17日の外国為替市場ではドルが上昇し、対円で150円台に乗せた。米国の個人消費と労働に関するデータを受け、利下げ観測が後退した。ユーロは下落。欧州中央銀行(ECB)は政策金利を引き下げ、成長リスクを指摘した。
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為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1254.84 | 1.55 | 0.12% |
ドル/円 | ¥150.21 | ¥0.57 | 0.38% |
ユーロ/ドル | $1.0829 | -$0.0033 | -0.30% |
米東部時間 | 16時35分 |
ドルは150円32銭まで上昇し、約2カ月半ぶりの高値を付けた。
みずほフィナンシャルグループで欧州・中東・アフリカ(EMEA)地域のマクロ戦略責任者を務めるジョーダン・ロチェスター氏は、「ドルは152円に上昇すると当社ではみており、その動きは止まらないようだ」と述べ、日本銀行が10月に動く可能性が低いことと強い米経済統計を挙げた。
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三菱UFJ信託銀行ニューヨークのセールスおよびトレーディング部門責任者、小野寺孝文氏は強い米経済データが続けば、円は今月中に対ドル153円を付けることもあり得ると語った。
野村インターナショナルの通貨ストラテジスト、宮入祐輔氏はトランプ氏が米大統領に返り咲く見通しも円には重要なリスクだと述べた。
米金融政策の道筋と経済統計は別として、トランプ氏当選の場合、ドルは反射的に対円で急伸する可能性があると同氏は指摘。市場はトランプ氏の勝利をインフレ的なものと認識している可能性が高いからだと説明した。
主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は、4日続伸。
9月の米小売売上高は広範囲の分野で増加し、市場予想を上回る伸びとなった。米失業保険の新規申請件数は先週、予想外に減少した。前週はハリケーン「ヘリーン」の被害を受けた南東部で急増していた。
金利スワップ市場は現在、2025年1月末まで約59ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げを織り込んでいる。前日は64bpだった。
ユーロは1.0811ドルまで下落。ECBは今年3度目の利下げを実施し、中銀預金金利を0.25ポイント引き下げ3.25%とした。
株式
米株式市場では、S&P500種株価指数が上げを消す展開。引け後に決算を発表したネットフリックスは時間外で乱高下した。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
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S&P500種株価指数 | 5841.47 | -1.00 | -0.02% |
ダウ工業株30種平均 | 43239.05 | 161.35 | 0.37% |
ナスダック総合指数 | 18373.61 | 6.53 | 0.04% |
エヌビディアは台湾積体電路製造(TSMC)の強気見通しを好感して上昇。保険のトラベラーズは急伸した。四半期利益が前年同期の3倍に増えた。
シティグループの経済サプライズ指数米国版は、予想を上回る一連の経済データを受けて4月以来の水準に上昇した。同指数は実際の発表値とアナリスト予想の差に基づく。
eToro(イートロ)のブレット・ケンウェル氏は、この先も強い経済データが続けば将来の利下げ見通しは後退しかねないと指摘する。
「確かに利下げは市場にとって重要だが、それだけが重要なのではない。金利見通しが大きく揺れ動いたにもかかわらず市場が今年いかに堅調に推移したか考えてみてほしい。企業決算と景気が株価を強力に押し上げた」とケンウェル氏。「これらの柱が健在である限り、株価には良好な状態が続くはずだ」と述べた。
個別企業のニュースではブラックストーンの7-9月(第3四半期)が増益決算となった。クレジット部門に投資家の資金が流入し、同事業は資産規模で同社最大部門となった。
国債
米国債相場は下落。小売売上高が強い数字となり、市場では年内利下げ見通しが後退した。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
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米30年債利回り | 4.40% | 10.1 | 2.34% |
米10年債利回り | 4.10% | 8.4 | 2.10% |
米2年債利回り | 3.98% | 4.1 | 1.03% |
米東部時間 | 16時35分 |
