Rheaa Rao、Emily Graffeo
- エヌビディアが指数押し下げ、中国が国内企業に国産品購入を指示
- イスラエルのヒズボラ本部攻撃でリスクオフ、原油は反発
27日の米国株式市場でS&P500種株価指数は小幅安。週間ベースではプラスで終え、3週連続高となった。景気の熱は下がってきたが急激に悪化はしていないことが、経済指標で再び示された。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5738.17 | -7.20 | -0.13% |
ダウ工業株30種平均 | 42313.00 | 137.89 | 0.33% |
ナスダック総合指数 | 18119.59 | -70.70 | -0.39% |
8月の米個人消費支出(PCE)統計では、変動の大きい食品とエネルギーを除くコア価格指数が前月比ベースで市場予想を下回る伸びにとどまった。消費支出の伸びもわずかで、景気の減速感が示唆された。9月のミシガン大学消費者マインド指数(確報値)は5カ月ぶりの高水準。利下げを受けて景気に対する楽観的な見方が強まった。
今週は連邦準備制度理事会(FRB)当局者の発言が続いたが、政策軌道への見方を変えるには至らず。セントルイス連銀のムサレム総裁は、「漸進的な」利下げが望ましいと述べた。ボウマン理事は米経済の強さをあらためて強調。パウエル議長は前日の講演で、経済見通しや金融政策の道筋に言及しなかった。
今週は中国当局が連日、景気刺激措置を発表するなど取引材料が相次いだ。スイスやメキシコ、ハンガリー、チェコなど複数の中央銀行が政策金利を引き下げた。
全般に堅調な1週間だったものの、S&P500種とナスダック100指数はこの日を下げて引けた。エヌビディアが指数を押し下げ。中国当局は国内企業への指針として、エヌビディア製ではなく国産の人工知能(AI)半導体を購入するよう指示した。
次回連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げが25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)になるのか再び50bpになるのか、市場の見方は依然二分されている。2%のインフレ目標は来年達成されるとエコノミストは予想している。
モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は「この日のPEC価格指数を『スイートスポット』に収まっている一連の経済指標に加えよう」と発言。「インフレは落ち着いた推移が続いている。経済成長は減速しているかもしれないが、崖っぷちから落ちているような兆候は見られない」と述べた。
フェデレーテッド・ハーミーズ(FH)のポートフォリオマネジャー、ダミアン・マッキンタイア氏は米経済のソフトランディング(軟着陸)は決して保証されていないが、最近の経済データに示される強さは投資家に安心材料となるはずだと述べた。
「この日の物価統計はパウエルFRB議長による先週の発言を裏付ける。インフレ率は低下しており、個人消費は強く、労働市場は依然底堅い」と述べた。
米国債
米国債相場は上昇。この日発表の経済統計が追加利下げ観測を強固にした。イスラエルがベイルートのヒズボラ本部を爆撃したことを受け、リスクオフのセンチメントも広がった。
イスラエル、ベイルートのヒズボラ本部を攻撃-対立エスカレート (1)
国債 | 直近値 | 前営業日比(BP) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.10% | -2.7 | -0.65% |
米10年債利回り | 3.75% | -4.6 | -1.20% |
米2年債利回り | 3.56% | -6.9 | -1.92% |
米東部時間 | 16時52分 |
月間ベースでは14年ぶりの最長連騰を記録する勢い。ソフトランディングを目指す米金融当局が、さらなる0.5ポイント利下げを実施するとの観測が強まっている。
アクサ・インベストメント・マネジャーズのコア投資担当最高投資責任者(CIO)のクリス・イッゴ氏とチーフエコノミストのジレ・モエック氏は、「債券市場は特に、高いリターンを上げている」と指摘。「中央銀行の金利見通しの大幅なシフトを反映している」と述べた。
8月の米PCE統計を受けて、市場では年内に0.5ポイント利下げが少なくともあと1回実施されるとの観測が広がった。来週公表される9月の雇用統計で再度試される。
コロンビア・スレッドニードル・インベストメンツの世界金利ストラテジスト、エド・アルフサイニー氏は、「50bpで利下げを開始したのは、基本的に政策が引き締まり過ぎているというのが理由だ」と指摘。「その論理が『先手を打って一定のリスクを排除しよう』というものであったのなら、労働市場が順調であっても、11月にも通用するだろう」と話した。
