -3.0 | -0.64% |
米10年債利回り | 4.46% | -3.9 | -0.86% |
米2年債利回り | 4.81% | -2.3 | -0.48% |
米東部時間 | 16時37分 |
ニューヨーク外国為替市場ではドルが幅広い通貨に対して下落。朝方発表の新規失業保険申請件数に反応した。
イングランド銀行(英中央銀行)は政策金利を5.25%で据え置いたが、利下げを支持する金融政策委員会(MPC)メンバーが2人に増え、緩和開始に一歩近づいた。同中銀のベイリー総裁は、市場が今後数カ月の緩和ペースを過小評価している可能性を示唆。英ポンドはこれを受けて一時下げたが、その後にドル売りが強まると値を戻した。
円相場は、米新規失業保険申請件数の発表後は総じて1ドル=155円台半ばを中心とした値動き。ニューヨーク時間取引終盤には155円40銭を付ける場面もあったが、日米金利差を主因とした円安基調に著しい変化は見られていない。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1252.84 | -3.65 | -0.29% |
ドル/円 | ¥155.47 | -¥0.06 | -0.04% |
ユーロ/ドル | $1.0782 | $0.0034 | 0.32% |
米東部時間 | 16時37分 |
JPモルガン・インベスト・マネジメントのグローバル市場ストラテジスト、デービッド・レボビッツ氏は、 円が対ドルで下げ幅を拡大すれば、インフレ期待の不安定化につながりかねないと指摘。「市場は1ドル=160円が恐らく魔法のような水準だと示唆しており、それ以上弱くなるのは望ましくないと考えている。160円では介入の可能性を巡る臆測がさらに飛び交うことになるだろう」と語った。
また日本の消費者物価上昇は円安に促されているが、円が下落を続ければ「利益よりも害の方が大きくなる」とも発言。さらに「今年実施された利上げは、著しい金融引き締め政策に向かう一歩というよりは、いわばあいさつのようなものだった」と付け加えた。
ニューヨーク原油先物相場は小幅高。米原油在庫に関する強弱まちまちなデータを市場が消化する中、テクニカルな水準が下値を支えた。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は1バレル=79ドルを上回って引けた。これまで1カ月にわたって下落傾向が続き、相場は3月半ば以来の安値に下げていた。100日移動平均が原油の下落を食い止め、相対力指数(RSI、9日間)は原油の下落が行き過ぎだったことを示唆している。テクニカルな上昇を後押ししたのは、先週の米原油在庫が136万バレル減少したことを示す米エネルギー情報局(EIA)の統計だった。
シティー・インデックスの市場アナリスト、ファワド・ラザクザダ氏は、「次の重要な抵抗線は、心理的に重要な水準が200日移動平均と収束する80-81ドルだ」と分析した。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物6月限は27セント(0.3%)高の1バレル=79.26ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント7月限は30セント(0.4%)上昇し83.88ドルで引けた。
金スポット相場は3日ぶりに上昇。朝方発表された米新規失業保険申請件数で労働市場減速の兆候が新たに示されたことに反応した。
来週にはインフレ指標が発表され、米経済に関するさらなる手掛かりが得られそうだ。ボストン連銀のコリンズ総裁は前日、需要を抑制し物価上昇圧力を低減するには、おそらく従来の想定以上に長く金利を高水準に維持する必要があるとの考えを示唆した。
米ボストン連銀総裁、インフレ2%目標達成には一段の時間要する公算
金スポット価格はニューヨーク時間午後3時3分現在、28.74ドル(1.2%)高の1オンス=2337.59ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は18ドルちょうど(0.8%)上昇の2340.30ドルで引けた。
原題:
S&P 500 Is Back to 5,200 as Traders Ride Momentum: Markets Wrap
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