Rita Nazareth
- 大型株から小型株への資金流入パターン継続、利下げ観測で
- 円は米小売売上高の発表後に一時158円86銭まで下落
16日の米株式相場は続伸し、S&P500種株価指数は再び最高値を更新した。米金融当局が近く利下げを開始するとの見方から、市場でリスクがより高い一角が買われた。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5667.20 | 35.98 | 0.64% |
ダウ工業株30種平均 | 40954.48 | 742.76 | 1.85% |
ナスダック総合指数 | 18509.34 | 36.77 | 0.20% |
S&P500種は今年に入って38度目の最高値更新。小型株で構成するラッセル2000指数は3.5%上昇し、5営業日の値動きとしては2020年4月以来の大幅高を記録した。一方、大型ハイテク銘柄で構成するナスダック100指数はほぼ変わらず。
先週に低調なインフレデータが公表されて以降、「安全」な大型株から資金が流出し、小型株に流入するパターンが続いている。ラッセル2000のリターンは過去4営業日にナスダック100を12ポイント近く上回っている。これは2011年以来の快挙だ。エヌビディアのような企業がダラー・ツリーと同じ比重を持つ均等加重指数バージョンのS&P500種は、本指数を上回った。均等加重指数は大型株上昇の影響を受けにくいため、上昇が広がるとのかすかな期待をもたらしている。
ナットアライアンス・セキュリティーズの国際債券責任者、アンドルー・ブレナー氏は「ローテーションが重要なポイントだ」と指摘。「利下げの認識が高まっていることと一致している」と述べた。
ブレナー氏はニューヨーク時間午前4時ごろにラッセル2000指数先物が急伸し、ナスダック100先物が下落したことを挙げ「これは国外マネー、ビッグマネーがオーバーナイトに非常に大規模なローテーショントレードを行ったことを意味する」と話した。
UBSグローバル・ウェルス・マネジメントの米州担当最高投資責任者(CIO)、ソリタ・マルチェリ氏はソフトランディングという状況下にあって、米金融当局が大幅な利下げを実施すれば、市場において比較的質が低く、シクリカルな分野で利益の伸びが再加速するとの見通しが強まると述べた。
インタラクティブ・ブローカーズのホセ・トレス氏は小型株が上昇している理由として、こうした企業は国内志向の傾向があり、トランプ前大統領の返り咲きで「不釣り合いに」大きな恩恵を受けるとみられていることも考えられると話した。
金融機関の決算も注目された。バンク・オブ・アメリカ(BofA)は上昇。純金利収入が10-12月(第4四半期)までに増加するとの見通しを示した。モルガン・スタンレーはトレーディング収入が前年同期比で予想以上の増加となったものの、ウェルスマネジメント事業の収入は振るわなかった。チャールズ・シュワブは利益を守るために事業を縮小せざるを得ないと警告した。
株式相場の強さは、景気が積極的な金融引き締めに耐えてきたとの楽観に支えられてきた。そうした意味で6月の米小売売上高が市場予想を上回ったのは「健全な」展開だと eToro(イートロ)のブレット・ケンウェル氏は指摘。米金融当局がインフレ率低下を理由に利下げを実施するのは、軟化した景気の押し上げを急ぐよりも好ましいことだと続けた。
米小売売上高、自動車除くベースで堅調な伸び-消費の底堅さ示唆 (2)
株価上昇が広がりつつあることは明るい兆しと受けとめられるが、こうした短期間での上昇は過熱の兆候も示している。ラッセル2000はわずか5日間で10%余り値上がりしており、昨年12月以来の買われ過ぎ水準に達している。
米国債は長期債を中心に上昇。小売売上高を受けて下落する場面もあったが、持ち直した。
国債 | 直近値 | 前営業日比(BP) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.37% | -8.5 | -1.91% |
米10年債利回り | 4.16% | -7.2 | -1.70% |
米2年債利回り | 4.42% | -3.8 | -0.86% |
米東部時間 | 16時54分 |
円は対ドルで下落。小売売上高の発表後には一時0.5%安の158円86銭まで売られ、日中ベースで約2週間ぶりの大幅安となった。ただ、その後は下げ幅を縮小した。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1251.76 | -0.36 | -0.03% |
