Rita Nazareth
- S&P500種は週間ベースでは4週連続下落-昨年9月以来最長
- 積極的な米利下げ観測が後退-円は一時146円27銭まで値上がり
9日の米株式相場は続伸。S&P500種株価指数は2日間の上げ幅としては今年最大を記録した。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5344.16 | 24.85 | 0.47% |
ダウ工業株30種平均 | 39497.54 | 51.05 | 0.13% |
ナスダック総合指数 | 16745.30 | 85.28 | 0.51% |
こうした落ち着いた様相は、過去数日の荒い動きとは著しく対照的だ。5日のパニック売りを含め、多くの上げ下げを繰り返した末、S&P500種は週間ベースでの下げをほぼ埋めた。商いが比較的薄い中、大半の主要な業種別指数が値上がりした。ただ、週間では昨年9月以来最長の4週続落。
8月に入って以降、目まぐるしい展開が続いている。一部の経済指標が弱い内容となり、米金融当局が後手に回っているとの懸念が強まった。日本銀行の金融政策の道筋に関して相反する見方があることも市場の混乱を深め、キャリー取引巻き戻しの影響が資産クラス全体に飛び火した。
ソーファイのリズ・ヤング・トーマス氏は「神経がすり減るイベントは終わったが、米経済指標の軟化に市場が今どれほど敏感か、円キャリー取引の影響がどれほど広範に及び得るのか、あらゆる厄介な状況を和らげる手段として投資家がいかに条件反射的に利下げを期待するかが分かった」述べた。
データトレック・リサーチの共同創業者、ニコラス・コラス氏は「ボラティリティーは株式市場のリターンに支払う代償だ」という古い格言は全くその通りだと指摘。それでも、ボラティリティーの高い市場が将来について何を言わんとしているのか読み解くことは、貴重な訓練になるとしている。
「現在の市場環境は、控えめに言っても快適ではない」とコラス氏。「しかしリセッション(景気後退)の警告を断固発しているわけでも、足元の強気相場に尚早な終焉を強いているわけでもない。大荒れの1週間を終え、このメッセージに安らぎを見いだしている」と話した。
ジャニー・モンゴメリー・スコットのマーク・ルッシニ氏は、来週14日の消費者物価指数(CPI)まで主要な米経済指標の発表がないことで、当面は市場のボラティリティーが低下する可能性が高いと指摘。
ただ、8月と9月は季節的に株式相場は弱いため、ボラティリティーは高まり得るとし、激しい大統領選挙のさなかではなおさらだと述べた。
個別銘柄ではエクスペディア・グループが上昇。業績が市場予想を上回った。シスコシステムズは、今年第2弾となる人員カットでさらに数千人を削減する計画だ。ロイター通信が報じた。
米国債は高安まちまち。10年債は上昇した。利下げ観測が後退する中、利回りカーブはフラット化した。
国債 | 直近値 | 前営業日比(BP) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.22% | -5.7 | -1.34% |
米10年債利回り | 3.94% | -4.8 | -1.20% |
米2年債利回り | 4.06% | 1.7 | 0.43% |
米東部時間 | 16時54分 |
今週は積極的な米利下げの織り込みが進んだ後、年内の利下げ幅見通しは約100ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)に縮小している。エコノミストの大多数は、9月の米利下げ幅は0.25ポイントにとどまるとみていることが、ブルームバーグがまとめた調査で分かった。ウォール街の大手金融機関が0.5ポイント利下げを予想したのとは対照的だ。
FRBジャンボ利下げにエコノミスト懐疑的-ウォール街と好対照
外国為替市場では円が上昇し、主要10通貨の中で対ドルでの値上がり率トップとなった。一時は146円27銭まで買われた。リスクセンチメントの改善に伴い、週初に進んだ積極的な米利下げの織り込みは後退している。ドル指数は週間で2週連続の下落。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1245.98 | -2.20 | -0.18% |
ドル/円 | ¥146.67 | -¥0.56 | -0.38% |
ユーロ/ドル | $1.0916 | -$0.0003 | -0.03% |
米東部時間 | 16時54分 |
シティグループのストラテジストは「短期的な調整はほぼ終わったが、過去数年に積み上がっていた円キャリーのポジションはかなり大規模のようだ」とリポートで指摘。「従って、現在の調整はこうしたキャリー取引の終わりが始まりつつあるに過ぎないと当社ではみている」と続けた。来年には140円を下回るドル安・円高になると予想しているという。
ウエストパックの為替戦略責任者リチャード・フラヌロビッチ、ティム・リデル両氏は「リスク状況は改善しつつあり、円キャリーポジションの多くは解消されたようだ」と顧客向けリポートで指摘。「こうした背景から、ドル・円相場は短期的な底をつけ、恐らく146-148円前後で行ったり来たりしている」と記した。
その上で、150円への反発は短期的には難しいかもしれないと指摘。世界的なリスクセンチメントが最近改善したものの依然として脆弱(ぜいじゃく)なことや、米国債利回りが最近の高水準に戻りそうにないことを理由に挙げた。
マネックスのストラテジストは「逃避先資産の需要はもはや週初ほどではないが、警戒感は残っており、トレーダーの心理をなお圧迫している」とリポートで指摘。「夏場はあらゆる資産のトレーディングデスクで人員が手薄となる。ボラティリティーが今週非常に高かったのはそれが大きな理由だが、マクロ的な根拠もこうした価格変動の背景として引き続き妥当だ」と記述した。
原油先物相場は4日続伸。中東情勢を注視しながら、買いが続いた。急落後に回復傾向にある株式相場にも注目が集まった。原油相場は週間ベースでは7月上旬以来の上昇を記録した。
米国とカタール、エジプトは、ガザ紛争終結に向けた新たな停戦協議を呼びかけている。一方、イランによるイスラエルへの攻撃が引き続き警戒されている。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物9月限は、前日比65セント(0.9%)高の1バレル=76.84ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント10月限は0.6%上げて79.66ドルで引けた。
金スポット相場はほぼ変わらず。前日に3週間ぶりの大幅高になった後、もみ合いに終始した。
ヘリマ・クロフト氏を含むRBCキャピタル・マーケッツのアナリストは「ボラティリティーの上昇や地政学的リスクの高まり、リセッション(景気後退)懸念、そして予想される利下げが、金を現在の水準に押し上げている」とリポートで指摘。ただ、金の購入には注意が必要だとの見解を示した。
ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、前日比10.10ドル(0.4%)高の1オンス=2473.40ドルで引けた。ニューヨーク時間午後2時41分現在、金スポット相場は48セント高の2428.01ドル。
原題:Stocks Make Comeback at End of Dizzying Week: Markets Wrap(抜粋)
Treasuries End Mixed With Curve Flatter as Rate-Cut Pricing Ebbs(抜粋)
Dollar Extends Drop, Yen Outperforms Peers in Group: Inside G-10(抜粋)
Oil Cements Weekly Gain With Focus on Middle East, Equities(抜粋)
Gold Wavers After 1.9% Surge as US Data Tamps Recession Fears(抜粋)