Rita Nazareth
- 円は一時157円20銭まで下落、1日の介入観測前の安値水準に近づく
- ハイテク株総崩れの中でエヌビディアは逆行高、1000ドルの大台突破
23日の米国株式市場は続落。米購買担当者指数(PMI)統計が好調な企業活動とインフレ再加速を示す内容となったことで、米金融当局が利下げを急がないとの見方が強まった。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5267.84 | -39.17 | -0.74% |
ダウ工業株30種平均 | 39065.26 | -605.78 | -1.53% |
ナスダック総合指数 | 16736.03 | -65.51 | -0.39% |
S&P500種は5300の水準を割り込んだ。大型ハイテク株はエヌビディアを除き軒並み安。堅調な売上高見通しを示したエヌビディア株は9%急伸し、1000ドルの大台を突破した。ダウ工業株30種は1.5%下落。航空機大手ボーイングが7%余り下げ、ダウの足を引っ張った。ボーイングのブライアン・ウェスト最高財務責任者(CFO)は、現金燃焼が4-6月(第2四半期)および通年にわたって続くとの見通しを示した。
ボーイングの現金燃焼続く、現金収支は通年流出に-中国に納入できず
S&Pグローバルが発表した5月の総合PMI(速報値)は3ポイント余り上昇の54.4と、2022年4月以来の高水準となった。また総合の仕入れ価格指数は昨年9月以降で2番目の高さに上昇。販売価格指数も上がった。
米総合PMIが上昇、22年4月以来の高水準-インフレ再加速 (1)
FOMC日程に連動したオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)では、0.25ポイントの利下げが完全に織り込まれている時期が12月に後ずれした。前日は11月の利下げ開始が確実視されていた。年内に見込まれる利下げ幅は合計33bpと、前日の約39bpから縮小した。
ストラテガス・セキュリティーズのドン・リスミラー氏は「米金融当局者は、インフレ抑制で一段の進展を確認したい意向を示している。幸いにも、米金融当局が長期にわたり高金利を維持できるほど米経済は十分に力強いようだ」と指摘。「当社では引き続き、9月の利下げ開始を予想している」と述べた。
22日公表された4月30日-5月1日開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨によると、政策金利をより長期に高水準で維持することが望ましいとの認識で当局者の見解が一致していた。またインフレ率を当局の目標に下げる上で金融政策が十分に景気抑制的かどうかを巡り、「多く」が疑問を抱いていたことも分かった。
FOMC議事要旨、より長期に高水準での政策金利維持が望ましい (2)
FHNファイナンシャルのクリス・ロウ氏は議事要旨について「米金融当局が追加利上げの可能性は低いとみており、明らかに基本シナリオとは考えていないことを示した」と指摘。一方で「インフレが予想通りに鈍化しなければ、利上げの可能性を排除しないことも改めて想起させた」と述べた。
一方、JPモルガン・チェースのトレーディングデスクでは、人工知能(AI)ブームの申し子であるエヌビディアがまたも市場予想を上回る好決算を発表したことに加え、米経済の底堅さが鮮明になっていることを受けて、S&P500種にはさらなる上値余地があるとみている。
S&P500に上値余地、エヌビディアや米経済がけん引ーJPモルガン
米国債市場では、年限全般で利回りが大幅上昇。堅調な企業活動と雇用市場の引き締まりを示す指標により、米利下げ開始予想が年末に後ずれした。
国債 | 直近値 | 前営業日比(BP) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.58% | 4.3 | 0.95% |
米10年債利回り | 4.47% | 5.3 | 1.20% |
米2年債利回り | 4.94% | 6.6 | 1.36% |
米東部時間 | 16時55分 |
米金融政策への感応度が高い2年債利回りは一時8ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余り上昇して4.955%と、5月2日以来の高水準を付けた。米国は27日がメモリアルデー(戦没者追悼記念日)の祝日で、連休を控えて取引量は平均を下回った。
好調なPMI統計に加え、先週の新規失業保険申請件数(5月18日終了週)は21万5000件と、前週比8000件減った。11日終了週も同程度の減少となっており、2週間の減少幅としては昨年9月以来最大となった。
米新規失業保険申請は減少、2週間の減少幅としては昨年9月以来最大
データ発表後の利回り上昇で、インフレ調整後の実質利回りも押し上げられた。こうしたコンセッションにもかかわらず、10年物インフレ連動米国債(TIPS)入札(発行額160億ドル)では、最高落札利回りが2.184%と、入札前取引(WI)水準を約2.4bp上回った。これは需要が予想に届かなかったことを示唆している。
