Cristin Flanagan
- 石破首相発言と米ADP統計で円の売りに拍車
- 米10年債利回りは上昇、S&P500ほぼ横ばい
外国為替市場で円相場は下落。対ドルで2%を超える下げとなり、146円台半ばまで売り込まれた。 石破茂首相が追加の利上げをするような環境に現在はないと述べたことで売りに拍車がかかり、米ADP民間雇用者数の発表後に一段安となった。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1228.96 | 3.00 | 0.24% |
ドル/円 | ¥146.48 | ¥2.91 | 2.03% |
ユーロ/ドル | $1.1047 | -$0.0021 | -0.19% |
米東部時間 | 16時49分 |
日本銀行の植田和男総裁も石破首相就任後初めて公の場で発言し、政策見通しについてハト派的な見解を示していた。一方で米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は今週に入り、米経済はしっかりとした足取りを続けていると指摘。市場では大幅な米利下げ観測が後退している。
ロード・アベットのポートフォリオマネジャー、リア・トラウブ氏は「パウエル議長は今年の利下げペースを巡って、市場よりも金融当局の方がタカ派的であると繰り返し示唆した。一方で日銀は当面は利上げがテーブルにはないと言っている。これは円にとってダブルパンチだ」と指摘。「市場は数週間前はドルに対して弱気になり過ぎていたが、現在は見直しを余儀なくされている」と語った。
三菱UFJ信託銀行の横田裕矢氏(ニューヨーク在勤)は「もし日銀が8月5日にしたように政策金利を引き上げ、市場にショックを与えるようなことがあれば、石破政権への影響は甚大になる」と指摘。「従って日銀は今年中に政策金利を引き上げることはないとみられる。円安基調は年末まで続くだろう」と述べた。
ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)の市場戦略グローバル責任者ウィン・シン氏は「ドル円は9月下旬の高値である146円50銭近辺を試しに行き、さらに同月上旬高値の147円20銭近辺を試す方向だ」と予想。「当面は145-150円の新たなレンジ内の動きだろう」と述べた。
国債・株
ADP統計では民間雇用者数が予想以上に増加。労働市場の冷え込みを示した他の経済統計と整合しないデータとなった。
米ADP民間雇用者数、予想上回る増加-5カ月連続減速から反転
同統計を受け、市場では次の連邦公開市場委員会(FOMC)会合での大幅利下げ観測が後退。米国債相場は売られ、10年債利回りは一時8ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇して3.8%を上回った。前日には、中東での緊張激化を受けた逃避需要から国債が買われ、10年債利回りは一時3.69%に下げていた。
国債 | 直近値 | 前営業日比(BP) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.13% | 5.7 | 1.41% |
米10年債利回り | 3.78% | 5.1 | 1.37% |
米2年債利回り | 3.64% | 3.7 | 1.03% |
米東部時間 | 16時49分 |
モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は「予想を上回るサプライズとなったADP雇用統計は、労働市場が曲がりつつも壊れてはいないことを示唆している」と指摘。「4日発表の9月雇用統計が現在の雇用情勢を巡る最終的な判断材料となり、短期的な市場心理にも影響する公算が大きい」と述べた。
株式市場ではS&P500種株価指数がほぼ変わらずで終了。ハイテク銘柄の比重が高いナスダック100指数は0.15%上昇した。個別銘柄ではテスラが3.5%下落。四半期ベースの自動車販売が今年初の増加となったが、投資家の期待には届かなかった。
米金融当局者発言では、リッチモンド連銀のバーキン総裁がこの日、インフレ退治の進展と価格決定力が経済に及ぼす力が弱まりつつある兆候を指摘した上で、米金融政策当局がインフレ退治の勝利を宣言するのは時期尚早との見方を示した。
リッチモンド連銀総裁、インフレ退治の勝利宣言は時期尚早
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5709.54 | 0.79 | 0.01% |
