Rita Nazareth

  • 短期債利回りが上昇、長期債利回りは低下に転じる
  • 円は早朝に143円80銭に下落、その後は下げ渋る

9日の米株式相場は反発。前週末は景気に対する懸念から売りが優勢になったが、この日は押し目買いが入った。米金融当局の利下げ幅を予想する上で、市場は今週のインフレ指標に注目している。  

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数5471.0562.631.16%
ダウ工業株30種平均40829.59484.181.20%
ナスダック総合指数16884.60193.771.16%

  S&P500種はすべての主要セクターが上昇。テスラとエヌビディアが超大型株の上昇をけん引した。アップルは主力製品のスマートフォン「iPhone」最新版、iPhone16を発表。人工知能(AI)の利点活用に重点を置いて設計されていると、ティム・クック最高経営責任者(CEO)はイベントで述べた。アップル株は2%近く下げる場面もあったが、ほぼ変わらずで終えた。

  セブンス・リポートのトム・エッセイ氏は「テクニカルな押し目買いが大半を占めている」と指摘。「経済成長が勢いを失っているのは明らかで疑いようがないが、ハードランディングよりもソフトランディングの可能性の方がなお高い。今週はインフレに焦点が戻る」と語った。

  パイパー・サンドラーのクレイグ・ジョンソン氏は「米利下げ観測とリセッション(景気後退)懸念、そして政治的な不透明感の中で、株式投資家のセンチメントは綱渡り状態だ」と述べた。「テクニカル分析によると、先週の弱さは長期的な上昇トレンドの中の一時的な下落局面に過ぎない」と話した。

  RBCキャピタル・マーケッツのストラテジストによると、米国株は季節性やセンチメント、大統領選挙をめぐるリスクを背景に、当面不安定な展開が続き、さらに下落する可能性がある。ロリ・カルバジーナ氏率いるチームは「これ以上のダメージは10%の範囲内に収まるだろう」とリポートに記述した。ただ、ハードランディングへの不安が強まれば、成長懸念から14-20%下落するリスクも確実に高まるとの見方を示した。

米国債

  米国債市場では利回りがこの日の最高水準から離れる展開。年内の米利下げ幅を見極めるため、市場では今週のインフレ指標の発表が待たれている。

国債直近値前営業日比(BP)変化率
米30年債利回り4.00%-1.3-0.33%
米10年債利回り3.70%-0.6-0.15%
米2年債利回り3.68%2.90.79%
  米東部時間16時53分

  金融政策の変化に敏感な短期債利回りは前営業日比でプラスを維持した。午後の取引で、長期債利回りは低下に転じた。

  9月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合での0.5ポイント利下げの確率は先週の50%から20%前後に低下した。同時に、12月または来年3月までの利下げ幅の見通しが拡大した。

  ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)のシニア・アナリスト、エリアス・ハダッド氏は11日発表の米消費者物価指数(CPI)について「予想より高ければ、大幅利下げ観測が弱まる」と述べた。

  グレンミードの投資戦略・調査主任ジェーソン・プライド氏は「0.25ポイント利下げの可能性の方が高いが、0.5ポイント利下げは可能性がわずかに低いに過ぎない」と発言。「FOMCは7月会合で利下げを見送り、その後2カ月分のデータを得ているため、9月会合での0.5ポイント利下げを正当化することはかなり容易だ」と述べた。

為替

  外国為替市場ではドルが主要10通貨のほぼ全てに対して上昇。米国のインフレ指標と大統領選候補者の討論会を控え、短期国債利回りが上昇したことがドル買いを誘った。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1235.133.270.27%
ドル/円¥143.12¥0.820.58%
ユーロ/ドル$1.1038-$0.0046-0.42%
  米東部時間16時53分

  円相場は対ドルで下落。ニューヨーク時間の早朝に1ドル=143円80銭まで下げた。日本の4-6月期の実質国内総生産(GDP)改定値が前期比年率2.9%増と、速報値から下方修正されたことなどが材料視された。ただ、その後は下げ渋る展開となった。

