23日のニューヨーク外国為替市場で、円相場は対ドルで1ドル=153円台に突入し、3カ月ぶりの安値に沈んだ。円安が進行すれば、日本当局が為替介入に踏み切るのではないかとの懸念が再燃している。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1260.39 | 2.49 | 0.20% |
ドル/円 | ¥152.76 | ¥1.68 | 1.11% |
ユーロ/ドル | $1.0782 | -$0.0017 | -0.16% |
米東部時間 | 16時46分 |
円は対ドルで一時前日比1.4%安の153円19銭に下落し、7月31日以来の安値を更新した。市場関係者が注目する200日移動平均線を約3カ月ぶりに下回ったことも、円売りを加速させた。
米10年債利回りは底堅い景気や利下げ観測の後退を背景に、7月下旬以来の高水準となる4.2%台で推移。11月初めの大統領選が近づき、拡張的な財政政策や関税強化を主張するトランプ前大統領が優勢との見方から、インフレや財政リスクを警戒した金利上昇圧力も加わっている。
加藤勝信財務相は20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では世界的な金融情勢が協議されると思うと述べ、円についてのコメントを避けた。
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ノムラ・インターナショナルの宮入祐輔氏(ロンドン在勤)ら通貨ストラテジストは、週末の総選挙を受けて円の下げが加速する場合、日本銀行は12月にも金利を引き上げる可能性があると示唆せざるを得なくなるかもしれないと指摘。与党の過半数割れリスクから円は既に売られているが、今月31日の日銀の金融政策決定会合を前に円売り圧力は一段と強まる恐れがあると、ストラテジストらはみている。
選挙後に円が急落すれば、「インフレ上振れリスクの強まりを反映し、日銀はよりタカ派に傾く可能性がある」と宮入氏らはリポートに記し、1ドル=157円50銭前後を「注目すべき水準」に挙げた。
円は今月、対ドルで6%余り下落しており、月間としては2022年4月以来の大幅安となる勢いだ。他の主要10通貨も月初来でドルに対して値下がり。11月5日の米大統領選を控えた警戒感に加え、米利下げペースが従来の想定よりも遅くなるとの見方が背景にある。
R・J・オブライエン&アソシエーツのグローバル市場インサイト担当マネジングディレクター、トム・フィッツパトリック氏は「私と同じように、米国債利回りが引き続き上昇すると考えているのであれば、このドル・円相場の動きに逆らうのは難しい」と述べた。
米国株
米国株式市場ではハイテク株が売り込まれ、S&P500種株価指数は5800の水準を割り込んだ。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5797.42 | -53.78 | -0.92% |
ダウ工業株30種平均 | 42514.95 | -409.94 | -0.96% |
ナスダック総合指数 | 18276.65 | -296.48 | -1.60% |
S&P500種は約1%安。「マグニフィセント・セブン」の株価に連動する指数は2.1%下落した。エヌビディアは3%近い下げ。サプライヤーへの新型iPhoneの発注台数引き下げが伝わったアップルも2.2%下落した。
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引け後に決算を発表したテスラは時間外取引で4.8%上昇。7-9月(第3四半期)利益がウォール街の予想を上回ったほか、通期の納車台数が若干増加する見通しも明らかにした。
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投資家にとっては、市場に参入する意欲をそぐような多くのリスクが待ち受けている。向こう3週間には、テクノロジー大手の決算、10月の米雇用統計、米大統領選挙、そして米連邦公開市場委員会(FOMC)会合が予定されている。ウォール街の警戒感を示すもう1つの兆候として、米10年債のタームプレミアムは昨年11月以来の高水準に達した。
BTIGのジョナサン・クリンスキー氏は、株式市場はようやく国債とドルの動きに気づき始めており、ここ数週間の動きとは対照的だと話す。これまでは予想以上に底堅い米景気を反映して、米国債は本来あるべき価格に再調整されているだけとの見方があったという。
「大局的に見ればその通りかもしれないが、市場は常に全体的な水準よりも動きの速さに注目する。株価がこうした動きに動じなかったという事実は、慢心の表れだ」とクリンスキー氏。これが選挙を控えた警戒感の始まりであるかどうかは別として、今後数週間にわたって株式市場全体の下落リスクがくすぶる可能性は高く、S&P500種は5500-5650のレンジまで後退することも十分あり得る」と続けた。
