Rita Nazareth

  • S&P500種、今年に入って最長の上昇局面-利下げ開始示唆への期待
  • ドル下落、ジャクソンホール会合控えて弱気ポジション積み上がる

19日の米株式相場は上昇。S&P500種株価指数は8営業日続伸と、今年に入って最長の連続上昇局面となった。週後半に始まるジャクソンホール会合で、米金融当局者が利下げ開始の用意があることを示唆するとの見方が買いを促した。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数5608.2554.000.97%
ダウ工業株30種平均40896.53236.770.58%
ナスダック総合指数17876.77245.051.39%

  S&P500種は8月5日の安値以降、時価総額で3兆ドル(約440兆円)以上を回復しているが、さらに上値を伸ばした。

  ゴールドマン・サックス・グループのグローバルマーケッツ部門マネジングディレクター、スコット・ルブナー氏によれば、テクニカルな好材料と企業の自社株買いが追い風となり、今後4週間の米国株は上昇する見通しだ。

今後4週間の米国株は上昇の見通し-ゴールドマンのルブナー氏

  パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は、カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム(ジャクソンホール会合)での23日の基調講演で9月利下げを示唆するとみられており、市場関係者はまずそれを確認したいと考えている。ただ、米当局はインフレと雇用の両面にリスクを抱えており、より大きな問題はその後数カ月間の追加利下げペースだ。

FRB、難題は9月利下げ後のかじ取り-インフレと雇用両面にリスク

  バンク・オブ・アメリカ(BofA)のオースン・クウォン氏は、米金融当局が「市場の想定よりハト派姿勢を示す」可能性は低いと指摘。「株式市場は、経済成長が支えられるとの確認が得られればいい」とし、経済成長に問題がない限り、当局がそれほどハト派でなくても株式相場は持ちこたえることができると予想した。

  また、「米当局は過去にジャクソンホール会合をその後の政策決定を伝達する場として利用し、株式相場はそれを受けて大きく変動してきたが、今回の会合でそうした事態が起きるとは考えていない」と話した。

  S&P500種は引け間際に上値を伸ばし、5600を上回って引けた。ブルームバーグの「マグニフィセント・セブン」指数は1.7%上昇。小型株で構成するラッセル2000指数は1.2%高。

S&P 500 Sees Longest Winning Streak in 2024 | US stocks climb for eighth straight session

  ルネサンス・マクロ・リサーチのニール・ダッタ氏は「パウエル議長が大幅利下げにゴーサインを出すとは思わないが、その考えを完全に否定することもないだろう」と指摘。

 「パウエル氏は、6月の連邦公開市場委員会(FOMC)経済予測以降にリスクバランスが劇的に変化したことを認める可能性が高い。そうした状況で選択肢を排除するのは賢明ではない」とし、「従って、名高い『パウエル・プット』が今週戻ってくるとみている」と話した。

  ダッタ氏はその上で、今後見込まれる経済情報のトーンに比べて、株式市場は「やや熱狂的過ぎる」ようだと分析。個人消費のペースが鈍化すると考える十分な理由があると述べた。

  パイパー・サンドラーのクレイグ・ジョンソン氏は「先週、株式相場のリリーフラリーが勢いを得る中で投資家は『心配の壁を登った』」と指摘。「今週のジャクソンホール会合での米金融当局者による発言を前に、株式相場は値固めとなる公算が大きい」と述べた。

  マイケル・ウィルソン氏率いるモルガン・スタンレーのストラテジストらは「市場にとって真のテストは、8月雇用統計だろう」と指摘。「7月雇用統計の軟調から反転するような強い内容となれば、景気リスクが今のところ抑制されているとの自信を与える。一方、8月分も弱い内容となれば経済成長への懸念が再浮上する公算が大きい」と述べた。

  米国債相場は年限が短めの債券が下落し、長めが上昇。原油安が国債相場の下支え要因となったが、他の材料に乏しく、先物の売買高は平均を大きく下回った。

国債直近値前営業日比(BP)変化率
米30年債利回り4.12%-1.8-0.43%
米10年債利回り3.87%-1.1-0.30%
米2年債利回り4.07%1.60.40%
  米東部時間16時55分

  ニューヨーク外国為替市場ではドル指数が下落し、5カ月ぶりの安値。23日のパウエルFRB議長の講演を前に、弱気ポジションが積み上がった。講演は9月利下げという市場予想を裏付ける内容になるとみられている。

  円はドルに対して上昇したが、東京時間よりは上げ幅を縮小し、146円台半ばから後半での小動き。  

  みずほ証券は、ジャクソンホール会合を控えてポジションが軽くなっていると指摘。こうした中での円上昇は、アルゴリズム取引が主因である可能性が高いと指摘した。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1232.62-5.85-0.47%
ドル/円¥146.62-¥1.01-0.68%
ユーロ/ドル$1.1086$0.00590.54%
  米東部時間16時55分

  ドルは他の主要10通貨全てに対して下落した。

   サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は、最近の米経済データを受けてインフレは制御されており政策金利の調整を検討する時期に来ているとの「確信を深めた」が、米経済は「緊急を要する状態にはない」との認識を示した。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が同総裁とのインタビューを報じた。

デーリーSF連銀総裁、インフレは制御されていると確信-FT

  ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、労働市場が過度に弱まる可能性が高まりつつあるとして、次回会合での利下げにオープンな姿勢を示唆した。ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙が同氏とのインタビューを基に報じた。

  ニューヨーク原油先物相場は約2週間ぶりの大幅な下げとなった。軟調な需要見通しが重しとなり、地政学リスクによる影響を上回った。

  世界最大の石油輸入国である中国で、経済成長の鈍化や運輸部門の脱炭素化によって燃料需要が一部減退していることが材料視された。

  Fxプロのシニア市場アナリスト、アレックス・クプツィケビッチ氏はリポートで「原油と株価指数の正の相関関係が崩れており、弱気派の優勢が浮き彫りになっている」と指摘した。原油価格が重要なテクニカル水準に近づくのに伴い、売りが強まった。

  市場ではイランによるイスラエルへの報復攻撃の可能性が引き続き意識された。一方、リビアのワハ油田では、パイプラインのメンテナンスが予定より早く終了し、生産量が通常の日量約30万バレルに戻った。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物9月限は、前営業日比2.28ドル(3%)安い1バレル=74.37ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント10月限は2.5%下げて77.66ドル。

Oil Slumps Amid Exacerbated Selloff | US crude dropped for the fourth time in five sessions

  金スポット価格は反落。前週末16日に初めて1オンス=2500ドルを突破したが、市場の焦点はジャクソンホール会合でのパウエルFRB議長の講演にシフトしている。

  米利下げ観測はこれまで金相場の値上がりの原動力となってきた。金利の低下は、利子を生まない金にとっては追い風となる。  

  金融政策の先行きを見極める上で、米失業保険申請件数など週内に発表される経済指標も手掛かりを提供しそうだ。

  サクソバンクの商品戦略責任者オレ・ハンセン氏は「さらに上値を伸ばすには単なる臆測ではなく、実際の利下げが必要になる可能性が高い」と指摘。「市場が下値を探る中、16日に最高値を更新するまで強力な抵抗線となっていた2475-2480ドル付近が支持線として意識されるだろう」と述べた。

  スポット金価格はニューヨーク時間午後2時49分現在、前営業日比3.8ドル安の1オンス=2504.21ドル。一方、ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、3.5ドル(0.1%)高い2541.30ドルで終えた。

Gold Pares Recent Gains | Yellow metal falls after hitting record high

原題:S&P 500 Spikes in Final Minutes of US Trading: Markets Wrap(抜粋)

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