Rita Nazareth

  • マイクロソフトやメタ、アップル、アマゾンが決算発表へ
  • 今週は日米英の中銀が政策会合、FOMCは9月利下げ示唆との見方

29日の米株式相場は上昇。今週は主要中央銀行の政策決定と重要経済指標、時価総額の合計が10兆ドル(約1540兆円)近い大型株4銘柄の決算が発表される。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数5463.544.440.08%
ダウ工業株30種平均40539.93-49.41-0.12%
ナスダック総合指数17370.2012.320.07%

  S&P500種採用銘柄のうち300株近くが値上がり。ナスダック100指数を調整局面の瀬戸際に追い込んだローテーションを経て、この日は大型ハイテク株が上昇し、小型株が下げた。大型ハイテク企業の決算は芳しくないスタートを切ったが、今週はマイクロソフトやメタ・プラットフォームズ、アップル、アマゾン・ドット・コムが決算を発表する。連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は31日の会見で、利下げが迫っているシグナルを発信する可能性がある。

  マーフィー&シルベスト・ウェルス・マネジメントのシニアウェルスマネジャー、ポール・ノルテ氏は「連邦公開市場委員会(FOMC)とハイテク企業の決算が今週のハイライトだ」と話す。「記者会見の後は金利の将来的な方向性が明確になるだろう。いまだに高い成長期待が妥当なのか、大型ハイテク企業の決算は投資家に答えてくれるだろう」と述べた。

The New York Stock Exchange As US Stocks Rise
ニューヨーク証券取引所Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

  S&P500種株価指数は5465付近で推移した。ブルームバーグがまとめた「マグニフィセント・セブン」指数は1%上昇。小型株で構成するラッセル2000は1.1%下げた。テスラはモルガン・スタンレーによるトップピック指定を好感して急伸。マクドナルドは減収決算にもかかわらず、株価は急伸。新プロモーションの展開が期待されている。エネルギー株は原油につれ安した。

  米国債市場はほぼ変わらず。月間では2021年以来の長期となる3カ月連続プラスになりそうだ。米財務省は7-9月の連邦政府の借り入れ必要額見通しを下方修正した。一連の中央銀行による政策会合を控え、社債の起債が活発になっている。

米四半期入札、選挙を控えデリケートな問題に-予想は規模据え置き

国債直近値前営業日比(BP)変化率
米30年債利回り4.42%-3.2-0.73%
米10年債利回り4.17%-2.3-0.56%
米2年債利回り4.40%1.50.33%
  米東部時間16時30分

  ウェルズ・ファーゴのマクロストラテジスト、エリック・ネルソン氏は「市場の織り込み具合をみれば、すでに9月の利下げは決まりだ」と指摘。その先については「2回の利下げはあり得るのか。当然あり得る。市場にとってもっと大きな疑問は、6回もしくはそれ以上の利下げはあり得るのかどうかだ」と述べた。

  FOMCは1年前から政策金利を約20年ぶりの高水準で維持してきた。31日の会合では金利据え置きが広く予想されている。ただ減速しつつも依然堅調な雇用市場にリスクが迫っているため、FOMCは9月の行動を示唆するとみられている。日本銀行の利上げとイングランド銀行(英中央銀行)の利下げも、市場の視線を集めている。

Tech Earnings Arrive With Nasdaq 100 on Brink of Correction
ナスダック100指数出所:ブルームバーグ

  UBSグローバル・ウェエルス・マネジメントのデービッド・レフコウィッツ氏は「米経済がソフトランディングに向かっているという見方を当社では維持しており、投資家には米国株への完全な投資配分を続けるよう助言している」と発言。「最近見られた相場の下落が最悪期を過ぎたと判断するのはほぼ不可能だが、株式市場の背景は良好だと今もな考えている。底堅い成長とインフレ率の低下、利下げの可能性が高いこと、そしてAI支出がその理由だ」と説明した。

  9月の米利下げがあろうとなかろうと、それを見越した幅広い株高の土台が整ってきたようだと、オッペンハイマー・アセット・マネジメントのジョン・ストルツファス氏は指摘する。

  「今年に入ってから一握りのハイテク銘柄が市場を支配してきたのは、歌にあるようなカリフォルニアへの憧れではなく、根拠なき熱狂でもなく、むしろ一度飛び出したハイテクのジーニーは二度と瓶の中に戻らず、新しい発展とトレンドに変身するという昔ながらの言い習わしを思い起こさせる」と述べた。

  バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジストによると、売上高と1株当たり利益がウォール街の予想を上回ったS&P500種株価指数の構成企業は、決算発表翌日の取引でS&P500種を2.4ポイント上回った。これは、2018年第4四半期以来の高いパフォーマンスだという。

  サビタ・スブラマニアン氏は「人工知能(AI)以外のテーマが出現するにつれ、サプライズをもたらす最近のテーマは以前ほど集中していない可能性を示唆している」と記述した。

US Earnings Are Being Downgraded | A Citi index shows profit downgrades outnumber upgrades since late June
シティグループの米決算修正指数出所:シティグループ、ブルームバーグ

