Rita Nazareth
- PPIはやや加速も前月は下方修正、利下げサイクルへ予想変わらず
- ECBは予想通り利下げ、ラガルド総裁は今後の示唆与えず
12日の米国株式相場は続伸。今週はすでに1兆3000億ドル(約184兆円)を超える時価総額がS&P500種株価指数に上乗せされている。この日発表された経済統計は、今後の利下げサイクル予想を変えるには至らなかった。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5595.76 | 41.63 | 0.75% |
ダウ工業株30種平均 | 41096.77 | 235.06 | 0.58% |
ナスダック総合指数 | 17569.68 | 174.15 | 1.00% |
S&P500種の主要セクターは軒並み上昇。大型株と小型株の両方がS&P500種を上回る勢いを見せた。
8月の米生産者物価指数(PPI)はエコノミスト予想をわずかに上回る伸びにやや加速したものの、前月分は下方修正された。米金融当局が重視するインフレ指標に反映される項目は総じて抑制された水準だった。先週の米新規失業保険申請件数は小幅に増加した。
エバコアISIのクリシュナ・グーハ氏は「今のFOMCは『ハト派』のサプライズを与えても、『タカ派』のサプライズをもたらすことはできない。われわれはそれを認識した上で、この日のPPIは50bpで利下げを開始する可能性を残すものだと考える。その方がソフトランディング(軟着陸)へのリスクが小さい」と述べた。
大型ハイテク株の「マグニフィセント・セブン」指数は1.4%上昇。小型株のラッセル2000は1.2%上げた。半導体のマイクロン・テクノロジーはアナリストによる投資判断引き下げが響き下落したが、エヌビディアをはじめ半導体株は全般に上昇した。ウェルズ・ファーゴは資金洗浄防止策の強化を米当局に求められ、株価は下落した。
モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は「PPIは基本的に前日の消費者物価指数(CPI)を繰り返した内容であり、失業保険申請も予想通りだった。これで利下げサイクルがスタートする舞台は整った」と語った。「最初の利下げは25bpになると市場では予想されているが、その後の利下げサイクルがどこまで、どのペースで進むかに話題は移るだろう」と述べた。
キャンター・フィッツジェラルドのエリック・ジョンストン氏は、小型株には「絶好の」環境が整ったと指摘する。金融緩和サイクルの恩恵が最も期待できるのが小型株だと同氏は指摘。ラッセル2000が過去数週間の大半において、S&P500種をアンダーパフォームしていることを挙げた。
「25bpの利下げがコンセンサスではあるが、当然ながら50bpの可能性も残る」とジョンストン氏。小型株は「50bpなら急激に上昇するだろう。非常にハト派な25bpでも小型株を押し上げる」と述べた。
米国債
米国債相場は小幅安となった。FOMCは来週の会合で決定する利下げ幅を25bpにするか、50bpにするか検討していると米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が報道。これを受けてスワップ市場では50bp利下げの織り込み具合がやや強まった。
国債 | 直近値 | 前営業日比(BP) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 3.99% | 2.6 | 0.66% |
米10年債利回り | 3.68% | 2.3 | 0.62% |
米2年債利回り | 3.64% | 0.2 | 0.05% |
米東部時間 | 16時50分 |
朝方の取引はドイツ連邦債の軟化が影響した。ECBが予想されていた通りの利下げを発表した後、ラガルド総裁は金利について特定の道筋を約束することはないとあらためて表明した。米国債の軟調は午後も続き、30年債の入札では最高落札利回りが入札前取引(WI)水準を1.4bp上回った。
外為
ECBは広く予想されていた通り、政策金利を25bp引き下げ、ユーロは一段高となった。ブルームバーグ・ドル指数はほぼ1週間ぶりの大幅な下落。円は対ドルで上昇。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1229.91 | -5.20 | -0.42% |
ドル/円 | ¥141.80 | -¥0.56 | -0.39% |
ユーロ/ドル | $1.1073 | $0.0061 | 0.55% |
米東部時間 | 16時50分 |
