Rita Nazareth
- FOMCは0.5ポイント利下げ決定、S&P500種は一時1%高
- 円は対ドルで一時1.4%高の140円45銭、その後は上げほぼ消す
18日の米株式相場は下落。連邦公開市場委員会(FOMC)はこの日、0.5ポイントの利下げを決定したが、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は会合後の記者会見で緩和を急がないと述べた。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5618.26 | -16.32 | -0.29% |
ダウ工業株30種平均 | 41503.10 | -103.08 | -0.25% |
ナスダック総合指数 | 17573.30 | -54.76 | -0.31% |
S&P500種はFOMC政策発表後に一時1%上昇したが、上げを消した。パウエル氏は大幅利下げが続くと考えるべきではないと注意を促した。
FOMC、0.5ポイント利下げ-労働市場の回復目指し積極行動 (2)
FOMC会合後に公表された経済予測では、19人の当局者のうち10人が、年内残り2回の会合で少なくとも0.5ポイントの追加利下げを支持していることが示された。2025年には1ポイントの追加利下げが予想されている。
FOMC声明:最大雇用を支え、インフレを2%に戻すことにコミット
モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのマネジングディレクター、クリス・ラーキン氏は「市場は望むものを手に入れた。その満足がいつまで続くか見てみよう」とコメント。米金融当局には焦らないという定評があるが、特に経済データの軟化が続く場合、動きがあまりに遅いと受け止められれば失望を招く可能性がある。しかし、今回は役目を果たした」と述べた。
トグルAIのジュゼッペ・セッテ氏は「米金融当局は景気見通しが堅調だと安心させようとする一方で、大幅な利下げを断行した。しかし、この2つは調和しない。景気減速局面での大幅利下げは常に相場の下落が後に続く。きょうが市場のピークだった可能性もある」と指摘。「歴史が示すように、市場のピークは最初の利下げの直前に訪れる。株式には注意が必要だ」と述べた。
LPLファイナンシャルのクインシー・クロスビー氏は「株式市場は50bpで緩和サイクルを開始するというFOMCの決定を称賛した」と指摘。「この動きを巡っては多くの議論が交わされていたため、発表は驚きではなかった。しかしFOMC当局者によるガイダンスの欠如は、反対したメンバーが1人しかいなかったにせよ、コンセンサス構築に向けて激しい議論が行われたことを示唆している」と述べた。
ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント(GSAM)のアシシュ・シャー氏は、「景気抑制的な金融政策を巻き戻すことで、米景気サイクルは長期化し、債券とリスク資産の両方に恩恵をもたらす可能性がある。ただし、投資家はテールリスクに注意を払うべきだ。それでも、安定した経済状況と金利低下というポジティブな要因は『ソフトランディング』のシナリオを固め続けている」と指摘。「安定した経済状況と金利低下により、株式投資の機会は広がるはずだ」と話した。
米国債
米国債は下落。FOMC決定後は上昇したが、再び下げに転じた。ただ、短期債が長期債をアウトパフォームした。パウエル議長が0.5ポイント利下げについて、FOMCの新たなペースと見なすべきではないと述べたことに一部反応した。
国債 | 直近値 | 前営業日比(BP) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.03% | 6.9 | 1.74% |
米10年債利回り | 3.71% | 6.4 | 1.75% |
米2年債利回り | 3.62% | 1.6 | 0.46% |
米東部時間 | 16時54分 |
ラッファー・テングラー・インベストメンツのナンシー・テングラー氏は「50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げは米金融当局のフライングだと思う。後ろ向きなデータに近視眼的に焦点を当てている点を批判する。雇用統計が1回弱かっただけで、この結果に至っている」と述べた。
外為
外国為替市場では円が対ドルでFOMC政策発表後の上げをほぼ消した。ドル指数は下げを埋める展開となった。0.5ポイントの利下げをFOMCの新たな行動ペースと見なすべきではないとするパウエル氏の発言が材料視された。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1226.27 | 1.52 | 0.12% |
ドル/円 | ¥142.31 | -¥0.10 | -0.07% |
ユーロ/ドル | $1.1118 | $0.0004 | 0.04% |
米東部時間 | 16時54分 |
50bpの利下げ決定後には、円は対ドルで1.4%高の1ドル=140円45銭を付ける場面もあった。
ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)の通貨戦略グローバル責任者ウィン・シン氏は「パウエル議長は会見中に驚くほどバランスが取れていた」と話した。
マネックスの外国為替トレーダー、ヘレン・ギブン氏は「過去1カ月のドル安が反転するかどうか定かではなかったが、新たなレンジに入りつつあることがこれでかなり明確に示された」と指摘。「円は明らかに大きな勝者だ。金利差が大幅に縮小したためだ」と述べた。
日本銀行は19日から2日間の日程で金融政策決定会合を開始する。
原油・金
ニューヨーク原油先物相場は3日ぶりに反落。中東での緊張激化や、米国が0.5ポイントの大幅利下げを決定したという買い材料はあったが、需要の弱さを示す兆候がより強く意識された。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は1バレル=71ドルを下回った。北海ブレント先物は73ドル台を維持した。この日発表された米エネルギー情報局(EIA)のデータでは、米ガソリン需要が一段と減少し、日量900万バレルを下回ったことが示された。
WTI先物はFOMC発表後に一時、上昇する場面もあったが、その後は再び下げた。
グローバルXマネジメントの企業戦略責任者ロハン・レディ氏は今回のFOMC決定について、「原油市場のようなインフレに敏感な分野は、これを需要の弱さと捉える可能性がある。需要への影響を市場が理解するまで、原油はレンジ相場が続くと予想する」と述べた。
レバノンでは前日に続いて通信機器の爆発が起き、多数の負傷者が出た。
レバノンで再び爆発、トランシーバー含む通信機器-多数の負傷者 (1)
一方、中国の鈍い需要見通しなどを反映して、7-9月期の原油相場は前四半期に比べて大幅に下落した状態が続いている。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物10月限は、前日比28セント(0.4%)安の1バレル=70.91ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント11月限は0.1%未満の下げで、73.65ドル。
金スポット相場はFOMCでの0.5ポイント利下げが発表された後に、史上最高値を更新した。ただ、その後は下げに転じた。
スポット価格は一時1.2%上昇して1オンス=2600.16ドルを付けた。利子の付かない金は通常、金利低下の恩恵を受けやすい。
ただ、パウエルFRB議長が記者会見で0.5ポイントの利下げを新たなペースと見なすべきではないと発言したことなどを受け、スポット相場は下げに転じた。
投資会社グラナイトシェアーズ・アドバイザーズ創業者のウィル・リンド氏は「金利が低下し、強いドルが弱まり始める」とインタビューで指摘。「金上昇の次のきっかけは、リセッション(景気後退)に向かっているとの感触が出てくるか、その不安要素が強まりヘッジ手段として金購入を始める必要が出てくるかどうかだろう」と述べた。
スポット価格はニューヨーク時間午後3時32分現在、0.3%安の1オンス=2560.79ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物12月限は、FOMC発表前に6.20ドル(0.2%)高の2598.60ドルで引けた。
原題:S&P 500 Erases 1% Gain as Powell Signals No Rush: Markets Wrap(抜粋)
Treasuries Lose Bid Fed’s 50bp Rate Cut Sparked; Curve Steepens(抜粋)
Dollar Recovers After Fed Votes for Half-Point Cut: Inside G-10(抜粋)
Oil Edges Lower as Weak Demand Signs Outweigh Fed, Middle East(抜粋)
Gold Retreats From Record High as Powell Signals No Rush on Cuts(抜粋)