16日の外国為替市場で円の対ドル相場は、一時約1年ぶりに1ドル=139円台に突入した。ドル指数は下落し、1月以来の安値に沈んだ。市場は大幅な米利下げの可能性に備えている。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1222.47 | -3.64 | -0.30% |
ドル/円 | ¥140.61 | -¥0.24 | -0.17% |
ユーロ/ドル | $1.1133 | $0.0058 | 0.52% |
米東部時間 | 16時47分 |
円は日本が祝日で流動性が低かったこともあり、アジア時間に139円58銭まで上昇。その後は上げ幅を縮小し、140円台後半で推移した。ドル指数は4営業日続落し、7月初旬以来の最長下げ局面となった。
今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)で予想される利下げの幅について、金利スワップ市場では25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)予想を抑えて、50bp予想が勢いを盛り返している。
米利下げ幅、50bp予想が25bpより優勢-債券市場で織り込み深まる
バークレイズの外為ストラテジスト、スカイラー・モンゴメリー・コニング氏は、ドルに関する「ポジション動向が大規模にシフトした」とブルームバーグテレビジョンで指摘。「最大限のドル強気から、最大限のドル弱気に転じたことが、当社のセンチメント指標で示されている」と述べた。
ウェストパックの通貨戦略責任者リチャード・フラヌロビッチ氏は、円相場は今後1-3カ月で1ドル=137-138円まで上昇する可能性が高いと予想した。米金融当局がハト派的である一方、日本銀行がタカ派的なためだという。
円相場、年内に1ドル=137円まで上昇へ-ウェストパックが予想
バンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNYメロン)・インベストメント・マネジメントのマクロ・投資ストラテジスト、アニンダ・ミトラ氏は、市場が積極的な米利下げを織り込むのに伴い、円は一段のボラティリティーに見舞われ、さらに上昇する可能性があると指摘した。ただ、年末までには1ドル=140円になるとの見通しを示した。
その上で、円が持続的に上昇するには、リフレーションが円安や供給ショックへの依存度を弱め、国内要因であるインフレ持続の兆候増加や業績の伸び継続が必要になると、ミトラ氏は分析した。
米国株
株式市場ではS&P500種株価指数が小幅続伸。今週の米金融政策決定に備える中、株式強気相場の原動力となってきた大型テクノロジー株からの資金ローテーションの動きが続いた。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5633.09 | 7.07 | 0.13% |
ダウ工業株30種平均 | 41622.08 | 228.30 | 0.55% |
ナスダック総合指数 | 17592.13 | -91.85 | -0.52% |
18日のFOMC会合で0.5ポイントの利下げが決まるとの観測が強まっており、市場の景気敏感セクターに資金が引き続き流入した。S&P500種は小幅高にとどまったが、構成銘柄の大半は上昇した。同株価指数の均等加重バージョンは史上最高値を更新。株高の裾野が広がるとの期待が背景にある。同バージョンはディスカウント小売りのターゲットにマイクロソフトと同等の影響力を与えるものだ。
ナスダック100指数は0.5%下落。大型ハイテク株の「マグニフィセント・セブン」指数は0.7%下げた。小型株で構成するラッセル2000指数は0.3%値上がり。
銀行株がおおむね堅調。ソフトランディングの見通しがマージン圧力に勝るはずだと、アナリストは指摘した。アップルは2.8%安。新型スマートフォン「iPhone 16 Pro」の需要は予想を下回っていると、アナリストが警告した。
オッペンハイマー・アセット・マネジメントのジョン・ストルツファス氏は「当社では株式に関して引き続きポジティブだ」と指摘。「S&P500種が昨年の安値を付けた後の上昇局面で始まった幅広いローテーションは、ボラティリティーの回避につながってきた。それは8月初旬の底値以降に日常的に示されている。今年これまでに見られたS&P500種の押し目は、ほとんどが『調整』や『ヘアカット』のようなものだった」と述べた。
FOMC決定を前に、モルガン・スタンレーやゴールドマン・サックス・グループ、JPモルガン・チェースのストラテジストは、株式にとっては利下げの幅よりも、米景気の健全性の方が重要だとの見方を示している。
