Rheaa Rao、Isabelle Lee

2024年9月27日 5:47 JST

  • 自民党総裁選、市場への影響を警戒-朝方の米統計は強い内容
  • 金は連日の最高値更新、サウジの供給拡大報道で原油は続落
A trader works on the floor of the New York Stock Exchange (NYSE) in New York, US,
A trader works on the floor of the New York Stock Exchange (NYSE) in New York, US, Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

26日の米国株式相場は朝方の上げを一部維持して引けた。この日発表された経済データは強い内容だった。米経済の健全性をさらに見極めるための手がかりが待たれている。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数5745.3723.110.40%
ダウ工業株30種平均42175.11260.360.62%
ナスダック総合指数18190.29108.080.60%

  S&P500種株価指数は今年42度目の過去最高値更新。ナスダック100指数は0.7%上昇した。

  米経済の力強さを示す経済データと中国の大型財政投入で、朝方の取引は活気づいた。人工知能(AI)関連需要で強気の見通しを示したマイクロン・テクノロジーが上昇し、株価指数を押し上げた。同じくAI銘柄のスーパー・マイクロ・コンピューターは、米司法省による調査の報道を嫌気して下落した。

  米経済の健全性と政策金利の軌道を見極める手がかりとして、27日発表の個人消費支出(PCE)価格指数が注目されている。

  アカデミー・セキュリティーズのマクロ戦略責任者、ピーター・チア氏は「経済データが市場の予想より底堅い数字になる可能性はあると考えている。特に雇用に関する統計はその可能性が高いだろう」と述べた。

  米経済はこれまで分かっていた以上に力強く新型コロナウイルス禍から盛り返していたことが、政府のデータ改定で明らかになった。消費主導の成長が想定より大きかったことが、全体を押し上げた。先週の新規失業保険申請件数は減少し、労働市場の底堅さを浮かび上がらせた。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演が待たれていたが、議長は経済見通しや金融政策の道筋に言及しなかった。

米国債

  米国債利回りは総じて上昇。労働市場の指標が強い数字となり、大幅利下げ見通しが低下。今週最後となる中長期債入札での需要を高めた。

国債直近値前営業日比(BP)変化率
米30年債利回り4.13%-1.1-0.26%
米10年債利回り3.80%1.10.30%
米2年債利回り3.62%6.31.78%
  米東部時間16時46分

  金融政策の変化に最も感度が高い短期債の利回りが比較的大きく上昇した。2年債利回りは一時7ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)近く上昇し約3.63%を付けた。10年債利回りは3.82%まで上昇し、9月4日以来の高水準を付けた。

  440億ドル(約6兆3600億円)相当の7年債入札は強い需要を集め、最高落札利回りは3.668%と発行日前(WI)取引の利回りを下回った。今週行われた2年債と5年債の入札では、ほぼ予想通りの結果だった。

US 10-Year Yield Rises to Highest Since Sept. 4
米10年債利回り出所:ブルームバーグ

  先週の米新規失業保険申請件数が発表されると、利回り上昇は加速した。このところの雇用減速にもかかわらず、申請件数は4カ月ぶりの低水準に減少した。4-6月(第2四半期)の米実質国内総生産(GDP)確報値は前期比で年率3.0%増加。エコノミストは小幅な下方修正を予想していた。

  50bpの追加利上げがあるかどうかを見極める上で、経済統計に注目が集まっている。市場は11月末までに約37bp相当の金融緩和を織り込んでおり、50bp利下げの確率はまずまず高いとみられている。

  ニューヨーク連銀が主催した米国債市場会合でウィリアムズ総裁をはじめ複数の当局者発言があった。バーFRB副議長は、保険対象外の預金を保護する義務を含めた流動性枠組みの調整が検討されていることを明らかにした。

外為

  外国為替市場では円が対ドルでほぼ変わらず。ドルは主要10通貨に対してほぼ全面安の展開。中国大手銀行への大規模な政府資本注入を受けてリスク志向が改善した。米経済の順調な成長もデータで示された。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1220.89-5.37-0.44%
ドル/円¥144.83¥0.080.06%
ユーロ/ドル$1.1175$0.00420.38%
  米東部時間16時25分

  円は一時、対ドルで145円21銭まで下げる場面もあった。日本時間27日に投開票が行われる自民党総裁選を巡り、トレーダーは市場への影響に注視している。高市早苗経済安全保障担当相は当選すれば、日本初の女性首相となる。同氏は利上げへの反対を公に表明している。

  野村インターナショナルの通貨ストラテジスト、宮入祐輔氏は「政治的な不透明感が市場の見方に影響しているが、ファンダメンタルな経済指標はなおも日本銀行による追加利上げを正当化しており、ドル・円の上値余地が限定的なことを示唆している」と指摘した。

  その上で「高市氏が当選した場合、今後3年に予想される日銀利上げの織り込み分がすべて消えたとしたら、ドル・円が最大で5-6円上昇する可能性はある」と続けた。

原油

  ニューヨーク原油先物相場は続落。サウジアラビアが12月に供給拡大に踏み切るとの報道を受け、売りが膨らんだ。リビアが中央銀行の新総裁を指名し、原油生産再開への道を開いたことも売り材料。

  サウジは原油市場でのシェア回復を目指して増産する用意があり、1バレル=100ドルの非公式な価格目標を断念する構えだと、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が報じた。

サウジは原油1バレル=100ドル目標断念へ、シェア回復目指し-FT

  対立するリビア東西両政府の代表は、中銀新総裁にナジ・イッサ氏を指名することで合意。原油輸出を滞らせていた中銀運営を巡る行き詰まりの解消に動く。リビア東部政府は国内の油田操業を近く再開することも表明したと、国連関係者が明らかにした。

Oil Extends Declines on Prospect of Higher Supply | Saudi Arabia may look to boost market share, FT reports
WTI原油先物出所:ブルームバーグ

  石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成される「OPECプラス」の供給拡大見通しや中国の景気見通し悪化を受け、原油相場は今月、2021年以来の安値に下落した。国際エネルギー機関(IEA)は、OPECプラスからの追加供給の有無にかかわらず、それ以外の国からの生産が急増するため、来年の世界石油市場は供給過剰になるとの見通しを示している。

  A/Sグローバル・リスク・マネジメントのアナリストはリポートで、「OPECプラスが2025年に原油価格を80ドルに近づけたいのであれば、供給量を拡大する余地はない」とし、「サウジが割当量の違反国に強い圧力をかけようとしているようだ」と指摘した。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物11月限は2.02ドル(2.9%)安の1バレル=67.67ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント11月限は2.5%安の71.60ドルで引けた。

  金スポット相場は上昇し、最高値を更新した。米利下げ観測を背景に買いが続いた。

  金スポットは一時、1オンス=2685.58ドルに上昇。米国の成長懸念が長引く中、マクロ経済における新たな原動力が求められおり、米金融当局が年内に75ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余りの利下げを実施するとの見方が強まっている。金利低下は、金利を生まない金に恩恵をもたらす傾向がある。

  スポット価格はニューヨーク時間午後2時50分現在、0.7%高の2675.91ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物12月限は10.20ドル(0.4%)高の2694.90ドルで引けた。

原題:S&P 500 Notches Fresh Record Ahead of PCE Data: Markets Wrap(抜粋)

Treasury Market Stung by Jobs Data Sees Solid Auction Demand(抜粋)

Dollar Weakens, Aussie Rises 1% After China News: Inside G-10(抜粋)

Oil Extends Sharp Drop on Prospect of More Saudi, Libyan Supply(抜粋)

Gold Hits Record as Investors Await Powell Speech for Rate Clues(抜粋)