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    この中で植田総裁は今後の政策の見通しについて「現在も実質金利が極めて低い水準にあることを踏まえると、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」と述べ、経済・物価の情勢をみながら利上げを検討していく考えを示しました。

    一方、今後注意して見ていくことが必要なものとしてアメリカ経済の動向を挙げたうえで「ことし8月初め以降のアメリカ経済に関するデータは少し弱いものが続いているので、リスクは高まっているかなと思う」と述べました。

    そのうえで「見通しの確度が高まったしたがって『すぐに利上げだ』ということにはならないと考える」と述べ、利上げの検討にあたってはアメリカ経済や不安定になっている金融市場の動向を慎重に見極めていく姿勢を強調しました。

    また、植田総裁は年内にさらなる利上げが行われる可能性があるのか問われたのに対し「特定のタイムラインやスケジュール感を持ってここまでに確認するというような予断を持っていない」と述べ、明言を避けました。

    村井官房副長官「適切な金融政策運営を行うことを期待」

    村井官房副長官は記者会見で「日銀には引き続き、政府と密接に連携を図り、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、2%の物価安定目標の持続的で安定的な実現に向けて適切な金融政策運営を行うことを期待している」と述べました。

    生保協会 会長「金融正常化に向かっていくことを確信」

    日銀が20日まで開いた金融政策決定会合で、今の金融政策を維持することを決めたことについて、生命保険協会の永島英器会長は「デフレの脱却、あるいは2%程度の物価上昇などの持続性を確認しながら日銀は今後も判断すると思うが、われわれを含めてマーケット関係者に丁寧なヒアリングをして判断されているので信頼を置いているし、中長期的な目線で考えて金利のある世界、金融正常化に向かっていくことを確信している」と述べました。

    • 注目

    ==記者会見【詳しく】==

    15:30

    会見始まる

    日銀の植田総裁の記者会見は午後3時半から始まりました。

    “引き続き政策金利を引き上げ”

    植田総裁は今後の金融政策について「先行きの経済・物価、金融情勢次第だが、現在も実質金利が極めて低い水準にあることを踏まえると、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」と述べました。

    金融資本市場 “引き続き不安定”

    植田総裁は、最近の金融資本市場について「アメリカをはじめとする海外経済の先行きは引き続き不透明であり、金融資本市場も引き続き不安定な状況にある。当面はこれらの動向を極めて高い緊張感を持って注視し、わが国の経済・物価の見通しやリスク、見通しが実現する確度に及ぼす影響をしっかりと見極めていく」と述べました。

    “物価上振れリスクは相応に減少”

    植田総裁は物価の上振れリスクについて「ここ最近の為替動向も踏まえると年初以降の円安に伴う輸入物価上昇を受けた物価上振れリスクは相応に減少しているとみている。したがって政策判断にあたってはさまざまなことを確認していく時間的な余裕はあると考えている」と述べました。

    “海外情勢 丁寧に見極めていきたい”

    植田総裁は年内に追加の利上げが行われる可能性を問われたのに対して「アメリカをはじめとする海外経済の先行きをめぐる不透明感が昨今の金融市場の動きの背後にあると考えているので、丁寧に分析してわれわれの見通しへの影響を確認していきたいと思う。その確認にどれくらいの時間がかかるかは特定のタイムラインやスケジュール感を持って、ここまでに確認するというような予断を持っていない。もう少し申し上げれば、アメリカであればソフトランディング的なシナリオに近い姿が実現していくのか、もう少し厳しい情勢になっていくのか、これを丁寧に見極めていきたいと考えている」と述べました。

    “アメリカ経済の動き不透明で相打ちのような形”

    植田総裁は基調的な物価上昇率について「消費のデータを含めてみても、われわれの見通し通りに日本経済は動いてきているとみている。これは若干なりとも基調的物価上昇率を上げてもいいような材料だが、他方で海外経済、特にアメリカ経済の動きが先行きに関して若干不透明性を高めている。それが相打ちのような形になっていると認識している」と述べました。

    “情報発信もう少し丁寧に 場合によっては少し頻繁に”

