Rita Nazareth
- NYSEで一時障害、S&P500種は引け間際までマイナス圏
- ドルはほとんどの通貨に対し下落、原油はOPECプラス受け大幅安
3日の米金融市場では米国債が上昇。弱い製造業統計を受けて米利下げの余地が広がったとの見方が強まった。米供給管理協会(ISM)の統計によると、米国の製造業活動は5月に縮小ペースが加速した。
国債 | 直近値 | 前営業日比(BP) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.54% | -11.0 | -2.36% |
米10年債利回り | 4.39% | -10.8 | -2.40% |
米2年債利回り | 4.81% | -6.5 | -1.33% |
米東部時間 | 16時48分 |
米国債市場ではほとんどの年限で利回りが約10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下し、約1週間ぶりの低水準となった。朝方の市場では予想外に弱かったISM統計と、その物価指標を材料に買いが入った。原油安も米国債相場の上昇を支援した。
10年債利回りは5月17日以来の低水準まで下げた。金利スワップ市場では年末までに約40bpの利下げが織り込まれている。5月31日時点では33bpだった。連邦公開市場委員会(FOMC)11月会合の時点で織り込まれている利下げ幅は約24bp、従来は19bpだった。
CIBCプライベート・ウェルスマネジメントの債券責任者、ゲーリー・プジージオ氏はISM統計について「いくつかの経済トレンドを再確認させてくれた。鈍化するインフレと、減速する経済成長、そしてタイトな労働市場だ」と指摘。「金利先物市場に織り込まれる今年の利下げ確率は上昇するだろう」と述べた。
ニューヨーク証券取引所(NYSE)ではテクニカルな障害で、十数もの銘柄が急激な変動に伴い一時売買停止となった。S&P500種株価指数は取引中の大半において下落していたが、引け間際にプラス圏に浮上した。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5283.40 | 5.89 | 0.11% |
ダウ工業株30種平均 | 38571.03 | -115.29 | -0.30% |
ナスダック総合指数 | 16828.67 | 93.65 | 0.56% |
モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は「決算シーズンがほぼ終了し、市場の関心はインフレ沈静化が続くのか、あるいは金利を『より高く、より長く』維持する状況から抜けられないのか、という点に集中するだろう」と指摘。「今週発表される雇用統計が次の大きな試金石だ」と述べた。
今週は7日の雇用統計以外にも労働市場に関する指標が複数発表される。
来週のFOMCでは、利下げを急がない姿勢が引き続き示唆されると予想されている。金利スワップ市場が織り込む0.25ポイント利下げの確率は、12月に初めて100%になる。今年の年初時点ではおよそ6回の利下げが予想されていた。3月時点でのFOMC予測では、3回の利下げが見込まれていた。
TDセキュリティーズのオスカー・ムニョス氏は「今週発表される求人件数がまた弱い数字となれば、労働市場はもはや短期的なインフレを有意に脅かしはしないという見方を補強する可能性がある」とも指摘した。
マクロ経済は景気減速、あるいはリセッション(景気後退)がこの先迫っているとのシグナルを送っているが、投資家は懸念していないようだと、JPモルガン・チェースのマルコ・コラノビッチ氏は指摘する。株式市場の高いバリュエーションと明るいセンチメントが続いていることが理由だという。
この1年間での失業増加と、住宅販売の減少、2年近くにわたる国債利回りの逆ざやに起因するリスクが軽視されており、株価指数は過去最高値を更新、もしくはその付近にあるとコラノビッチ氏。夏場はディスインフレ期待と「ノーランディング」の見方、そして企業決算の強さという「一貫しない」状況となり、株価の上昇余地は限られる見通しだという。
モルガン・スタンレーのマイケル・ウィルソン氏は、自身の強気シナリオが今のところ有効だと話す。政府債務の増加で支出が引き続き拡大すると指摘。債券市場が緊張の高まりを示唆しない限り、株式を含む資産価格は短期的に上昇すると予想した。
個別銘柄のニュースではジェットブルー・エアウェイズの4-6月(第2四半期)売上高が、従来の想定をやや上回るもようだ。ウエイスト・マネジメントは医療廃棄物処理サービス会社のステリサイクルを約58億ドルの現金で買収することで合意した。
ビル・アックマン氏は自身の投資会社パーシング・スクエアの新規株式公開(IPO)計画に先立ち、同社の株式10%を105億ドルで戦略的投資家に売却した。映画製作会社スカイダンス・メディアはパラマウント・グローバルとの合併計画の一環として、パラマウントの議決権付き株式を保有する投資家に1株当たり23ドルを提案する予定だ。
