• 7日物政策金利は1.5%に下げ、預金準備率は18年以来の低水準へ
  • 不動産市場支援策も公表、株式安定化基金の創設検討

中国人民銀行(中央銀行)は24日、今年の5%前後の経済成長目標の達成に向け、これまでで最も広範な景気刺激策を打ち出した。成長減速と投資家心理の低迷を巡り習近平政権内に高まる懸念を浮き彫りにした。

  人民銀の潘功勝総裁は北京で記者会見し、市中銀行の預金準備率を少なくとも2018年以降で最低水準に引き下げる計画を発表。主要短期金利の一つである7日物リバースレポ金利の引き下げも明らかにした。両方の引き下げが同日に公表されたのは初めて。

  潘総裁はまた、苦境にある国内不動産市場を支えるための措置も発表。最大5兆3000億ドル(約762兆円)相当に上る既存の住宅ローンの借り入れコスト引き下げや、セカンドハウス購入に関する規制の緩和などを盛り込んだ。

  預金準備率は0.5ポイント引き下げられる。これにより1兆元(約20兆円)の流動性がもたらされると潘総裁は述べた。中国は年内の適切な時期にさらに0.25-0.5ポイントの預金準備率引き下げを行う可能性もあると総裁は付け加えた。

  7日物リバースレポ金利は現行の1.7%から1.5%に引き下げられる。

  潘総裁は証券会社やファンド、保険会社が人民銀からの流動性を利用して株式を購入できるよう、スワップファシリティーを設立することも明らかにした。人民銀はこのほか専門の借り換えファシリティーを別途設立し、上場企業や大口株主が株式買い戻し・保有増に充てられるようにする。

  総裁はさらに、低迷する中国株式市場に少なくとも8000億元の流動性支援を供給する方針を示し、株式安定化基金の設立を検討していることも明らかにした。

  金融市場では人民銀の発表を受け、中国株が上昇。指標のCSI300指数は5営業日続伸し、一時4%高。今年の下げを埋める水準に近づいたものの、21年のピークからは依然として40%余り下げている。商品相場は小幅な上昇にとどまり、人民元は対ドルでほぼ変わらず。中国の10年国債利回りは一時過去最低を付けたが、その後2.06%に戻している。

  スタンダードチャータードの中国マクロ戦略責任者、ベッキー・リュー氏は「金融緩和策は予想よりも大胆なもので、利下げと預金準備率引き下げが同時に発表された」と指摘。「米金融当局による大幅利下げを受け、今後数四半期はさらに大胆な緩和策が実施される余地があると考えられる」と述べた。

  投資家が予想していた措置もいくつか含まれていたが、大々的に発表したことは、5%前後の成長目標を達成できない恐れがあるとの警鐘を当局が真剣に受け止めている表れだ。矢継ぎ早の政策発表により、成長目標に再び手が届く可能性はあるが、中国の長期にわたるデフレ圧力を打破し根深い不動産危機を打開するのに十分かどうか疑問は残る。

  イーストスプリング・インベストメンツ香港のアジア株式ポートフォリオスペシャリスト、ケン・ウォン氏は「金融緩和策は朗報だが、第4四半期の成長を確かなものにするには、さらに多くの対策が必要だ」と述べた。

  中国政府は、過去のバズーカ砲級の景気刺激策に頼らずに経済のてこ入れに取り組んできたが、これまでの断片的な取り組みでは景気低迷を食い止めるには至っていない。JPモルガン・チェースなどウォール街の金融機関のエコノミストらは、中国が今年の成長目標を達成できないと予測している。

  オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)のレイモンド・ヤン大中華圏チーフエコノミストは一連の対策について「バズーカ砲と呼ぶには程遠い」と述べ、「住宅ローン金利の引き下げがどの程度、不動産市場の回復につながるかは分からない」と語った。

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