ダウ工業株30種平均 | 42196.52 | 39.55 | 0.09% |
ナスダック総合指数 | 17925.12 | 14.76 | 0.08% |
イスラエルがイランに対する報復攻撃を言明するなど、中東情勢は引き続き緊張している。ただトレーダーらは4月の時と同様、全面戦争には発展しないことを期待している。バイデン米大統領はイスラエルに対し、イラン核施設への攻撃を控えるよう促した。
イスラエル軍にレバノンで死者、地上侵攻で初-G7はイラン制裁計画
アムンディ・アセット・マネジメントのアナ・ローゼンバーグ氏は「明らかに多くの不確実性がある」と指摘。「 それでも市場は依然として、全面戦争に発展することなく、ある程度は抑制された状態が続くという基本シナリオに沿って動いているようだ。現時点で、それは正しいことだと思う」とブルームバーグTVで語った。
株の強気派にとっては、原油相場の上昇が抑えられるかどうかが鍵になるとみられる。
サンクチュアリー・ウェルスの最高投資ストラテジスト、メアリー・アン・バーテルズ氏は、原油価格が1バレル当たり100ドルを下回って推移し、企業収益が堅調である限り、株高基調は続くと指摘。S&P500種が年内に6000の大台に達するとの予想を示した。
原油
ニューヨーク原油先物相場は続伸したが、日中高値からは上げ幅を縮小。米国の原油在庫増加がこの日の統計で示されたことを受け、供給は潤沢であり、中東での戦闘激化で供給が混乱したとしても影響を吸収できるとの見方があらためて広がった。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は一時、バレル当たり72ドルを上回ったが、最終的には70ドルをわずかに上回った水準で引けた。
米エネルギー情報局(EIA)のデータによれば、米国の原油在庫は先週389万バレル増加。一方でガソリン需要は減少し、6カ月ぶり低水準となった。
石油輸出国機構(OPEC)と非加盟の産油国で構成される「OPECプラス」は近く供給過剰に陥る兆しが表れているにもかかわらず、年終盤から生産回復を徐々に始める計画を維持した。
OPECプラス、12月からの生産引き上げを維持-計画変更せず
みずほセキュリティーズUSAのエネルギー先物部門ディレクター、ロバート・ヨーガー氏は「OPECプラスには580万バレルの予備能力があるので、イスラエルが石油インフラを攻撃したとしても不足分を埋めるだけの原油が潤沢にある」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物11月限は27セント(0.4%)高の1バレル=70.10ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント12月限は34セント(0.5%)高の73.90ドルで引けた。
金
ニューヨーク金相場は反落。イランが前日にイスラエルに向けて弾道ミサイルを発射したことを受け、イスラエルがどのように対抗するかに市場の関心が集まっている。
サクソ・キャピタル・マーケッツのストラテジスト、チャル・チャナナ氏は「地政学的ニュースの見出しに、市場は直ちに反応することがしばしばあるが、重要資産に影響がなければそうした反応は元に戻る傾向がある」と指摘。
同氏は、引き続き金は魅力的なヘッジ手段だとした上で、「相場が次にどのように反応し得るかを考えるとき、主に懸念されるのは事態がエスカレートするリスクだ。特にイランが持つ石油資産が標的になるかどうかだ」と述べた。
金スポット相場はニューヨーク時間午後3時20分現在、0.2%安の1オンス=2657ドルちょうど。ニューヨーク商品取引所の金先物12月限は20.60ドル(0.8%)安の2669.70ドルで引けた。
原題:
Yen Takes a Hit as Hopes for BOJ to Hike Rates Fade: Inside G-10
Japanese Yen Extends Slide to 2%, Biggest Drop Since August 7
Bonds Slip as Promise of Second Big Fed Cut Curbed: Markets Wrap
Oil Pares Gain on Signs Market Can Absorb Middle East Disruption
Gold Retreats as Haven Buying Eases Following Iran Strikes