Rita Nazareth

  • 米国債は2年債と5年債の入札での軟調な結果に反応して下落
  • ポンドは対円で16年ぶり高値付ける-200円65銭まで上昇
Stocks Bounce in Final Stretch of Stellar Quarter
Photographer: Yuki Iwamura/Bloomberg

28日の米金融市場では国債が大きく売られた。米国債の入札が軟調な結果となったことが背景にある。トレーダーは米金融政策の見通しに関する手掛かりを得ようと、経済データや金融当局者の発言に注目している。

国債直近値前営業日比(BP)変化率
米30年債利回り4.66%9.22.01%
米10年債利回り4.55%8.11.81%
米2年債利回り4.98%3.20.66%
  米東部時間16時42分

  米国債は5年債入札の結果が発表された後に下げを拡大。午後に実施された5年債入札(発行額700億ドル)では、最高落札利回りが4.553%と、入札前取引(WI)水準の4.540%を上回った。午前中に実施された2年債入札(発行額690億ドル)も軟調な結果となった。経済データでは、5月の米消費者信頼感指数が市場の予想外に上昇。ただインフレへの懸念が強まっていることも示された。

米消費者信頼感、4カ月ぶりに上昇-インフレへの懸念は強まる

  ブック・リポートの著者、ピーター・ブックバー氏は「5年債入札が低調だったことを受けて米国債利回りはこの日の最高に上昇した」と指摘。「その前に実施された2年債入札もパッとしない内容だった。あすは7年債の入札がある」と述べた。

  10年債利回りは一時8ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇して4.54%を付けた。

Treasury Yields Jump After Weak US Bond Sales

  米国株市場ではS&P500種株価指数がほぼ変わらず。個別銘柄では半導体大手エヌビディアが高い。テクノロジー系ニュースサイトのジ・インフォメーションによると、イーロン・マスク氏はエヌビディアのGPU(画像処理半導体)「H100」を使い、人工知能会社xAIのスーパーコンピューターを構築することを目指している。

エヌビディア株が3日続伸、決算発表後に時価総額は4600億ドル拡大

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数5306.041.320.02%
ダウ工業株30種平均38852.86-216.73-0.55%
ナスダック総合指数17019.8899.090.59%

  モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は「今週は通常より短いが、忙しい1週間になりそうだ」とした上で、「先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨はタカ派寄りのトーンだったことから、トレーダーは当局が利下げしやすくなるような落ち着いたデータを目にしたいだろう」と述べた。

  祝日明けとなった米株式市場はこの日、決済日を約定日(トレードデート)の翌営業日とする「T+1」システムに移行した。

ウォール街、1世紀ぶりにT+1株取引に復帰-完了までの時間が半減

  この日はまた、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁の発言も意識された。総裁は、金融当局の政策スタンスは景気抑制的だが、追加利上げの可能性を完全に排除したわけではないとの考えを示した。

ミネアポリス連銀総裁、利上げの選択肢を完全には排除せず 

  金融当局が重視するインフレ指標は鈍化が示されそうだ。31日に発表される4月の米個人消費支出(PCE)コア価格指数は前月比0.2%上昇が予想されている。実際にそうなれば、年初以降で最も低い伸びとなる。

  スワップ市場は現在、2024年全体で約30bpの米利下げを織り込んでいる。これはつまり、年内1回の利下げが予想されていることを意味する。

  FHNファイナンシャルのクリス・ロウ氏は「最初の米利下げは11月ないし12月になると見込まれる」とし、「FOMCは複数の良好なインフレデータを求めている。『良好』が何を指すかについては、ウォラー理事などは1-3月はもちろん、4月よりも総じて良い内容であるべきだということを示唆している」と述べた。

  ニューヨーク外国為替市場ではドルが上昇。一時軟調な展開となっていたが、午後に上げに転じた。米金融当局者の発言や消費者信頼感の上昇を受けて米国債利回りが上げたことに反応した。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1249.111.270.10%
ドル/円¥157.19¥0.310.20%
ユーロ/ドル$1.0858-$0.0001-0.01%
  米東部時間16時43分

  ブルームバーグ・ドル・スポット指数は0.1%上昇。円は対ドルで下落し、1ドル=157円台前半。午前中には156円59銭まで上げる場面もあった。

  この日はまた、ポンドが円に対して16年ぶりの高値を付けた。ユーロとドルに対しても、それぞれの節目となる高値水準へ近づいている。イングランド銀行(英中央銀行)が他の中央銀行よりも長く金利据え置きを続けるとの見方をトレーダーは強めている。