国債利回りは軒並み上昇。小売売上高を受けて、トレーダーが予想する金融緩和ペースに疑念が生じた。金利スワップ市場では11月と12月の連邦公開市場委員会(FOMC)で合計42ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げが織り込まれている。
フォレックス・ドット・コムのマシュー・ウェラー氏は「11月の利下げ見合わせへ狭い道が通じている。しかしそこにたどり着くには、これから出てくる重要統計が全て予想より強い経済を示す必要がある」と述べた。「11月会合の結果にかかわらず、2025年を見据えた今後の金利軌道は数週間前より高くなった」と話した。
カーバチャー・セキュリティーズの債券部門責任者、トム・ディガロマ氏は「市場は経済指標の軟化傾向が続くとみていたが、一貫したテーマになっていない」と指摘。11月会合では利下げの可能性の方が見送りよりも高いだろうが、「こうした見方は多くの市場参加者の間で後退している」と述べた。
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LPLファイナンシャルのクインシー・クロスビー氏は「小売売上高は予想を大きく上回り、弱い景気論をまたもや否定した」と話す。「金融政策にとっての意味合いは、再認識された景気の強さがインフレ上振れにつながると連邦準備制度理事会(FRB)が懸念するかどうかに集中する。ただ、次回FOMCでは依然25bpの利下げが見込まれている」と述べた。
原油
ニューヨーク原油先物相場は5営業日ぶりに上昇。市場では、米原油在庫減少や中東での生産リスクが意識された。
この日発表された政府の統計によれば、米国の原油在庫は219万バレル減少。この減少幅は、業界団体の予想を上回った。ブルームバーグ・ユーザーの予想は130万バレル増加だった。
イスラエルがイランの石油生産施設を標的にしない可能性があるとの一部報道を受け、原油相場はこのところ下落が続いていた。ただ、中東情勢に改善の兆しはほとんど見られない。イスラエルは、イランが支援するイスラム組織ハマスの指導者ヤヒヤ・シンワル氏がイスラエル国防軍(IDF)により殺害されたと明らかにした。イスラエルはレバノンへの空爆も強化。また米国のステルス爆撃機が、イエメンの親イラン武装組織フーシ派と関連のある兵器保管施設を攻撃した。
CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏は「原油取引は不安定な状態が続いている。市場は中東情勢の展開を読み解こうとしている」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物11月限は、前日比28セント(0.4%)高の1バレル=70.67ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント12月限は23セント(0.3%)上昇し、74.45ドルで引けた。
金
金スポット相場は3日続伸し、最高値を更新。最新の米経済データが発表された後も、市場の米利下げ見通しは維持された。
経済データの発表後、金は一時上げを縮める場面もあったが、その後は再び上昇を拡大。一時1オンス=2696.78ドルを付けた。米経済指標ではこのところ強弱まちまちなデータが示されており、FOMCが年末まで利下げの道を進み続けるとの金トレーダーの見方を裏付けている。
RJOフューチャーズのシニアマーケットストラテジスト、ボブ・ハーバーコーン氏は「データは良好だった」とし、「FOMCは利下げを望んでおり、恐らく年内に少なくとも0.25ポイントの利下げがあるだろう。そうすれば金利は下がり、金は上昇するはずだ」と述べた。
金はこのほか、緊張が続く中東情勢にも支えられている。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時14分現在、前日比17.57ドル(0.7%)高の1オンス=2691.40ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物12月限は16.20ドル(0.6%)上昇し2707.50ドルで引けた。
原題:Yen Falls to Key 150 Level After Solid US Retail, Labor Data (1)(抜粋)
Dollar Advances After US Data; Euro Slips on ECB: Inside G-10(抜粋)
Wall Street Dials Back Fed-Cut Bets on Solid Data: Markets Wrap(抜粋)
Oil Edges Higher as Traders Weigh US Stockpile Drop, Middle East(抜粋)
Gold Hovers Near Record as Traders Digest US Economic Reports(抜粋)