日本銀行の田村直樹審議委員は、日銀が示している2026年度までの見通し期間の後半には1%程度まで政策金利を引き上げておくことが必要との見解を示した。
トレーダーによれば、短期のオプションでは対円で豪ドルのダウンサイドに強い需要が見られる。
ユーロは対ドルで一時0.5%上昇し、1.1066ドルを付けた。ECBによる利下げは今年2回目。中銀預金金利は3.50%となった。
ラガルド総裁は「われわれはデータに依存する姿勢を崩さない」と記者会見で表明。「利下げの道筋は、順序についても規模についても、事前に決定されるものではない」と語った」と述べた。
ブルームバーグ・ドル指数は米PPI統計の発表後に0.3%下落。日中の動きとしては今月6日以来の大幅な下げとなった。統計は来週のFOMCに対する見方を変えるには至らなかった。
原油
ニューヨーク原油先物相場は続伸。ハリケーンだった「フランシーヌ」は暴風雨に勢力を落としたものの、メキシコ湾岸の原油生産に混乱をもたらした影響が続いている。アルゴリズム取引によるここ最近の激しい売りも一巡した。
原油相場のボラティリティーは10日に9カ月ぶりの高水準に達した後、足元の上昇に伴い、落ち着いている。
米安全環境執行局(BSEE)によると、フランシーヌの上陸により、メキシコ湾では日量約67万バレルの石油生産が停止を余儀なくされた。これは同地域の産油量の3分の1余りに相当する。
アルゴリズム取引を活用する商品投資顧問業者(CTA)として知られる投資家も、売りを控えているもようだ。
ブリッジトン・リサーチ・グループのスティーブン・ロゼム氏は、現時点で売りは見られないとし、「相場が再び下げに転じれば、新たな売りがいずれ出るだろうが、目先はそうではない」と述べた。
国際エネルギー機関(IEA)はこの日、中国経済の冷え込みにより世界石油需要の伸びが「急減速」し、石油価格が3年ぶりの安値になったと月報で指摘した。
世界石油需要の伸び、中国低迷で2020年以来の小ささ-IEA
サクソバンクの商品戦略責任者オレ・ハンセン氏は「現在の水準で悪材料が織り込まれ過ぎているのではないかという疑問に市場は向き合う必要がある」と指摘。「IEAの見通しがそれほど楽観的でないことはほぼ確かで、中国経済減速のシナリオをおおむね確認した。フランシーヌの影響が今後数日に弱まる中、市場は新たな売り圧力を受けやすい」と話した。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物10月限は、前日比1.66ドル(2.5%)高の1バレル=68.97ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント11月限は1.9%上げて71.97ドルで引けた。
金
金相場は反発し、スポット相場は最高値を更新した。米インフレ指標はまたも予想を上回る伸びを示した一方、米失業保険申請件数は増加し、米金融当局が来週利下げを実施するとの見方はほとんど変わっていない。
同経済指標の発表を受けて、ドルが下げる中、金は一時1.9%高の1オンス=2559.40ドルを付けた。これはニューヨーク時間午後4時26分時点で史上最高値。
ECBはこの日、政策金利引き下げを発表した。インフレ率が2%に向かって低下する一方で景気への懸念は深まり、6月に続き今サイクルで2回目の利下げを決めた。
ECBが追加利下げ、予想通り-インフレ率低下と景気低迷を受け (3)
サクソバンクの商品戦略責任者オレ・ハンセン氏は「ECBの利下げと米失業保険申請件数の小幅増加、米PPIの小幅加速という材料は、金を新たな高値に押し上げるのに十分だった」と述べた。
その上で、米国でも利下げサイクルが始まれば、利下げの幅に関係なく、金相場の支えとなる可能性が高いと付け加えた。
投資家による金買い戻しの動きも金の上げに寄与した。米商品先物取引委員会(CFTC)の最新データによれば、ニューヨーク商品取引所(COMEX)金先物におけるヘッジファンドのグロスショートポジションは9月3日終了週に4週間ぶりの高水準となっていた。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時46分現在、前日比44.10ドル(1.8%)高の1オンス=2555.86ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物12月限は38.20(1.5%)上げて2580.60ドルで引けた。
原題:Stocks Up as This Week’s Rally Tops $1.3 Trillion: Markets Wrap(抜粋)
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