  投資家がインフレ鈍化に伴う価格決定力への影響を懸念する中、米企業利益の見通し悪化は景気敏感株に打撃を与える可能性が高いと、米モルガン・スタンレーのストラテジスト、マイケル・ウィルソン氏が指摘した。

  昨年、米国株に特に弱気な見方を示していたウィルソン氏によれば、利益予想の上方修正と下方修正を比較する指数はマイナスに転じた。この時期にはよくあることだという。いわゆるシクリカル銘柄で特にこの傾向が見られる。

  ニューヨーク外国為替市場ではドル指数が2週間ぶりの水準に上昇。月末のフローが影響した。30ー31日のFOMCでは、利下げが近く迫っていることを示唆すると市場は期待している。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1260.343.260.26%
ドル/円¥154.03¥0.270.18%
ユーロ/ドル$1.0821-$0.0035-0.32%
  米東部時間16時31分

  ドルは対円で小幅高。これまでのレンジ152~155円を抜け出すかどうか、トレーダーらは日銀とFOMCの結果を待っている。日銀は3月のマイナス金利解除に続いて、追加利上げを決定する可能性がある。金融緩和後の量的引き締め(QT)に向けた詳細な計画が明らかにされるとの見方もあり、投資家は植田和男総裁の会見に特に注目している。

  日銀が政策金利を引き上げた上で月間の国債買い入れ額を積極的に減らすシグナルを発信した場合、円は1月以来の水準に上昇する可能性があるとBofAはみている。

  日銀の政策発表を控えたポジション調整で、円のボラティリティー(1カ月ベース)は3カ月ぶり高水準に接近した。

  マッコーリー・グループのストラテジストは「FOMCを受けてドルが売られても、短命かつ浅い下げで終わる可能性が高い。しかもドル・円のような金利に敏感なクロスに集中するだろう。ドルが12月までに142円に下げても、われわれは驚かない」とリポートで指摘した。

Volatility in the Yen Has Picked Up of Late
ドル・円のアット・ザ・マネー(ATM)インプライドボラティリティー出所:ブルームバーグ

  原油先物相場は続落。世界的な需要懸念から7週間ぶり安値に下落した。国際的な指標である北海ブレント先物は6月初め以来となる80ドル割れ。供給見通しの面では、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成する「OPECプラス」が週内に開く会合が注目される。

  原油市場のセンチメントは、今月に入って発表された中国の4-6月(第2四半期)国内総生産(GDP)が5四半期ぶり低成長となったのを受けて低迷している。

Selloff Pushed Crude Into Oversold Territory | Brent crude falls below $80 for the first time since June
上段:ブレント原油先物、下段:RS指数(9日ベース)出所:ブルームバーグ

  センチメントの悪化は、地政学的リスク再燃という原油相場の強材料も打ち消している。週末にはイスラエルが占領するゴラン高原にロケット弾による攻撃があり、同国とレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラの争いが全面戦争に発展する恐れが浮上した。

イスラエル、ゴラン高原攻撃への報復検討-全面戦争回避に各国動く

  原油価格は年初来では上昇しているものの、過去数カ月は総じてレンジ相場が続いている。

  BofAのテクニカルストラテジスト、ポール・シアナ氏は「原油価格は過去1年余り、狭いレンジあるいは三角もちあいで推移してきた」とリポートで指摘。「マクロ面でのリスクプレミアム一部消失や、世界需要と供給削減の両方またはいずれか一方への期待が消えることがおそらく視野に入り、2024年末までに原油価格は63.02ドルまで急落する可能性がある」と記した。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物9月限は、前営業日比1.35ドル(1.75%)安の1バレル=75.81ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント9月限は1.35ドル(1.7%)下げて79.78ドルで引けた。

  ニューヨーク金相場は反落。ドルの上昇に押された。トレーダーは米FOMC会合など今週に世界で相次ぐ中銀政策発表に注目している。

32時間の中銀ウオッチを控える市場関係者、政策の道筋見極めに腐心

  金価格は今月に入って過去最高値を更新したが、その後は米金融当局からの利下げ時期に関する明確なメッセージが待たれる中で下げ基調に転じている。金利低下は通常、利子を生まない金にとって強材料と見なされる。

  米利下げサイクルへの期待から、過去2年余りにわたって資金純流出が続いていた金上場投資信託(ETF)には資金が流入。ブルームバーグがまとめたデータによると、金ETFの保有高は5週連続で増加している。

Gold ETFs Post Five Weeks of Increase | Inflows are an early sign Western investors are warming up to ETFs
出所:ブルームバーグ

  金スポット価格はニューヨーク時間午後2時15分現在は前営業日比0.3%下げて2378.99ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、同2.40ドル(0.1%)安の2425.50ドルで引けた。

原題:Stocks Edge Up as ‘Big-to-Small’ Rotation Pauses: Markets Wrap(抜粋)

Treasuries End Low-Volume Day With Small, Curve-Flattening Gains(抜粋)

Dollar Posts Two-Week High Ahead of Fed Meeting: Inside G-10(抜粋)

Brent Oil Falls Below $80 Amid Concerns About Softening Demand(抜粋)

Gold Edges Lower as Traders Await Fed Meeting on Rate Clues(抜粋)