ボーイングも安い。山積する課題を解決するには時間を要するとしたケリー・オートバーグ最高経営責任者(CEO)の発言が嫌気された。英半導体設計会社アーム・ホールディングスによる半導体設計のライセンス取り消しが逆風となり、クアルコムも下落。
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米国債
米国債相場は3日続落。米利下げ観測の後退に加え、米新政権の財政拡張への連想でインフレが再燃するとの懸念が重しとなった。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.52% | 2.2 | 0.48% |
米10年債利回り | 4.25% | 3.8 | 0.90% |
米2年債利回り | 4.08% | 5.0 | 1.23% |
米東部時間 | 16時47分 |
10年債利回りは7月以来の水準となる4.26%近くまで上昇。賭け市場では、米大統領選で共和党候補のトランプ前大統領が勝利すると見方が強まっており、利回りの押し上げ要因となった。トランプ氏が返り咲けば、減税や関税引き上げによって成長とインフレを押し上げる可能性が高いとの思惑が広がった。米経済の底堅さと根強いインフレの兆候も、こうした動きに拍車をかけている。
フルクラム・アセット・マネジメントのスヘイル・シャイキ最高投資責任者(CIO)は「債券市場に対する懸念が高まっている」と指摘。「経済が必要としているものに比べて、市場はあまりにも積極的に米金融当局による利下げを織り込んでしまった」と述べた。
足元でスワップ市場の織り込みは、米金融当局が年内残る2回の政策会合でそれぞれ利下げする確率が100%ではないことを示唆している。国債市場ではまた、来年の利下げ見通しも後退している。
連邦準備制度理事会(FRB)が公表した米地区連銀経済報告(ベージュブック)は、大半の地区で9月初旬以降、経済活動は横ばいだったと指摘した。
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原油
ニューヨーク原油相場は反落。米原油在庫が予想以上に増加したことで、売り優勢となった。バイデン米政権が中東の紛争終結に向けてあらためて取り組んでいることも、原油相場には弱材料となった。
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米エネルギー情報局(EIA)がこの日発表した先週の米原油在庫は547万バレル増加。前日に米国石油協会(API)が見込んでいた160万バレル増を大きく上回った。
この統計を受けて、WTIのプロンプトスプレッド(期近2限月の価格差)は日中ベースで今月初旬以来の小幅に縮小し、供給過剰の兆候を示した。
トータス・キャピタル・アドバイザーズのマネジングディレクター、ブライアン・ケッセンズ氏は、地政学的リスクがくすぶっていることで、この日の原油価格は下支えされたと指摘した。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物12月限は、前日比97セント(1.4%)安の1バレル=70.77ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント12月限は1.4%安の74.96ドル。
金
金スポット相場は日中ベースの最高値を付けた後、下落に転じた。米国の選挙や中東情勢といった地政学的リスクを見極めながら、利益確定の動きが見られた。
スポット価格は一時、前日比1.5%安。このところの上昇で最高値更新が相次いでいるが、過熱サインがテクニカル指標で示され、一部の投資家がポジションを解消した。相対力指数(RSI)は過去3営業日にわたって70%を超え、買われ過ぎの水準にあった。ドル高と債券利回り上昇も金相場への重しとなった。
スポット価格はこの日、一時1オンス=2758.49ドルと日中ベースの最高値を更新した。11月5日の米選挙は接戦が予想され、勝者確定までに時間がかかる可能性が懸念されている。イスラエルとイランの対立がより広範な戦争へとエスカレートする可能性も拭えず、そうしたリスクが逃避先としての金への需要を高めている。
スタンダードチャータードのアナリスト、スキ・クーパー氏は金相場が向こう数週間に一段と上昇する可能性を指摘。10-12月(第4四半期)に平均2800ドル、来年1-3月(第1四半期)に同2900ドルに達すると予想している。
スポット価格はニューヨーク時間午後3時26分現在、前日比1.2%安の2715.99ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物12月限は30.40ドル(1.1%)安の2729.40ドルで引けた。
原題:Yen’s Drop to Three-Month Low Reignites Intervention Concern (3)(抜粋)
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