By Chan Ka Sing

コラム:中国の経済成長率「5%前後」目標、大幅未達なら政策変更不可避

[香港 2日 ロイター BREAKINGVIEWS] – 中国はさまざまな計画や目標を設定するのを好むが、最も注目される今年のGDP(国内総生産)伸び率「5%前後」目標は逆風に直面している。現在の政府はこのような指標をかつてのような強制的な目標ではなく、計画立案ツールとして扱っているとはいえ、景気減速が政策変更を促す可能性はなお高い。

今年第1・四半期の5.3%という目覚ましい成長率を受けて主要銀行から強気な見通しが相次いだ。例えばUBSは4月に中国の成長率予想を4.6%から4.9%に引き上げた。しかし、先週発表されたリサーチノートでは4.6%に戻された。予想以上に深刻な不動産不振が主因という。住宅ローン規制緩和など、政府の支援策強化を受けた追い風も薄れている。

成長率目標のキーワードは「前後」だ。これはおそらく当局者に十分な余裕を与え、最終的に今年が4.5%を上回れば目標を達成したと主張できるためとみられている。また、政府が第14次5カ年計画(2021─25年)でGDPをどこまで拡大させるべきか数字を示さなかったことも助けになった。

しかし、習近平国家主席は21年、35年までに経済規模または1人当たり所得を倍増させる長期目標を達成することは十分可能と表明。Breakingviewsの試算では、目標達成のためには15年間にわたって約4.8%のペースで成長し続けなければならない。これは大変なことだ。

今年の成長率が5%を大幅に下回れば、成長よりもコロナ対応を優先した22年以来2度目の失敗となる。中国の政策当局者は一時的な問題が構造的な問題に発展するのを食い止めようと躍起になるだろう。消費を促進するため福祉への財政支出を手厚くするなど、政策対応がどの程度強いかによって、その懸念度合いが分かりそうだ。

●背景となるニュース

*UBSは24年の中国経済成長率を4.6%と予想。従来の4.9%から引き下げた。8月28日付のリサーチノートで「不動産活動の低迷が従来の想定以上に経済全体の足を引っ張ると予想している」とした。

*国務院(政府)は24年の成長率目標を「5%前後」に設定。中国のGDPは第2・四半期に4.7%、第1・四半期には5.3%成長した。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)