4-6月の実質GDPは下方修正、個人消費や設備投資が下振れ

原油・金

  ニューヨーク原油先物相場は反発。先週は約1年ぶりの安値に下げていた。市場は需要見通しのリポートに目を向けている。

  原油が最近急落していた背景には、米国と中国で景気の弱さを示す兆候が見られ、供給が潤沢なタイミングで需要減退への懸念が高まっていることがある。

  今週は石油輸出国機構(OPEC)と米エネルギー情報局(EIA)、国際エネルギー機関(IEA)の月間見通しが公表される。

  BOKファイナンシャル・セキュリティーズのシニアバイスプレジデント、デニス・キスラー氏は「最近の9ドル近い下げはやや行き過ぎだった」と指摘。「市場は売られ過ぎの状況に近づきつつある。恐らくあまりに速く、大幅に下げ過ぎた」と述べた。

WTI Oil Edges Higher From Lowest Close Since Early 2023 | Start-of-week gain comes as market may be oversold

  天候を巡る懸念も浮上しており、供給へのリスクとなる可能性がある。熱帯性暴風雨「フランシーヌ」は勢力を強めながらメキシコ湾岸を北上しており、石油掘削業者は既に作業員を避難させ、沖合での原油生産を一部停止し始めている。

  ベテラン商品アナリストであるカーライル・グループのジェフ・カリー氏は「原油に関しては、現物市場のファンダメンタルズはまだ損なわれておらず、在庫は減少している」とブルームバーグテレビジョンのインタビューで指摘。「しかし弱気なのは金融市場で、今日ではなく先行きの見通しを取引している」と述べた。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物10月限は、前営業日比1.04ドル(1.5%)高の1バレル=68.71ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント11月限は1.1%上げて71.84ドルで引けた。

  金相場は小幅上昇。米CPI統計の発表を11日に控え、方向感の乏しい展開となった。同統計は来週のFOMC会合での利下げ幅に関して手掛かりを提供するとみられている。

  ブルームバーグのエコノミスト調査では、8月のCPIは前年同月比2.6%上昇の予想。実際にそうなれば、2021年以来の低い伸びとなる。

Gold Steadies | Traders await Fed decision later this month

  先週発表された8月の米雇用統計が強弱まちまちの内容となり、来週のFOMC会合での利下げ幅を巡る議論が活発化している。米金融当局者は目下、インフレよりも労働市場へのリスクが気がかりだとの考えを示している。金利低下は、利回りを生まない金にとって強材料とされる。

  ING銀行の商品ストラテジスト、エワ・マンティー氏は「待望の米利下げが金を新たな高値に押し上げるだろう」とリポートで指摘。「金は10-12月(第4四半期)に平均で1オンス=2580ドルになり、年間平均は2388ドルになる見通しだ」と述べた。

  金の上向きモメンタムは来年も続き、平均価格は2700ドルになると、マンティー氏はみている。

  ベテラン商品アナリストであるカーライルのジェフ・カリー氏は、「中国の不動産所有者が同国の不動産市場低迷に対するヘッジとして購入しているのが金だ」とブルームバーグテレビジョンで指摘。「金は近く実施が見込まれる利下げと相性が良い。金は景気不透明感がある局面で好調だ」と述べた。

  金スポット価格はニューヨーク時間午後3時11分現在、前営業日比5.88ドル(0.2%)高の1オンス=2503.29ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は8.10ドル(0.3%)上げて2532.70ドルで引けた。

原題:Stocks Rise as Buyers Scoop Up Bargains After Rout: Markets Wrap(抜粋)

Treasuries Trim Losses as Traders Debate Pace of Fed Rate Cuts

Dollar Rises as Traders Pare Bets on Fed Rate Cuts: Inside G-10

Oil Rebounds After Weekly Drop as Traders Assess Demand Outlook

Gold Wavers as Traders Eye Key Inflation Print for Rate Cut Cues