伊藤純夫、梅川崇

  • 市場の混乱回避へ、財務省は段階的減額が望ましいとの考え-関係者
  • 来週の会合で減額計画決定、財務省の慎重なスタンスが計画に影響も

日本銀行が来週の金融政策決定会合で決める国債買い入れの減額計画に関し、国債の発行当局である財務省は、銀行の国債保有余力を踏まえた減額幅になることが重要で、段階的な実施が望ましいと考えている。事情に詳しい複数の関係者への取材で分かった。

  関係者によると、財務省は、日銀に代わる買い手として期待される銀行の国債保有余力などを念頭に置いた上で、減額幅を考えていくことが重要との認識だ。減額ペースに関しては、市場の混乱を極力回避する観点から、一度に大きく買い入れを縮小するのではなく、段階的に減らしていくことが望ましいとの考えだという。

  ブルームバーグの報道に対する財務省からのコメントは得られていない。

  財務省の「国の債務管理に関する研究会」で、三菱UFJ銀行は、預金取り扱い金融機関の国債購入余地について、日銀保有の3割前後との試算を示した。日銀の長期国債保有残高である580兆円程度に当てはめれば170兆円程度となる。

  他の主体の購入余力が限られる上、今年度並みの35兆円程度の新規国債発行が続くことを前提とすれば、仮に月間3兆円程度・年間36兆円程度の減額なら2年超で余力がなくなる計算だ。財務省の減額に対するスタンスは慎重とも言える。国債管理政策を担う同省の認識は、日銀による減額計画の策定に影響を与える可能性がある。

  日銀は30、31日の会合で今後1-2年程度の国債買い入れの減額計画を決める。9、10日に開催した銀行や証券、機関投資家などの国債取引の実務者との会合では、減額幅やペースについて幅広い意見が聞かれた。

  植田総裁は6月会合後の記者会見で、減額は「相応の規模となる」と明言した。ブルームバーグが17-22日にエコノミスト48人を対象に実施した調査では、減額計画に関する中心的な予想は、現在月間6兆円の買い入れ額をまず5兆円に減額し、その後は四半期ごとに購入を縮小して2年後に月間3兆円まで圧縮するというものだ。

  別の関係者は今週初めに、減額計画について、日銀は市場にサプライズを与えるつもりはないと指摘していた。

  財務省の研究会は6月21日の会合で、日銀が国債買い入れの減額方針を打ち出す中、発行年限の短期化によって銀行が保有しやすい環境を整えることなどを柱とした提言案をまとめた。

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