  ポンドは対円で200円65銭まで上昇した。

ポンドが上昇、対円で16年ぶり高値-上昇余地まだあるとの声も

  マネックスの外国為替トレーダー、ヘレン・ギブン氏は「他のG10通貨の中央銀行が現在予想されているよりもはるかに金融政策を緩和して市場を驚かせない限り、円には買う理由がほとんどない」と述べた。

  ニューヨーク原油は中東情勢の緊張激化を背景に大幅上昇。紅海でギリシャ系の商船が攻撃されたほか、イスラエル軍の戦車がガザ地区ラファの中心部に達したことが原油の買いを促した。

  先週は相次ぐ売りで3カ月ぶり安値に下げ、売られ過ぎの領域に入っていた。潤沢な供給を示す兆候も価格を圧迫していた。この日はイスラエル軍のラファ中心部侵攻と紅海での商船攻撃で、先週にはなかった地政学的リスクプレミアムが戻った。

  みずほ銀行のアジア経済戦略責任者、ビシュヌ・バラサン氏は「地政学的なリスクから在庫積み崩し、OPECが減産維持に傾いていると見られることなど、さまざまな要因が重なり、原油価格は上振れしやすくなっていると思われる」と指摘。しかしながら「ガザの状況は積極的なショートに対する警告にすぎず、大胆な強気サインとはまったく異なる」と述べた。

Oil Rebounds From February Lows | Geopolitical tensions and technicals signal selloff was overdone
上段:WTI先物と100日移動平均、下段:WTI先物の相対力指数(9日ベース)出所:NYMEX、ブルームバーグ

  イスラエルとエジプト部隊が27日にラファ検問所で衝突し、エジプト兵1人が死亡したことも地政学的リスク増大として意識された。26日にはイスラエルの空爆で、ラファ北西部にある避難所密集地で推定45人のパレスチナ人が死亡。戦争はエスカレートを続けるものの、これまでのところ世界の3分の1を賄う中東からの原油供給に変化はない。ただイエメンの親イラン武装組織フーシ派による船舶攻撃で、一部の供給ルートは迂回(うかい)を余儀なくされている。

  地政学的なリスク継続と、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成される「OPECプラス」による日量約200万バレルの減産、さらにそれが今年上期も継続される見通しが影響し、今年の原油相場は上昇してきた。OPECプラスは2日に会合を開く。それでも需要不振の兆候を嫌気し、価格は4月上旬からは下げており、北海ブレントのプロンプトスプレッド(当限月と来限月の価格差)は弱気を示唆する順ざやに近づいている。

  夏のドライブシーズン開始を告げるメモリアルデーの祝日を通過した現在、ガソリン需要動向も注目されている。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物7月限は、前営業日比2.11ドル(2.7%)高い1バレル=79.83ドルで終了。前日は米祝日で7月限の決済はなかった。ロンドンICEの北海ブレント7月限は1.12ドル(1.35%)上昇の84.22ドル。

  金スポット価格は小幅高。米利下げのタイミングを左右しかねない物価データの発表を今週末に控えた相場は、ミネアポリス連銀総裁やクリーブランド連銀総裁など、当局者発言を受けてもみ合う展開となった。

  31日の個人消費支出(PCE)より前には、最新の地区連銀経済報告(ベージュブック)などの発表も控えている。この日は3月の米20都市住宅価格指数が発表され、前年比での伸び加速が明らかになった。5月の米消費者信頼感指数は予想外に上昇した。

Gold Wavers as Traders Await US Inflation Data | Metal hit all-time high last week
金スポット価格出所:ブルームバーグ

  金は先週、1オンス当たり2400ドルを超えて史上最高値を更新。経済および地政学的なリスクが深刻化し、金投資を促した。価格はその後、最高値から約4%離れたものの、この先さらに上昇するとみるアナリストは多い。

  金が先週付けた過去最高値から下がってきた動きについて、ジュリアス・ベアの商品ストラテジスト、カルステン・メンケ氏は「先物市場でのポジション手じまいが主な原因のようだ。先物市場では短期の投機トレーダーやトレンドフォロワーが価格上昇に賭けるポジションを積み上げていた」と説明。「この動きは需給ファンダメンタルズの好ましい環境に変化が起きたというよりも、極めて強気な市場のムードが冷えてきたのだと考える」と述べた。

  金スポット価格はニューヨーク時間午後2時21分現在、前日比4.15ドル(0.2%)高い1オンス=2355.12ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は22.40ドル(1%)高い2379.30ドルで終了した。

原題:Treasury Yields Spike After Pair of Weak US Sales: Markets Wrap(抜粋)

Dollar Tracks Yields Higher After Data, Auctions: Inside G-10

Oil Recovers From Selloff Amid Escalating Middle East Tensions

Gold Wavers as Traders Mull Fedspeak, Await US Inflation Data