▽FOMC、0.5ポイントの利下げ-積極緩和で経済守る決意表明<bloomberg日本語版>2024年9月19日 3:13 JST

Catarina Saraiva

  • パウエル議長、0.5ポイントは新たな利下げペースではないと警告
  • 当局者19人のうち10人、年内に0.5ポイントの追加利下げを支持
Jerome Powell, chairman of the US Federal Reserve
Jerome Powell, chairman of the US Federal Reserve Photographer: Al Drago/Bloomberg

米連邦公開市場委員会(FOMC)は9月17-18両日に開催した定例会合で、主要政策金利を0.5ポイント引き下げることを決定した。米労働市場の回復を目指した政策シフトで積極的なスタートを切った。

  会合後に公表された経済予測では、19人の当局者のうち10人が、年内残り2回の会合で少なくとも0.5ポイントの追加利下げを支持していることが示された。

FOMC声明:最大雇用を支え、インフレを2%に戻すことにコミット

  利下げにより、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジは4.75-5%となった。今回の決定は賛成が11人、反対が1人だった。

  パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は会合後の記者会見で、「今回の決定は緩やかな成長と持続的に2%に向かうインフレ率という状況において、政策スタンスの適切な再調整により労働市場の強さを維持し得るという、われわれの確信の強まりを反映している」と語った。

  その上でパウエル氏は0.5ポイントの利下げについて、FOMCが今後継続するペースだと想定すべきではないと警告した。

  会見でパウエル氏は「今回の決定を受けて、『これが新しいペースだ』とは誰も捉えるべきではない」と述べた。

  つい最近まで、当局はインフレの抑制に重点を置いてきた。FOMCは会合後に発表した声明で「雇用とインフレの目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると判断している」とした上で、「委員会は最大限の雇用を支え、インフレ率を目標の2%に戻すことに強くコミットしている」と記した。

  FOMC参加者の予測中央値によれば、2025年に1ポイントの追加利下げが予想されている。

The Fed's September Dot Plot
FOMCの金利予測分布図(ドットプロット)出所:ブルームバーグ

  今回の会合ではボウマン理事が0.25ポイントの利下げを主張し、決定に反対票を投じた。政策決定に理事が反対したのは2005年以来。投票権を持つメンバーによる反対では2022年以来となった。

  KPMGのチーフエコノミスト、ダイアン・スウォンク氏は理事の反対にもかかわらずパウエル議長が積極利下げに踏み切ったことは「この0.5ポイント利下げをいかに望んでいたか」を示していると述べた。

  声明では「FF金利誘導目標レンジに対する追加的な調整を検討する上で、委員会は今後入手するデータや変化する見通し、リスクのバランスを慎重に見極める」と記された。

  インフレについては「依然として幾分高い水準にある」と指摘。雇用の伸びは鈍化したと記した。

  最新の四半期経済予測では、24年末時点での失業率について中央値で4.4%と、6月時点での4%から予想を引き上げた。現在の4.2%から若干の悪化を意味する。

  24年末のインフレ率については、中央値で2.3%への低下を予想。経済成長率の予想は2%へと若干引き下げられた。またインフレ率が目標の2%に低下するのは26年までないと、当局者は引き続きみている。

  長期のFF金利見通しについては2.9%と、前回の2.8%から引き上げた。パウエル議長は新型コロナウイルス禍前に長年続いた超低金利に戻る可能性は低いとの認識を示した。

原題:Fed Cuts Rates by Half Point in Decisive Bid to Defend Economy(抜粋)

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▽FRB0.5%利下げ、議長「後手に回らず」 年内さらに同幅下げ想定<ロイター日本語版>2024年9月19日午前 7:12 GMT+9

FRB、0.5%の大幅利下げ 年内さらに0.5%利下げ想定

[ワシントン/ニューヨーク 18日 ロイター] – 米連邦準備理事会(FRB)は17─18日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.50%ポイント引き下げた。利下げは4年半ぶり。年内にさらに0.50%ポイントの追加利下げを実施する見通しも示した。

声明は「インフレ率が持続的に2%に向かっているとの確信を強めており、雇用とインフレ率の目標達成に対するリスクがほぼ均衡していると判断する」とした。

インフレは「依然としてやや高止まり」しているものの、「インフレの進展とリスクのバランスを考慮」した決定と説明。その上で、物価安定と最大雇用という「二大責務の双方」に注意を払いつつ、「目標達成を妨げるリスクが生じれば、金融政策スタンスを適切に調整する用意がある」と言明した。

パウエル議長は会合後の記者会見で「今回の決定は、緩やかな成長とインフレの持続的な2%回帰という状況において政策スタンスの適切な調整によって労働市場の強さを維持できるというわれわれの自信の高まりを反映している」と述べた。

インフレ圧力の後退は明白で、これまでに達成した進展は心強いとしつつも、インフレ圧力が決定的に弱まったとは言えないとし、インフレの目標回帰の「任務が完了したとは言っていない」と述べた。

さらに、FRBが利下げに関し「後手に回っているとは考えていない」とし、これまでの忍耐強い対応がインフレの確実な鈍化という形で実を結んだという認識を示した。

FF金利の誘導目標は今回の決定で4.75─5.0%となった。全会一致ではなく、11対1で決定された。ボウマン理事が0.25%ポイント利下げを主張し、反対票を投じた。

同時に公表したFRB当局者による金利・経済見通しでは、年内にさらに0.50%ポイント、2025年に計1%ポイント、26年には計0.5%ポイントの追加利下げを見込んだ。

26年末時点の政策金利は2.9%で中立金利に達すると予想され、前回見通しの2.8%から上昇した。

声明と経済見通し発表を受け、米株市場は一時買いが優勢となったものの、下げに転じて引けた。ドル指数(.DXY), opens new tabは小幅に上昇。米国債利回りも上昇した。

金利先物市場では、FRBの見通しよりも大幅な利下げを織り込む動きが見られ、政策金利は今年末までに4.00─4.25%になると予想されている。

アネックス・ウェルス・マネジメントのチーフエコノミスト、ブライアン・ジェイコブセン氏「FRBは金利据え置きを大々的に終わらせた。0.50%ポイント利下げと、年内の0.50%ポイント追加利下げ予想は強いシグナルだ。物議を醸す決定だ」と述べた。

パウエル議長は今後の利下げの道筋については、FRB当局者による見通しは「緊急の行動を要することは示唆していない」とし、今後入手されるデータが金融政策の方向性を決定し、必要に応じ利下げペースは加速、もしくは減速するという見解を示した。

また、7月の米雇用統計で労働市場の軟化が示されていれば、7月下旬のFOMCで利下げに着手していた可能性があったと述べた。パウエル議長は「(前回の)会合前に7月の雇用統計を入手していれば、利下げしていたかと問われれば、おそらくそうしていただろう」とした。

経済情勢については、「経済成長は堅調で、インフレは低下し、労働市場は引き続き非常に堅調な水準」とし、景気低迷に向かう兆候は見られないと述べた。

24年の成長率見通しは2.0%増と、前回6月時点の見通しの2.1%増から下方修正された。

FRBが重視するインフレ指標であるコア個人消費支出(PCE)価格指数見通しは、24年が2.3%、25年が2.1%。24年および25年の失業率見通しはともに4.4%となった。

FRBは昨年7月以降、政策金利を据え置いていた。

今回のFOMCは11月の米大統領選前の最後の会合となる。