ニューヨーク外国為替市場では、円が対ドルで下落。一時は157円20銭と、3週間ぶりの安値に沈んだ。堅調な米指標を受けて米国債利回りが跳ね上がり、円売り・ドル買いの流れが強まった。
円はニューヨーク時間1日の取引で日本の通貨当局の介入と思われる動きで急騰しており、その前につけていた円安・ドル高水準に23日は近づいた。ただ、その後は下げ渋る展開となった。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
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ブルームバーグ・ドル指数 | 1252.53 | 1.77 | 0.14% |
ドル/円 | ¥156.95 | ¥0.15 | 0.10% |
ユーロ/ドル | $1.0814 | -$0.0009 | -0.08% |
米東部時間 | 16時55分 |
円は対ユーロでも売られ、一時は1ユーロ=170円台に下落。4月29日(171円56銭)以来の安値をつけた。
イエレン米財務長官は、為替介入はめったに使用されない手段であるべきで、介入に踏み切る際には十分な警告が発せられる必要があるとの考えをあらためて述べた。
イエレン長官、介入は「まれであるべきだ」と強調-事前の伝達も必要
日本銀行の植田和男総裁は日本経済について、1-3月期の実質国内総生産(GDP)が再びマイナス成長となったものの、「持ち直すとみている全体的な姿に、今のところ変化はない」との見解を示した。
植田日銀総裁:日本経済、持ち直していくとの見方に変化はない
原油相場は4日続落。全般的な投資センチメントが悪化した。夏のドライブシーズン開始を控え、現物市場に軟化の兆しが見られることも影響した。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物がバレル当たり77ドルを割り込んで引けたのは、昨年2月末以来。原油の需給ファンダメンタルズは視界不良で、相場は金融市場全体の動向に流された格好。22日の統計では、主要な原油貯蔵拠点であるオクラホマ州クッシングの在庫が10カ月ぶり水準に増加したことが示された。メモリアルデーの連休を控えて、ガソリン需要はわずかに改善した。
原油価格は今年のピークから約12%下落。世界の需要は年間ベースで過去最高に向かっているものの、米州での大量生産や、中国経済の先行き不安、米金融政策の予測が難しいことが価格を押し下げている。
こうした向かい風を受けて、資産運用会社は原油価格の上昇に賭ける取引を縮小。北海ブレント原油のプロンプトスプレッド(当限月と来限月の価格差)は弱気を示唆するコンタンゴ(順ざや)に近づいている。
石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成される「OPECプラス」が6月1日に開く会合は、現行の生産抑制措置を今年下期に延長すると広く予想されている。ロシアは4月に枠を超えて生産した分を穴埋めすると確約したが、過去の実績に対する評価は割れている。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物7月限は、前日比70セント(0.9%)安い1バレル=76.87ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント7月限は54セント下げて81.36ドル。
ニューヨーク金は3日続落。米経済データでインフレ再加速と企業活動の拡大が示され、利下げが先送りされる可能性が意識された。
S&PグローバルのPMI統計を受けて、米国債利回りは上昇し、金スポットは一時2%下げた。高金利は利息を生まない金投資の魅力を薄れさせる。
TDセキュリティーズの商品戦略責任者、バート・メレク氏は「製造業は拡大モードに復帰し、サービス業は勢いを強めている」と指摘。「FOMCの仕事はこれで一段と複雑になるだろう」と述べた。
利回り上昇で、資産運用者が金の強気ポジションを維持する代償は高くなるとメレク氏。週初の過去最高値更新に続く利益確定の売りが、この日も続いたという。
金は年初から約14%高付近。中央銀行の買いや、アジアでの強い需要、ウクライナや中東の戦争による逃避に支えられている。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時8分現在、前日比45.22ドル(1.9%)安い1オンス=2333.63ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は2.3%下げて2359.70ドルで終了した。
原題:Stocks Join Losses in Bonds as Fed-Cut Bets Wane: Markets Wrap(抜粋)
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