Rita Nazareth
- パウエル議長の議会証言2日目、利下げに対する市場の見方変わらず
- 年内利下げを意識する市場は11日発表の6月CPIに注目
10日の米株式相場は上昇。大型のテクノロジー銘柄が主導する形でS&P500種株価指数は過去最高値を更新した。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長はこの日も議会で証言。前日と同様、年内に利下げが行われるとの市場の見方が変わることはなかった。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5633.91 | 56.93 | 1.02% |
ダウ工業株30種平均 | 39721.36 | 429.39 | 1.09% |
ナスダック総合指数 | 18647.45 | 218.16 | 1.18% |
S&P500種は7営業日続伸となり、史上初めて5600を上回った。7日続伸は、昨年11月以来の長期連続高。大型テクノロジー銘柄に再び資金が向かい、全体の上げをけん引した。エヌビディアは2.7%高。アップルも高い。新型iPhoneの出荷台数について、前機種と比較して約10%増加を目標としているとの報道に反応した。
ウォール街が消費者物価指数(CPI)の発表に備える中、パウエル議長はこの日の議会証言で、利下げに動く前にインフレ率が2%を下回る必要はないと指摘。その上で、インフレに関して「やるべきことはまだある」と言明した。また労働市場については「かなり顕著に」減速したとの認識を示した。バランスシートの縮小については、「道のりはまだ長い」と述べた。
パウエルFRB議長、確信は「まだ」-2%への持続的インフレ率低下
エバコアのクリシュナ・グハ氏は「パウエル議長の証言で重要だったのは、今後入手するデータが支持した場合、リスクバランスに関する金融当局の評価が、9月に利下げをもたらすような形で変化しつつあるということだ」と述べた。
この日は金融当局が政策緩和に近づいているとの見方から、金・銀鉱山関連の銘柄が買われた。一方で銀行株は低調だった。
ネーションワイドのマーク・ハケット氏は「今週はパウエルFRB議長の議会証言のほか、CPIと生産者物価指数(PPI)、決算シーズンのスタートなど非常に多くのデータが示されるが、市場は極めて落ち着いた状況が続いている」と述べた。
11日発表される6月の米CPIでは、食品とエネルギーを除いたコアが前月比0.2%上昇と、5月と同率の伸びが見込まれている。実際にそうなれば、連続した2カ月の伸びとしては昨年8月以来最小となり、金融当局にとってより許容可能なペースとなる。コア指数は、基調的なインフレをより正確に反映すると捉えられている。
ブルームバーグ・エコノミクスのアナ・ウォン氏は「6月のCPI統計は再び『非常に良好』な内容になるとみられ、FOMCはインフレの道筋に関して確信を強められそうだ。そうなれば、9月に利下げを開始する準備が整うだろう」と述べた。
22Vリサーチが実施した投資家調査によると、CPIに対する市場の反応が「リスクオン」になるとの回答は55%。「リスクオフ」との回答は16%、「どちらとも言えない」は29%だった。
同社のデニス・デブシェール氏は「インフレに関して総じて楽観が広がっている」とした上で、「CPIが金融当局の認識に沿った道筋にある」と投資家が考えていることも、同調査は示していると語った。
米国債相場は総じて堅調。午後に実施された10年債入札(発行額390億ドル)では強い需要が見られた。早朝には上げを拡大する場面もあったが、イングランド銀行(英中央銀行)のチーフエコノミスト、ヒュー・ピル氏がインフレに関して政策当局は「まだすべきことがある」と発言し、英国債が上げを縮小。これを手掛かりに米国債も上げを削った。
国債 | 直近値 | 前営業日比(BP) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.47% | -2.1 | -0.46% |
米10年債利回り | 4.28% | -1.8 | -0.41% |
米2年債利回り | 4.62% | -0.6 | -0.14% |
米東部時間 | 16時43分 |
外国為替相場ではドル指数がほぼ変わらず。米利下げ開始時期に関する手掛かりを得るべく、市場はCPI統計に注目している。円は対ドルで下げを拡大し、一時1ドル=161円81銭を付けた。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1259.89 | -1.28 | -0.10% |