    植田総裁は、金融市場とのコミュニケーションのあり方について「7月の会合後の市場の乱高下の一因として、私どもの考え方が十分に伝わっていなかったという批判があることは承知している。私どもの経済・物価情勢に関する認識とどういう風に政策運営をしていくかについて、考え方を丁寧に説明していくことを心がけたい」と述べました。
    その上で「私どもの当面の政策運営に大きく影響するのは、物価見通しの確度が目に見えて高まったかどうかだと思う。こういう点に関する情報発信をもう少し丁寧に、場合によっては少し頻繁にできるといいと考えている」と述べました。

    “新政権とも十分に意思疎通を”

    植田総裁は、自民党の総裁選が金融政策運営に与える影響について問われたのに対し「一人一人の候補の個別のコメント、特に金融政策についてコメントすることは差し控えたい。ただ、いずれにせよ新政権とはこれまでと同様、十分に意思疎通を図っていければと考えている」と述べました。

    重視している点 “秋以降も賃金 順調に上昇続くか”

    植田総裁は今後、金融政策を決める上で重視している点について「賃金が順調に上昇しているがこれが秋以降も続くのか。また、最低賃金の引き上げの影響が出てくるのかどうか。引き続きサービス価格への転嫁が続いていくのか。さらに来年の春闘に向けての動きだ。サービス価格が上がるかどうかを決める1つの大きな要因として、消費が堅調なことが必要なので、消費の今後にも強い関心をもっている」と述べました。

    10月の利上げ “事前に申し上げること避けたい”

    植田総裁は、10月の金融政策決定会合で利上げする考えがないか問われたのに対し「特定の会合についてそこで金融政策の変更があるかないかを事前に申し上げることは避けたいと思う。毎回、その会合までに前回の会合のあと出たデータとか、さまざまな情報をベースに、見通し、あるいはリスクを判断して、政策をどうするか決定していく。この点に今後も変わりはない」と述べました。

    アメリカ経済の見通し “リスク高まっている”

    植田総裁はアメリカ経済の見通しについて「ソフトランディングをメインシナリオと見ているという点には変わりない。ただし、8月初め以降のアメリカ経済に関するデータは少し弱いものが続いているので、リスクは高まっているかなと思う。ソフトランディングのほうにまとまっていくのか、もう少し調整が強まる方向になるのか、ソフトランディングをするとしても大幅な利下げを必要とするのか、このあたりを見極めていきたい」と述べました。

    “すぐに利上げということにはならない”

    植田総裁は年内にもう1度利上げがあるかどうか問われたのに対して「足元の日本経済のデータは見通しに沿って推移している。ただしアメリカ経済を中心とする世界経済の不透明感、あるいは金融資本市場の動きが今後の見通しに不透明感を与えている。総合すると『見通しの確度が高まった』したがって『すぐに利上げだ』ということにはならないと考える」と述べました。

    ▽日銀 政策金利0.25%程度で据え置き 金融政策決定会合

    日銀は20日まで2日間の日程で金融政策決定会合を開き、今の金融政策を維持することを決めました。政策目標を据え置き、短期の市場金利を0.25%程度で推移するよう促します。

    日銀は前回7月の会合で追加の利上げを決めましたが、当面は経済・物価の動向や金融市場への影響を見極めるべきだと判断したとみられます。

    日銀は発表した声明で「消費者物価の基調的な上昇率は徐々に高まっていくと予想される」としています。

    一方で「経済・物価をめぐる不確実性は引き続き高い」としていて今後のリスク要因として、海外の経済や物価の動向、資源価格の動向、それに企業の賃金や価格設定の行動などを挙げています。

    その上で「金融・為替市場の動向やその経済・物価への影響を十分注視する必要がある。このところ企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面がある」と指摘しました。

    一方、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会は18日、金融政策を決める会合を開き、通常の2倍にあたる0.5%の利下げに踏み切りました。

    日銀は今回、政策金利を据え置いたものの、この先は経済・物価の情勢をみながら利上げを検討していく姿勢で、日米の政策の方向性の違いが金融市場にどのような影響を及ぼすのかが焦点となります。