Rita Nazareth

  • S&P500種は4日続伸、今年に入って34回目の最高値更新
  • デリバティブ市場、年内2回の米利下げを再び完全に織り込む
Wall Street weighs jobs data.
Wall Street weighs jobs data. Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

5日の米株式市場でS&P500種株価指数は4日続伸。雇用統計を受け、寄り付き直後は売り買いが交錯する展開となったが、結局は今年に入って34回目の最高値更新となった。景気減速の兆候よりも年内利下げ見通しの方が強く意識された。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数5567.1930.170.54%
ダウ工業株30種平均39375.8767.870.17%
ナスダック総合指数18352.76164.460.90%

  6月雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比20万6000人増と伸びが減速。過去2カ月分は計11万1000人下方修正された。平均時給の伸びも減速した一方、失業率は4.1%に上昇した。

米雇用統計、雇用者数と賃金の伸び鈍化-失業率は4.1%に上昇

  ルネサンス・マクロ・リサーチのニール・ダッタ氏は同統計について、「9月の利下げ観測を強めるはずだ。経済状況は冷え込んでおり、連邦公開市場委員会(FOMC)にとってはトレードオフが変わってくる。結局のところ失業率が上昇しており、それこそがFOMCの経済予測に反映される」と述べた。

  トレードステーションのデービッド・ラッセル氏は「雇用市場はまだ壊れることなく、腰折れしつつある状況だ。これは利下げの論拠を支える。過熱し過ぎてもいないし、冷え込み過ぎてもいない『ゴルディロックス』の状態にある。9月利下げの可能性は十分にある」と語った。

【米雇用統計】FOMCに9月利下げの確信与える-市場関係者の見方

Stocks Hit All-Time Highs

  米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は9日に上院で、10日に下院で金融政策に関する半期に一度の証言を行う。

  ネッド・デービス・リサーチの米国担当チーフストラテジスト、エド・クリソルド氏は「市場にとって最大のリスクは引き続き米金融当局だ」と指摘。「リセッション(景気後退)リスクは低く、企業の利益成長は改善しつつあり、経済データは年内利下げを指し示している。しかし、今年前半の相場がすでに力強く上昇しただけに、ネガティブサプライズがあれば、大きく下げる可能性がある」とした。

  米国債相場は上昇(利回りは低下)。雇用統計の発表を受け、市場では年内2回の利下げ観測が再び強まっている。

国債直近値前営業日比(BP)変化率
米30年債利回り4.47%-5.5-1.21%
米10年債利回り4.28%-8.2-1.89%
米2年債利回り4.60%-10.2-2.18%
  米東部時間16時37分

  2年債利回りは10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の4.60%と、4月1日以来の低水準をつけた。

  デリバティブ市場では、年内2回の利下げが再び完全に織り込まれ、9月に利下げが開始される確率は約76%とみられている。

  ソーンバーグ・インベストメント・マネジメントの共同投資責任者、ジェフリー・クリンゲルホーファー氏は「国債相場には上昇余地がある」と指摘。「労働市場のバランスが回復するのに伴って穏やかな緩和サイクルに乗り出す」という「非常に強いバイアス」を米金融当局が持っており、インフレが下振れする可能性もあると語った。

Two-Year Treasury Yields Slide in Wake of US Jobs Data | Yields decline to touch lowest since early April

   市場では、先週の討論会後に選挙戦からの撤退圧力が高まっているバイデン大統領を巡る動向についても警戒感が広がっている。

  11日に発表される6月米消費者物価指数(CPI)など、来週の各インフレ統計にも関心は高まっている。

  ブラックロックのポートフォリオマネジャー、ジェフリー・ローゼンバーグ氏は「9月FOMCを決定づけるのは一連の新たなデータであり、来週そして来月のインフレ統計が何より重要だ」とブルームバーグTVで発言。「一部に相反する流れがあるのが少し厄介だ」と語った。

  外国為替市場ではドルが下落。主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は4日続落し、3週間ぶり安値を付けた。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1260.27-2.31-0.18%
ドル/円¥160.79-¥0.49-0.30%
ユーロ/ドル$1.0840$0.00280.26%
  米東部時間16時37分

  円相場は米雇用統計発表後、一時1ドル=160円35銭まで上昇。ただ、その後は161円台前半に下げる場面もあるなど、不安定な値動きとなった。週間ベースでは円は対ドルで4週間ぶりの上昇。

円は165円近くまで下落へ、日米金利差拡大で-UBPストラテジスト

ドル・円相場の推移

  ニューヨーク原油先物相場は反落したが、週間ベースでは4週連続高。米国の原油在庫が大幅に減少したことや、中米カリブ海で猛威を振るっているハリケーン「ベリル」への警戒感が強材料となった。

  ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)が4週連続で上昇したのは、2023年8月以降で初めて。

  ベリルはいったん熱帯低気圧に勢力を落としたが、再びハリケーンとなり、週明け8日の早い時間にメキシコ北部あるいは米テキサス州南部に襲来する見込み。石油生産の一部に影響が及ぶ可能性がある。

  米エネルギー情報局( EIA)が3日に発表した週間統計で、米原油在庫は約1年ぶりの大幅減となり、需給逼迫(ひっぱく)を示唆した。同じくEIAによると、4週間ベースのガソリン消費は1年ぶりに増加した。

Oil Nets Fourth Straight Weekly Advance | WTI hasn't seen four weeks of gains in 11 months

  シティー・インデックスのファワド・ラザクザダ氏は「直近の減少が単なるアノマリーだったのか、あるいはより多くの原油が今後在庫から引き出されるのか、投資家は在庫データを注視したいと思うだろう」と、5日のリポートで指摘。「さらに取り崩されれば、原油相場の回復を一段と支えるはずだ」と記した。

  同氏はその上で、向こう数カ月に需要が強まり、供給が引き締まるという確信を市場が得るならレンジ相場を脱する可能性があるが、WTIは当面、バレル当たり84ドルが上値抵抗線となるとの見方を示した。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物8月限は前営業日比72セント(0.9%)安の1バレル=83.16ドル。週間ベースでは2%上昇した。ロンドンICEの北海ブレント9月限は前日比89セント(1%)下げ、86.54ドルで引けた。

  金相場は続伸し、6週間ぶりの高値。雇用統計で労働市場が徐々に減速している状況が示され、今後数カ月に米利下げが実施されるとの観測が強まった。

  サクソバンクの商品戦略責任者オレ・ハンセン氏は今回の雇用統計について、「9月利下げの可能性を維持した」と指摘。金相場は「この1週間、力強く上昇した」とし、米国では5日は祝日の翌日で「トレーダーの多くが不在のため、さらなる上値余地は限られるかもしれない」と述べた。

Gold Jumps to Highest Since May

  金相場は過去1カ月の大半、比較的狭いレンジで推移していたが、9月利下げ観測の強まりを背景に、今週は2%を超える上げとなった。

  金スポット価格はニューヨーク時間午後3時1分現在、1.5%高の1オンス=2391.52ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は前営業日比28.30ドル(1.2%)高の2397.70ドルで引けた。

原題:

Stocks Up as Path to September Fed Cut Gets Wider: Markets Wrap

Dollar Posts Weekly Decline After Soft Jobs Reports: Inside G-10

US Bond Yields Fall as Jobs Data Fuels Bets on Two 2024 Fed Cuts

Oil Posts Weekly Gain as Hurricane, Stockpile Drop Extend Rally 

Gold Hits Highest Since May After Cooling US Employment Data