Rita Nazareth
- 失業保険申請件数は約1年ぶり大幅減、景気懸念が和らぐ
- 国債利回り上昇、入札も振るわず-円は対ドル一時147円54銭
8日の米株式相場は力強く反発。この日発表された新規失業保険申請件数を受け、景気減速感が強まるとの懸念が和らいだ。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5319.31 | 119.81 | 2.30% |
ダウ工業株30種平均 | 39446.49 | 683.04 | 1.76% |
ナスダック総合指数 | 16660.02 | 464.21 | 2.87% |
S&P500種株価指数は2022年11月以来の大幅高となり、主要な業種別指数が全て値上がりした。大型ハイテク銘柄中心のナスダック100指数は3.1%高。小型株で構成するラッセル2000指数は2.4%上げた。
エヌビディアは大型ハイテク株の上昇をけん引した。個別銘柄ではこの他、イーライリリーが急伸。肥満症治療薬の好調を背景に、強気な業績見通しを示した。
先週の米新規失業保険申請件数は、ここ1年近くで最大の減少となった。7月の雇用統計が弱い内容となったことを受けて労働市場の沈静化ペースが速過ぎるとの懸念が出ていたが、今回の失業保険統計はそうした懸念の緩和に幾分つながる可能性がある。
米新規失業保険申請、約1年ぶり大幅減-労働市場巡る懸念緩和か (1)
市場では先週以降、大荒れの状況が続いている。先週公表された経済指標を受け、米金融当局が利下げになかなか踏み切らず、「ソフトランディング」見通しが危うくなりつつあるとの懸念が強まったためだ。伸び切ったポジションや期待外れのハイテク企業決算、季節的なトレンドの悪さという弱材料も重なり、ボラティリティーが急上昇した。
インディペンデント・アドバイザー・アライアンス(IAA)のクリス・ザッカレリ氏は、「失業保険申請件数が予想を下回ったという良いニュースがあった」と指摘。「リセッション(景気後退)が既に始まっているとは考えにくい。慎重を期しているが、月初に始まったパニックは行き過ぎだったと思う」と述べた。
インタラクティブ・ブローカーズのスティーブ・ソスニック氏は、株の買い手に重要な質問があるといい、「あなたは5日に0.5ポイントの緊急利下げを求めていた人と同一人物なのか」と問いかけた。「この日の数字で景気後退懸念が消えたと言えるだろうか。それは絶対にない。株式トレーダーは、押し目で買いを入れて、上値を追うことに執着していると言えるだろうか。間違いなくそうだ」と話した。
米国債は続落。短期債を中心にあらゆる年限で下げた。新規失業保険申請件数が約1年ぶりの大幅減少となり、景気に対する懸念を幾分和らげた。市場では年内の積極的な利下げ観測が一段と後退した。
午後に行われた30年債入札(250億ドル=約3兆6800億円規模)は、需要が振るわなかった。30年債入札の最高落札利回りは4.314%。入札前取引(WI)水準は4.283%だった。
米長期債利回り上昇、入札が連日低調-新規失業保険申請の減少も寄与
国債 | 直近値 | 前営業日比(BP) | 変化率 |
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米30年債利回り | 4.28% | 3.1 | 0.73% |
米10年債利回り | 3.99% | 4.7 | 1.18% |
米2年債利回り | 4.03% | 7.2 | 1.81% |
米東部時間 | 16時58分 |
ナットアライアンス・セキュリティーズの国際債券責任者、アンドルー・ブレナー氏は「またしても、ひどい入札だった」とした上で、「10年債入札ほどは悪くない」と述べた。
BMOキャピタル・マーケッツの米金利戦略責任者、イアン・リンジェン氏は「新規失業保険申請件数の減少幅は予想より大きかった」と指摘。2日に発表された雇用統計は弱い内容だったが、「この日の統計は、労働市場が依然堅調な証拠だと解釈された。相場の反応がそれを示唆している」と述べた。
TDセキュリティーズの米金利戦略責任者、ジェナディー・ゴールドバーグ氏は、米国債は過去2週間に「パーフェクトストーム(最悪の事態)」に見舞われたとし、今後数週間もキャリー取引の巻き戻し、労働市場と経済成長のデータ、インフレ、地政学リスクに投資家は引き続き注目する可能性が高いと指摘。
「市場は9月の0.5ポイント利下げや会合間の利下げのリスクを警戒し続けるだろう。ただし、この両方に対する織り込みは最近の高水準から大幅に後退している」とゴールドバーグ氏。「より速いペースの米利下げも引き続き気がかり要因だ。米金融当局は2025年終盤までに金利が中立水準の3%に達するように、9月から毎会合で0.25ポイントずつ利下げを実施すると当社では見込んでいる」と話した。