トレーダーらは11月末までに約37bp相当の緩和、2024年末までに合計約75bpの利下げを織り込んでいる。これは、次回FOMC会合で再度の0.5ポイント利下げが実施される確率を50%とみていることを示唆する。
外為
外国為替市場のドルは軟調。米経済データで景気の冷え込みが裏付けられた。円はアジア時間に急伸。自民党総裁選で石破茂元幹事長が選出されたことに反応した。ユーロはフランスとスペインのインフレ統計を受けて下落した。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1219.14 | -1.91 | -0.16% |
ドル/円 | ¥142.26 | -¥2.55 | -1.76% |
ユーロ/ドル | $1.1159 | -$0.0018 | -0.16% |
米東部時間 | 16時52分 |
米PCE統計では景気の減速感が示唆された。ブルームバーグ・ドル・スポット指数は週間ベースで4週連続安。
クレディ・アグリコルCIBのストラテジスト、バレンティン・マリノフ氏は「大幅な追加利下げの鍵は来週の労働市場データが握る」と指摘。「FOMCに関したネガティブ材料の多くはドルの水準に織り込み済みだという見方に変わりはない」と述べ、「(日銀という明らかな例外は別として)米国以外の中銀は近く追随して政策を緩和すると予想されている。ドルはユーロなどに対してこれまで下げた分を一部取り戻す可能性がある」と話した。
円はニューヨーク時間に142円07銭まで上昇した。
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原油
ニューヨーク原油先物相場は反発。イスラエル軍がレバノンのベイルート南部にある親イラン民兵組織ヒズボラ本部を攻撃したため、中東情勢が一段と緊迫し、買いが膨らんだ。
ただ、サウジアラビアとリビアからの供給増が予想される中、週間では下落した。
イスラエルの攻撃はネタニヤフ首相がヒズボラとの戦いを継続すると表明した後に発生し、米国が主導する停戦見通しに再び疑問符が付いた。
前日には、サウジアラビアは増産の用意があるとの報道が流れた。今週は対立するリビア東西両政府の代表が中銀新総裁の指名で合意し、原油生産の再開に向けて一歩進んだことも売り材料となった。
CIBCプライベート・ウェルスのシニア・エネルギー・トレーダーのレベッカ・バビン氏は「原油は安定しようとしている。市場はリビアの供給再開を消化し、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成される『OPECプラス』が12月に供給を再び拡大させる可能性があると見込んでいる」と述べた。
OPECプラスが自主的な供給抑制の緩和を計画していることや、石油輸入で世界首位の中国が厳しい経済見通しを示していることから、原油はこのままいけば四半期ベースで下落となる。中国は今週、景気刺激に向けた金融・財政政策を相次いで発表し、株価や一部の商品を下支えしたが、その効果は依然不透明だ。
バビン氏は「中国の景気刺激策はほとんど材料視されておらず、市場は供給増の当面の影響に注目している。こうした景気刺激策による潜在的な需要の押し上げが実現するには、まだ時間がかかりそうだ」と語った。
熱帯性暴風雨「ヘレン」は米南部全域に危険な降雨と洪水を引き起こしており、少なくとも21人が死亡、約400万世帯が停電になっている。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物11月限は51セント(0.8%)高の1バレル=68.18ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント11月限は0.5%高の71.98ドルで引けた。
金
金スポット相場は反落し、週間の上げを縮めた。今週は米追加利下げへの期待から、連日のように最高値を更新した。
PCEやPCE価格指数は米金融当局が今後数カ月間に追加利下げに踏み切るとの期待を強める一方、利下げ幅を巡る議論にも拍車をかけた。
週間では1%上昇し、3週連続高。
スポット価格はニューヨーク時間午後1時38分現在、1.1%安の1オンス=2644.27ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物12月限は26.80ドル(1%)安の2668.10ドルで引けた。
原題:Stock Rally for the Week on Fed Rate-Cut Optimism: Markets Wrap(抜粋)
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