James Attwood

日本製鉄による買収計画を巡り、米USスチールと全米鉄鋼労働組合(USW)との間で行われた「仲裁」では、USスチールに有利な裁定が下された。USWが25日、明らかにした。

  141億ドル(約2兆300億円)での買収に反対するUSWは、日鉄の狙いはUSスチールをペーパーカンパニーとして利用し米国内での義務を免除されることにあると主張。仲裁パネルは先月行われたヒアリングに基づき、買収合意は労使協約に反するとの労組側の主張を退けた。ヒアリングの結果は労組が文書で発表するまで開示されていなかった。

  調停が下した裁定はUSWに後退を意味するが、影響力のある同組合の反対は11月の大統領選挙を前に、買収合意に対する政治的センチメントを動かす重要なツールになっている。バイデン米大統領は今年、USスチールは米国人が所有する企業であり続けるべきだと発言。「米国の鉄鋼労働者には、私が味方だと伝えた」と述べた。

  USWは「裁定内容には明らかに失望したが、合意に対するわれわれの反対姿勢を変えるものではなく、失われかねない雇用とコミュニティーを守るわれわれの決意は変わらない」との声明をウェブサイトに掲載した。

  日鉄は調停の結果を受けて、政治的な反対や対米外国投資委員会(CFIUS)による審査といった規制面でのハードルに注力できるようになる。CFIUSは日鉄に審査の再申請を許可したため、判断は11月の選挙後に持ち越される可能性が高い。

日鉄がUSスチール買収審査で延長獲得、米選挙後に判断先送りへ

原題:US Steel Gets Favorable Outcome in Union Arbitration Over Deal(抜粋)