アンスティー・クリストファー
- 緊急利下げ正当化できないが、9月の50bpは「適切かもしれない」
- 日銀は「もっと緩やかに政策シフトができたのではないだろうか」
金融政策はいかなる形であっても大統領の影響を反映してはならないと、サマーズ元米財務長官は警告。そうした行為はじわじわと経済にダメージを与えるだけだと指摘した。
サマーズ氏は9日、ブルームバーグ・テレビジョンで「政治家を関与させるのは愚か者の考えることだ」と断じ、「結局はインフレ高進と経済の弱体化を招く」と述べた。
米大統領選の共和党候補であるトランプ前大統領は8日、金利や金融政策について大統領が何らかの発言権を持つべきだと述べた。トランプ氏は「私の場合、大金を稼いだ。私はとても成功した」と述べ、「そして多くの場合、連邦準備制度当局者や連邦準備制度理事会(FRB)議長になるような人たちよりも、私は直感に優れていると思う」と語った。
現在はハーバード大学教授でブルームバーグテレビジョンに定期的に出演するサマーズ氏は、「あまりにもひどい考えに、がくぜんとさせられた」とトランプ氏の提案について語った。常にやるべきことがたくさんある大統領は、あらゆる経済統計を常時分析することに力を入れている連邦準備制度理事会(FRB)のメンバーに比べ、「経済との距離感がかなり遠い」と述べた。
トランプ氏の陣営はコメントの要請に応じていない。
世界の国々で中央銀行の独立性が確立されるようになったのは、政治家と金融政策の間に「深い利益相反」があるとの認識に基づいているとサマーズ氏は強調。政権にある者は「常に紙幣の増刷と利下げの誘惑にかられ、景気押し上げのアクセルを深く踏み込もうとする」と述べた。
そうした圧力は人々のインフレ期待を高め、長期金利を押し上げると、クリントン、オバマ政権で経済担当の要職を経験したサマーズ氏は述べた。「インフレは悪化し、二度と順調な生産には戻らない」と続けた。
サマーズ氏はニクソン元大統領の例を挙げた。ニクソン氏は1970年代初期、当時のバーンズFRB議長に圧力をかけて金融緩和を実行させた。その結果インフレ性の高い好況不況サイクルが生まれ、米経済に代償を強いた。また中南米では「数え切れない」国々がここ数年に独立した中央銀行にシフトし、インフレを収束させた例をサマーズ氏は挙げた。
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サマーズ氏は現在の米金融政策について、5日に起きた波乱の後に市場のボラティリティーと株式売りが落ち着いたことを踏まえ、「最新の事実」に基づくと緊急利下げは正当化されないと述べた。
「緊急利下げは動揺とパニック、過熱を引き起こし、非生産性につながる」とサマーズ氏。ただし9月の連邦公開市場委員会(FOMC)での「50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げは適切かもしれない」と述べた。
S&P500種株価指数は5日の市場で3%下落。パウエルFRB議長は先週、50bpの利下げについて「現在われわれが考えているものではない」と述べた。
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一方、日本銀行では金融政策正常化への道が市場の波乱によって険しさを増しているようだ。
サマーズ氏は、特に新任のセントラルバンカーは初めて運転席に座るドライバーのように「ハンドルを切り過ぎる」傾向があると話す。日銀の場合は「あれほど長期にわたってゼロ金利政策を続けた後だから、もっと緩やかに政策をシフトできたのではないだろうか」と指摘。7日の内田真一副総裁によるコメントに言及し、「日銀は市場に対応している姿勢をあそこまできっぱりと見せる必要はなかった」とサマーズ氏は述べた。
「オリンピックの言葉を借りれば、私なら日銀から『出来栄え点』を少し減点するだろう」とサマーズ氏は語った。
原題:Summers ‘Appalled’ at Idea of Presidential Sway Over Fed Policy(抜粋)
BOJ’s Policy Path Fraught With Risks After Global Market Turmoil(抜粋)