外国為替市場ではドルがカナダ・ドル以外のすべての主要10通貨に対して下落。5月のISM製造業統計を受けた国債利回りの低下が影響した。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1251.68 | 0.28 | 0.02% |
ドル/円 | ¥156.11 | -¥1.20 | -0.76% |
ユーロ/ドル | $1.0902 | $0.0054 | 0.50% |
米東部時間 | 16時49分 |
来週のFOMCを控え、連邦準備制度理事会(FRB)当局者は発言を控えるブラックアウト期間に入っている。
ドルは対円で日中ベースでは5月21日以来となる155円95銭まで下げた。いずれの方向でもまずまずの活発な取引だった。
米国証券保管振替機構(DTCC)のデータによれば、対ドルでの円オプションは5月3日以来の弱気傾斜となっている。
日本の5月のauじぶん銀行製造業PMIは50.4、4月49.6
ニューヨーク原油先物相場は大幅安。石油輸出国機構(OPEC)と非OPEC主要産油国で構成する「OPECプラス」が、予想に反して年内に減産規模を縮小する計画を示し、原油市場でここ数カ月続く弱気のモメンタムがさらに強まった。
OPECプラス、減産延長で合意-10月以降は徐々に削減幅縮小へ (2)
原油の国際指標となる北海ブレントは78ドル台で終了。ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は74ドル近辺に下落。両指標とも、2月以来の安値となった。
OPECプラスは2日の閣僚級会合で、10月から減産幅を縮めることで合意。減産を巻き戻すタイミングは、多くの市場参加者が予想していたより早まった。減産は7-9月(第3四半期)は完全に実施され、10月から12カ月にわたり徐々に規模を縮める。
地政学リスクが後退し、需要に軟化の兆しが見られる中、原油は過去2カ月にわたり下落基調となっている。現物市場でも軟化の兆候が表れており、北海ブレントのプロンプトスプレッド(当限月と来限月の価格差)は13セントに縮小し、弱気を示唆するコンタンゴ(順ざや)に近づいている。これは近い将来に供給が潤沢になるシグナルだ。
TDセキュリティーズの商品ストラテジスト、ライアン・マッケイ氏は3日付のリポートで、「市場は、10月以降の自主減産縮小を受け入れつつある」と指摘。「供給リスクプレミアムの緩和はこれまで既に価格とスプレッドに重しとなっており、OPECの合意はその流れを変えるような役割をほとんど果たしていない」と分析した。
ゴールドマン・サックス・グループはOPECプラスの決定について、原油市場にとって弱気要素だと指摘。一方でUBSグループとRBCキャピタル・マーケッツは、OPECプラスが今後も市場をコントロールしていくとの確信を示した。大半のアナリストは、OPECプラスが年末まで減産を延長すると予想していた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物7月限は前営業日比2.77ドル(3.6%)安の1バレル=74.22ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント8月限は3.4%安の78.36ドルで引けた。
金スポット相場は上昇。米製造業活動の指標が低調な内容となったことで、米金融当局に今年利下げする余地が生まれるとの見方が広がった。
米金融当局者らは、インフレ率が目標の2%に向けて持続的に低下していることを示す証拠が増えるまで、政策金利を長期にわたり高水準で据え置く可能性があると述べている。市場では今週、雇用関連指標に注目が移る。7日には5月の米雇用統計が発表される。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時19分現在、前営業日比20.51ドル(0.9%)高の1オンス=2347.84ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は23.50ドル(1%)上昇の2369.30ドルで引けた。
原題:Treasury Yields Sink as Weak Data Fuel Fed Bets: Markets Wrap(抜粋)
原題:Treasuries End Higher After Weak ISM Factory Gauge, Oil Slump(抜粋)
原題:Dollar Drops Against Most Peers After Weak ISM Data: Inside G-10(抜粋)
原題:Oil Slumps as OPEC’s Surprise Plan to Raise Output Adds to Gloom(抜粋)
原題:Gold Rises After US Manufacturing Print Boosts Fed Rate-Cut Bets(抜粋)