リソルツ・ウェルス・マネジメントのキャリー・コックス氏は「不可抗力が働かない限り、今週何らかの利下げが実施される見通しだ」と指摘。「25bpであろうと50bpであろうと、1回の利下げが景気に及ぼす影響は軽微なものにとどまる公算が大きい。最も重要なのは今後1年ほどの間に実施される利下げの度合いとその道筋だ」と話した。
米国債
米国債は長期債を中心に上昇。一方でFOMC決定を控え、短期債の取引が引き続き活発だった。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 3.93% | -5.0 | -1.26% |
米10年債利回り | 3.62% | -3.4 | -0.92% |
米2年債利回り | 3.55% | -2.9 | -0.82% |
米東部時間 | 16時47分 |
モルガン・スタンレー・ウェルス・マネジメントのリサ・シャレット氏は、米利下げサイクルの開始に投資家が備える中、株式と債券はともに積極的な織り込みを進めているようだが、先行きの道筋については見解が異なっていると分析した。
「株式は、労働市場や消費に大きな混乱を来すことなく2桁の増益を達成できるとの見方に基づいた『完璧なソフトランディング』を織り込んでいる」と指摘。「一方で債券が大きく上昇しているのは、リセッション(景気後退)を示唆し、米金融当局が『後手に回っている』ことを暗示している」と述べた。
債券が「正しい」場合、株式は利益減少により下落に見舞われると、シャレット氏は予想。債券が「間違っている」場合は、金利が再び上昇し、バリュエーションへの向かい風になると続けた。
原油・金
ニューヨーク原油先物相場は急反発。米大幅利下げ観測が高まったことに加え、リビアの石油輸出の落ち込みが続いていることが追い風となった。
中央銀行の支配権を巡り内紛が続くリビアでは、国連主導の協議でも行き詰まりを打開できなかった。そのため、石油産業にも影響が及び、輸出量が大きく減少している。
BOKファイナンシャル・セキュリティーズのトレーディング担当シニアバイスプレジデント、デニス・キスラー氏によると、市場は今週のFOMC会合に加え、先週のハリケーン上陸でメキシコ湾の原油生産に引き続き影響が出るシナリオにも備えている。
米当局によると、メキシコ湾一帯では依然として約12%の原油生産が止まっている。
メキシコ湾岸での生産停止に加え、「米金融当局による50bpの利下げも見込まれるため、少なくとも短期的には買い手が戻ってきている」とキスラー氏は述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物10月限は、前営業日比1.44ドル(2.1%)高の1バレル=70.09ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント11月限は1.6%上げて72.75ドルで引けた。
金スポット相場は続伸。市場はFRBによる約4年ぶりの利下げ開始を待っている。
金スポット価格はオーバーナイトの取引で一時0.5%高の1オンス=2589.70ドルと、最高値を再び更新。その後、米国の取引時間になると上げを一部削った。
A Year of Records
市場では米利下げ幅の予想を巡り、25bpか50bpかで見方が割れている。
サクソバンクの商品戦略責任者オレ・ハンセン氏は「利下げ幅が25bpまたは50bpのいずれになるかは短期的には重要だ」と指摘。今回の決定は、FOMCが現在の経済見通しをどう見ているかについて「より強いシグナルを送る可能性がある」と述べた。
金相場はドル売りにも支えられた。米大統領選で返り咲きを目指すトランプ前大統領を狙ったとみられる暗殺未遂事件が起きた後、ドルは下落した。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時39分現在、前営業日比3.90ドル高の1オンス=2581.60ドル。一方、ニューヨーク商品取引所の金先物12月限は1.8ドル(0.1%)安の2608.90ドルで引けた。
原題:Dollar Drops to Lowest Since January as Yen Rallies: Inside G-10(抜粋)
Yen Likely to End the Year at 140 Per Dollar, BNY Mellon Says(抜粋)
S&P 500’s Equal-Weighted Index Hits All-Time High: Markets Wrap(抜粋)
Treasuries Rise, Led By Long-End; SOFR, Fed Funds Flows Active(抜粋)
Oil Rises on Libyan Disruption, Expectations of Larger Fed Cut(抜粋)
Gold Climbs to Another Record With Fed Rate Cut Expected in Days(抜粋)