ドル/円 | ¥158.39 | ¥0.33 | 0.21% |
ユーロ/ドル | $1.0899 | $0.0005 | 0.05% |
米東部時間 | 16時54分 |
ベロニカ・クラーク氏らシティのエコノミストは「この強さが今後数カ月も続くとは想定していないが、6月の小売売上高が予想を上回ったため、差し迫ったあるいは25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)よりも大幅な米利下げの緊急性は新たに生まれない」と指摘した。
円相場が急騰した先週の外国為替市場で、政府・日本銀行は12日に2日連続で円買い介入を実施した可能性が高い。
政府・日銀、12日に2.1兆円の円買い介入実施した可能性-2日連続
ニューヨーク原油先物相場は約3週間ぶりの大幅安となった。ドル上昇や需要減退の兆候が意識される中、アルゴリズム取引の売りが誘発された。
ウェスト・テキサス・インターミディエートは1バレル=81ドルを割り込んで引けた。この日はドルが続伸し、ドル建てで取引されるコモディティー(商品)の割高感が増した。WTI先物はここ1カ月にわたり、下値支持線となっている100日移動平均線を試す展開となっている。
TDセキュリティーズの商品アナリスト、ダニエル・ガリ氏は顧客リポートで、トレンドフォロー型のアルゴリズム取引は週初から売りの態勢に入っており、大規模な売り浴びせが起きる可能性は残されていると分析。
「世界のコモディティー需要に関する当社の指数が顕著な低下トレンドをたどっていることを踏まえると、供給リスクのさらなる高まりがなくても、価格への下押し圧力は強まり続けるとわれわれは予想している」とガリ氏は記した。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物8月限は、前日比1.15ドル(1.4%)安の1バレル=80.76ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント9月限は1.12ドル(1.3%)下落し83.73ドルで引けた。
金スポット相場は続伸し、過去最高値を更新した。米利下げ期待の高まりや、トランプ前大統領が返り咲くとの見方を一部のトレーダーが強めていることが背景にある。
金スポットは1オンス=2466.63ドルまで上昇し、5月下旬に付けた従来の高値を上回った。米国でインフレ減速の兆しが見られ、近く利下げが始まるとの思惑が台頭。利息が付かない金投資にとって、高金利はマイナスに働く傾向がある。
今年はただ、中央銀行の大規模な購入や中国消費者の強い需要、地政学的な緊張による安全資産への逃避に支えられ、金相場は年初来で20%近く上昇。上場投資信託(ETF)の金保有が最近増えていることも、上昇機運を後押ししている。
INGグループのコモディティーストラテジスト、エワ・マンティー氏は、「米金融当局の政策転換を後押しする経済データが増える中で、米利下げへの楽観が金相場を押し上げている」と指摘。「地政学的・マクロ経済的な世界の現状や、中央銀行の需要が強まる見通しを踏まえると、金相場の上昇基調は続きそうだ」と述べた。
米利下げ期待のほか、市場ではトランプ氏がホワイトハウスに返り咲く可能性も意識されている。
メリオン・ゴールドのトレーディング責任者、デービッド・ヒギンズ氏は第2次トランプ政権誕生となれば金の支援要素になり得ると分析する。
同氏は「トランプ氏が当選すれば、多くの人が金買いに動くだろう」とし、購入規模の小さいリテール顧客はトランプ氏を不安定さと結び付けて考えているためだと述べた。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時31分現在、40.54ドル(1.7%)高の1オンス=2462.81ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は38.90ドル(1.6%)上げて2467.80ドルで引けた。
原題:Russell 2000 Beats Nasdaq 100 by Most in Decade: Markets Wrap(抜粋)
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