ドル/円 | ¥161.70 | ¥0.37 | 0.23% |
ユーロ/ドル | $1.0829 | $0.0016 | 0.15% |
米東部時間 | 16時43分 |
RBCの為替戦略担当グローバル責任者、エルサ・リグノス氏は「日本銀行と財務省は、介入のためにさらなる資金をコミットすることに極めて消極的になっている」とブルームバーグ・ラジオで指摘。「円が極めて安いことは間違いなく、さらに緩やかな下落継続を目の当たりにしている。ただ介入の水準を予想するのは難しい」と述べた。
ポンドは上昇。英中銀のチーフエコノミスト、ヒュー・ピル氏は、利下げ時期は依然として「未解決の問題」だと発言。この発言を手掛かりに、市場ではイングランド銀行(英中央銀行)による8月利下げを織り込む度合いが後退した。
英中銀、利下げ時期は依然「未解決の問題」-チーフエコノミスト
ニューヨーク原油相場は反発。米利下げのタイミングを巡る不透明感があるものの、独立記念日後の石油製品需要に増加の兆しがあることが政府統計で明らかになった。
米エネルギー情報局(EIA)によれば、7月4日の祝日はジェット燃料の需要に予想通りの押し上げ効果をもたらし、季節調整後の4週間平均は2019年以来の水準に上昇した。ガソリン需要の4週間平均も改善し、季節調整後で2021年以来の高水準。在庫は5月以来の水準に減少した。
トータス・キャピタル・アドバイザーズのマネジングディレクター、ブライアン・ケッセンズ氏は「今年の夏は非常に好調なドライブシーズンになると期待されていた。その通りになっているようだ」と述べた。
主要な原油貯蔵拠点であるオクラホマ州クッシングでは在庫が4月下旬以来の水準に減少し、強気センチメントを補強した。ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物のプロンプトスプレッド(当限月と来限月の価格差)は、逆ざや幅が85セントから1.02ドルに拡大した。
今年の原油相場は年初から約17%上昇。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成される「OPECプラス」の減産と、米金融緩和見通しが価格を支えてきた。
一方で世界最大の石油輸入国である中国では、根強いデフレ圧力がデータで示された。この統計が発表される前も、中国製油所からの原油需要が減少している兆候が複数出ていた。
最近の原油取引は活気を欠いており、ブレント原油のインプライド・ボラティリティー(IV、予想変動率)は約6年ぶりの低水準に近づいた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物8月限は、前日比69セント(0.85%)上昇し1バレル=82.10ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント9月限は同0.5%上げて85.08ドル。
ニューヨーク金相場は小幅続伸。パウエルFRB議長が2日目の議会証言でインフレ率の低下見通しに「ある程度確信」があると述べたことから、年内利下げの希望が持続した。
パウエル議長がインフレ率の2%割れを待たずに利下げは可能になると述べたことも、金相場に影響した。ただインフレについて確信を強めるには、まだやるべき仕事が残っていると議長は強調した。
11日に発表される米CPIのほかにも、今週はインフレに関する複数のデータが明らかになる。借り入れコストの低下は一般に、利息を生まない金投資に有利とされる。
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)のリポートによれば、金を裏付けとする上場投資信託(ETF)は5月に続いて6月も資金が純流入となった。北米からの資金流出を、欧州とアジアからの流入が補う格好。
金スポット価格はニューヨーク時間午後3時57分現在、前日比0.3%高い1オンス=2371.65ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は同11.80ドル(0.5%)上昇し2379.70ドルで引けた。
原題:S&P 500 Tops 5,600 to Notch Longest Win This Year: Markets Wrap(抜粋)
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