中国政府は、不動産セクターを対象に新たな支援策を講じる方針を示し、景気を下支えするため政府借り入れの拡大も示唆した。景気減速に歯止めをかけることを目指す。
藍仏安財政相らは12日の記者会見で、地方政府が特別債の活用を通じ、売れ残り住宅を買い取ることを認めると説明。具体的な規模については言及しなかった。藍氏は国債増発余地があると示唆したほか、地方政府の債務負担を軽減するとも表明。今後数週間で予算の修正が行われる可能性がある。
藍財政相は「中央政府には借り入れを進め、赤字を拡大する余地がまだかなりある」と述べた。
藍氏は追加刺激策を講じた場合の具体的な規模に触れておらず、投資家の失望を招く可能性もある。だが、今回発表された措置は不動産セクター危機を抑制し、地方政府が緊縮を余儀なくされていた債務問題にも対処するとのエコノミスト予想におおむね沿ったものとなった。当局者によると、中国は国有大手銀行の資本増強に向けて特別国債も発行する方針で、融資の促進で景気をてこ入れする見込みだ。
ジョーンズラングラサールの大中華圏担当チーフエコノミスト、龐溟氏は「地方債務リスクを軽減し、国有銀の資本不足を補い、不動産セクターを下支えすることを目的に発表された今回の財政支援は、まさに市場や投資家が期待しているものだ」とコメントした。
龐氏や他のエコノミストは、向こう数週間に開催される全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会の会議後、国債の増発や年度途中の予算修正などより踏み込んだ詳細が公表されると見込んでいる。
全人代常務委は昨年10月の会議でも、国債の追加発行を承認し、23年の財政赤字の対国内総生産(GDP)比を約3.8%へと引き上げていた。
前向きなトーン
オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)のシニアストラテジスト、邢兆鵬氏は「前向きなトーンであり、財政省は国債と地方債の枠を追加する可能性が高い」と分析。「1兆元(約21兆円)規模の超長期国債と1兆元の地方債がそれぞれ発表されるとわれわれは予想している」と述べた。
ブルームバーグが藍財政相の記者会見前に実施した調査では、中国政府は最大2兆元の新たな財政刺激策を打ち出すと投資家やエコノミストが見込んでいた。
藍財政相は具体的な規模を明かさなかったが、地方政府のバランスシート外の債務を交換する上限を引き上げる単発の取り組みについて「ここ数年で最大」になるとの見通しを示した。
ゴールドマン・サックス・グループの王立升氏率いるエコノミストチームは、中国当局が地方政府債務の交換計画を複数年で5兆元程度に拡大すると予想した。
中国当局は9月下旬から刺激策パッケージを打ち出し始めたものの、財政面の景気支援策が欠けていた。中国人民銀行(中央銀行)はすでに利下げに加え、不動産や株式市場の下支え策も講じている。
世界2位の経済規模を誇る中国が今年設定した5%前後のGDP成長率目標を達成できない恐れもあり、公的支出の拡大は景気てこ入れに欠かせないと考えられている。
だが、財政省の当局者は会見で、消費への直接的な後押しを限定的にしか示さず、世帯への大規模な給付金の支給を示唆することもなかった。
ANZのシニアストラテジスト、邢氏は「政府が刺激策の軸足を消費に移すにはまだ長い道のりがある」とし、「成長率を高めるか、リスクを防ぐか。現段階では政府は後者を選んでいるように見受けられる」と述べた。
原題:China Shores Up Property Sector, Signals More Spending Is Coming(抜粋)
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▽中国株が反発、財政省の不動産支援や財政拡大に向けた方針受け<bloomberg日本語版>2024年10月14日 11:15 JST