外国為替市場で円はドルに対して下落。朝方には上昇していたが、米失業保険統計が発表されると下げに転じ、一時0.6%安の147円54銭まで売られた。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
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ブルームバーグ・ドル指数 | 1248.18 | -2.43 | -0.19% |
ドル/円 | ¥147.28 | ¥0.60 | 0.41% |
ユーロ/ドル | $1.0919 | -$0.0003 | -0.03% |
米東部時間 | 16時57分 |
日本銀行が7月30、31日に開いた金融政策決定会合では、政策委員から経済や物価の動向を見ながら、段階的に利上げを実施する必要があるとの意見が出たことが、「主な意見」で明らかになった。
MUFGのシニア為替ストラテジスト、リー・ハードマン氏は「主な意見は前回の日銀政策会合で示されたタカ派的なガイダンスを裏付ける」と指摘。「金融市場が安定化し、円の上昇ペースが鈍れば、今年度に少なくともあと1回の利上げが実施される可能性はなお高そうだ。これは円安の反転がさらに進むとの見通しを支える」と述べた。
バークレイズによると、ここ数日の円の急騰は再び利回り差と連動して取引されていることを示しており、世界的な成長懸念が株安につながるようなことがあれば、安全通貨としての地位はさらに高まるだろう。
同行のストラテジスト、門田真一郎氏はリポートで、「急激な円高は、利回りや株価との相関関係の復活を伴っている」と指摘。最近の円の動きは世界的な成長減速の中で、安全資産通貨の復活を示しているとの見解を示した。
主要10通貨ではオーストラリア・ドルの上げが目立った。オーストラリア準備銀行(中央銀行)のブロック総裁は、必要なら再度の利上げもためらわないと述べた
原油先物相場は3日続伸。週初までの下落局面の後を受けた回復が続いた。金融市場全体の動きと中東情勢になお注目が集まっている。
イスラエルはイランからの攻撃に備えているが、イラン大統領はフランス大統領との電話会談で、外交による事態収拾を示唆した。
イラン大統領、イスラエルにガザ停戦受け入れ求める-域内安定に向け
ニューヨーク原油は株式相場が世界的に急落した5日に、7カ月ぶりの安値を付けたが、その後は回復傾向にある。リビア最大の油田の生産停止も支援材料。ウクライナ軍によるロシアへの越境攻撃は地政学的緊張を高めている。
BOKファイナンシャル・セキュリティーズのシニアバイスプレジデント、デニス・キスラー氏は「株式相場の回復も、不況による需要減退懸念の緩和につながっている」と指摘した。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物9月限は、前日比96セント(1.3%)高の1バレル=76.19ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント10月限は83セント上げて79.16ドルで引けた。
金スポット相場は6日ぶりに上昇。金融市場全体の上昇につれて買いが入った。
米新規失業保険申請件数が約1年ぶりの大幅減少となったことが支援材料になった可能性がある。
MKS・PAMPの金属戦略責任者、ニッキー・シールズ氏は「金はどちらかというと、株式や大型ハイテク株と並ぶリスク資産として取引されてきた。失業保険申請件数が減少し、ハードランディングへの懸念が和らいだことで、リスク資産は安堵(あんど)感から上昇し、金もそれに追随している」と述べた。
サクソバンクのコモディティー戦略責任者、オレ・ハンセン氏は「金はコイル状のバネのようだ。他の市場の動向やレバレッジ解消圧力によって抑え込まれた後、市場が落ち着くと再びバネのように跳ね返った」と述べた。
ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、前日比30.90ドル(1.3%)高の1オンス=2463.30ドルで引けた。ニューヨーク時間午後3時35分現在、金スポット相場は1.6%高の2421.83ドル。
原題:S&P 500 Notches Biggest Rally Since November 2022: Markets Wrap(抜粋)
Long-Term Treasury Yields Extend Rise Amid Poor Auction Demand(抜粋)
Yen Weakens as Dollar Pauses, Aussie Outperforms: Inside G-10(抜粋)
Oil Gains in Recovery Rally as Markets Eye Retaliation by Iran(抜粋)
Gold Snaps Five-Day Drop as Traders Take Cues From Wider Markets(抜粋)