Rita Nazareth

  • ハイテク株の下げが小型株や金融銘柄にも広がる
  • 円下落、一時157円40銭-ドル指数3日ぶり上昇

18日の米株式相場は下落。1週間に及ぶ大型テクノロジー株の下げが小型株や金融銘柄にも広がった。利下げを巡る楽観はあるものの、景気の弱さを示唆する兆候が強く意識された。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数5544.59-43.68-0.78%
ダウ工業株30種平均40665.02-533.06-1.29%
ナスダック総合指数17871.22-125.70-0.70%

  S&P500種株価指数は主要業種別指数がほぼ全て下落。同指数は今年に入って40回近く最高値を更新してきたため、下落あるいは少なくとも値固めに入るとの観測が強まっている。こうした見方の背景には、強気相場のけん引役だった大手テクノロジーを、ここ数日に幅広い銘柄のパフォーマンスが上回ったことがある。

Top Wall Street Bull Says US Stocks To Pause Briefly After Run
S&P500種は続落Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

  大型株は高安まちまちで、エヌビディアは上昇した一方、アップルは値下がりした。小型株で構成するラッセル2000指数は約2%安。2017年以来の買われ過ぎ水準に達していた。ダウ工業株30種平均は7営業日ぶりに下落。

  個別銘柄では、強気な業績見通しを示していた台湾積体電路製造(TSMC)が小幅高で終了した。

  米金融当局はインフレと闘う手を緩める構えだとみられており、こうした確信が大型株からの資金引き揚げを促した。大型株は安定した利益と健全なバラスシートを理由に、金融引き締め局面では事実上の安全トレードとして台頭していた。今では資金調達コストの高さが大きな障害となっていた資本財と生活必需品といった、幅広い分野に資金が流れている。

  米利下げが近いことを示唆するデータはどれもこうしたトレードを後押しするが、この日はそれほどでもなかった。先週の新規失業保険申請件数は急増し、労働市場の鈍化が続いていることを示した。

米新規失業保険申請、5月上旬以来の大幅増-労働市場の軟化示唆 (1)

Russell 2000 Gets Hit After Big Rally
ラッセル2000指数出所:ブルームバーグ

  パイパー・サンドラーのクレイグ・ジョンソン氏は「投資家は『過度に混み合っていた』大型株から素早く離れ、小型株の機会に資金を投じた」と指摘。「これは強気相場の広がりを裏付けるが、買い銘柄の幅が広がったシグナルが出た時点で確実な支持線まで後退した方が堅実だとの見方もある」と述べた。

  ジャニー・モンゴメリー・スコットのダン・ワントロブスキ氏は、最近の「ローテーション」で広範な市場が短期的にやや買われ過ぎの領域に入っていたと指摘。けん引役の分野で続いている状況も踏まえると、短期的には値固めが起こりやすいと述べた。

  米国債利回りは上昇。失業保険申請件数の発表後にはこの日の低水準に下げていた。

国債直近値前営業日比(BP)変化率
米30年債利回り4.42%4.51.03%
米10年債利回り4.20%4.41.07%
米2年債利回り4.47%3.40.75%
  米東部時間16時55分

  外国為替市場で円はドルに対して下落。ほぼ6週間ぶり高値から下げた。最近の円急上昇を受けて、日本国内勢によるドル買いが活発になっている。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1253.715.970.48%
ドル/円¥157.38¥1.180.76%
ユーロ/ドル$1.0896-$0.0043-0.39%
  米東部時間16時56分

  円は対ドルで一時0.8%安の157円40銭まで売られた。ドル指数は3営業日ぶりに上昇。米国債利回りの上昇などが背景にある。

  ウェルズ・ファーゴは、円のショートポジションは伸長しているようであり、スクイーズが起こりやすいと18日のリポートで指摘。ただ、巻き戻しの度合いは日本銀行と世界的な購買担当者指数(PMI)、雇用のデータ次第になるとの見方を示した。

  エリック・ネルソン、ジャック・ボズウェル両アナリストは、円にとって最も重要な短期のカタリストは7月の日銀会合だとし、「利上げの可能性が過小評価されている」と記した。

円ショートの巻き戻し、日銀会合や世界のデータ次第-ウェルズF

  ユーロは下落。欧州中央銀行(ECB)は中銀預金金利を3.75%で据え置いた。ラガルドECB総裁は記者会見で、9月の次回政策決定会合は「全然決定されていない」と述べた。

ECB、金利据え置き-9月判断は「未決定」とラガルド総裁 (3)

  フィデリティ・インターナショナルのマクロ・戦略的資産配分担当グローバル責任者、サルマン・アーメド氏はECB政策決定後に「成長への下向きリスクは特に工業セクターの鈍い回復や、企業の投資需要に影響を及ぼしている弱い信用動向が要因であり、ECBが景気抑制をある程度取り除く論拠を強める」と述べた。

  ニューヨーク原油先物相場はほぼ変わらず。プロンプトスプレッド(当限月と来限月の価格差)が強気のシグナルを示したほか、原油在庫が3週連続での減少となったことを受け、前日は1カ月ぶりの大幅高となっていた。

  ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は1バレル=83ドルを下回る水準で引けた。前日は2.6%上昇していた。米エネルギー情報局によれば、原油在庫は先週に487万バレル減少し2月以来の低水準となった。このデータを受けてWTIのプロンプトスプレッドは1.5ドルのバックワーデーション(逆ざや)となった。これは近い将来に需要が供給を上回る強気シグナルだ。

  こうした中、カナダでは山火事の影響で日量40万バレルの石油生産が脅かされており、米国へのパイプライン輸送がリスクにさらされている。この山火事も影響し、カナダ産の重質原油の価格は上昇した。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物8月限は、前日比ほぼ変わらずの1バレル=82.82ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント9月限はほぼ横ばいの85.11ドルで引けた。

  金スポット相場は続落。市場では米金融当局の次の動きや地政学リスクに注目が集まっている。

  金は7月に入り急速に上昇してきた。弱いインフレ指標が複数示されたことを受けて、より早期で幅も大きい利下げ見通しが強まったためだ。利息が付かない金にとって、利下げはプラスに働くことが多い。

  先週の米新規失業保険申請件数は5月上旬以来の大幅な増加となった。失業保険の継続受給者数も大きく増え、労働市場の軟化を示唆する新たな証拠となった。労働市場の減速と最近のインフレ鈍化は、当局が早ければ9月に利下げする論拠を強めている。

シカゴ連銀総裁、FRBは「黄金の道」危険にさらす-利下げなければ

  エイミー・ガウアー氏らモルガン・スタンレーのアナリストらは、「米景気後退の懸念は高まりつつあるが、データが軟化すれば金融当局の反応が強まり、経済はソフトランディングすると、当社のエコノミストはなお予想している。いずれにせよ、投資家による金への資金流入を支えるだろう」と分析した。米利下げに向けて金には上昇継続の余地があるとみており、10-12月(第4四半期)までに1オンス=2650ドルに達すると予想している。

  市場は米選挙の行方にも注目している。BMOキャピタル・マーケッツのマネジングディレクター、コリン・ハミルトン氏はトランプ政権が誕生する可能性から、中国のみならず欧州との間でも地政学的緊張が高まるとの見方が出ていることも、金の支援材料になっていると調査リポートで指摘した。

  金スポット相場はニューヨーク時間午後2時17分現在、前日比5.62ドル(0.2%)安の1オンス=2453.17ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は、3.50ドル(0.1%)下げて2456.40ドルで引けた。

原題:Wall Street’s ‘Great Rotation Trade’ Takes a Break: Markets Wrap(抜粋)

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