24日の米国株式市場では、S&P500種株価指数が今週に入って初めて上昇。米経済の健全性を見極めようと企業決算の内容を精査する動きとなった。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数5809.8612.440.21%
ダウ工業株30種平均42374.36-140.59-0.33%
ナスダック総合指数18415.49138.840.76%

  ハイテク大手7社で構成する「マグニフィセント・セブン」に連動する指数は、3カ月ぶりの高水準をつけた。好調な業績と来年の納車台数が最大3割増との見通しを示したテスラは22%急伸。2013年5月以来の大幅高で終えた。

  景気動向を敏感に映し出す宅配大手ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)も5.3%値上がり。約2年ぶりの増収増益となったことが追い風となった。IBMとハネウェルの決算は投資家の期待に届かなかった。

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  モルガン・スタンレーのウェルス・マネジメント・マーケット調査・戦略チーム責任者ダニエル・スケリー氏は「決算シーズンが進み、11月の選挙が近づくにつれ、変動が大きくなる可能性はある。だが、市場の長期的な見通しは依然として堅調だ」と述べる。

  この日発表された経済指標に対して市場は反応薄だった。米新規失業保険申請件数は2週連続で減少。9月の米新築住宅販売は前月比で増加し、ここ1年余りで最も高い水準となった。10月の米総合購買担当者指数(PMI)データは企業活動が堅調なペースで拡大していることを示した。

  ニュースレター「ザ・セブンズ・リポート」を創業したメリルリンチの元トレーダー、トム・エッセイ氏は「株式と国債の継続的な持ち直しには、(過度に良くも悪くもない)市場予想に沿ったゴルディロックス的なデータが最適だ」と話す。

  S&P500種は0.2%上昇し、5800ドル台を回復した。ナスダック100指数は0.8%値上がり。一方、ダウ工業株30種平均は4日続落し、6月以来の長期連続安となった。

  CFRAのチーフ投資ストラテジスト、サム・ストーバル氏は「どのような決算シーズンで終わるかとの予想や大統領選挙、米国債市場が織り込む金融政策見通しによって株式市場は動かされているようだ」と指摘。「経済と雇用の底堅さによって米金融当局は利下げペースを落とさざるを得ないと投資家は考えている。当社では年内に2回の25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)利下げを予想している」と述べた。

  パイパー・サンドラーのクレイグ・ジョンソン氏は「米大統領選を巡る不透明感や地政学的な不確実性、一連の決算発表を考慮すると、目先は揺り戻しや利益確定の売りも予想される」と指摘。「当社では年末時点のS&P500種ターゲットを6100で維持している」と続けた。

米国債

  米国債市場では、原油価格の下落を受けて買い戻しが入り、今週に入っての激しい売りがいったん収まった。だが、利回りは7月以来の水準近辺に高止まりしている。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.48%-4.2-0.94%
米10年債利回り4.21%-3.4-0.80%
米2年債利回り4.08%0.10.02%
  米東部時間16時50分

  新規失業保険申請件数が予想外に減少したことなどで、相場は当初の上げ幅を削る場面もあった。利回りは総じて低下したが、期間長めの国債がアウトパフォームした。10年債利回りは前日、7月以来の高水準となる4.26%に上昇していた。

  ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)のシニア市場ストラテジスト、エリアス・ハダッド氏はこの日の動きについて「最近の急落を受けたテクニカルな反発」と指摘。「堅調な米経済活動が示しているように、ファンダメンタルズの観点からは依然として米国債利回りは上昇方向にある」と述べた。

  米国債市場では足元、底堅い景気を背景とする利下げ観測の後退に加え、米大統領選でトランプ前大統領が返り咲き、財政拡張政策を実施するとの見方が重しとなっている。

  金融市場は現在、11月の25bp利下げを約85%の確率で織り込んでいる。2025年末までの予想利下げ幅は約135bpとなっている。

Treasuries Have Slumped on Signs of US Economic Resilience | 10-year yields hit their highest level since July on Wednesday
米10年債利回り出所:ブルームバーグ

  クリーブランド連銀のハマック総裁は、ここ数カ月にインフレ抑制で再び進展がみられるものの、米金融当局はまだ任務完了を宣言できる段階にはないとの認識を表明。インフレの上振れリスクに言及した。

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  午後に行われた5年物インフレ連動米国債(TIPS)入札(発行額240億ドル)は、最高落札利回りが1.670%と、入札前取引(WI)水準を約2bp上回り、需要の弱さを示す結果となった。TIPSは9月の50bp利下げ以降、普通国債をアウトパフォームしていた。

  5年物TIPSの需要は原油価格の影響を受ける。原油先物はこの日、供給過剰の兆候が見られる中で下落した。

為替

  ニューヨーク外国為替市場で、円相場は対ドルで4日ぶりに反発。米国債相場の売りがいったん収まり、国債利回りの低下に伴いドルは売られた。 

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1257.71-2.68-0.21%
ドル/円¥151.82-¥0.94-0.62%
ユーロ/ドル$1.0829$0.00470.44%
  米東部時間16時51分

   円は対ドルで一時、約0.8%高の151円55銭まで買われた。

  日本銀行の植田和男総裁は20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議後の記者会見で金融政策の判断について問われ、「時間的な余裕がある」と回答した。日本の物価への影響を見極める上で、円安だけでなく米国経済も含めて全体を見る必要があると指摘した。

  同席した加藤財務相は、足元の為替を含めた金融市場は変動が高いとした上で「為替市場での過度な変動に注意を払う必要がある」と述べ、前日と同様の見解を繰り返した。G20では過度な為替変動が悪影響を及ぼすというコミットメントが再確認されたとも述べた。

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  日本と米国の選挙が市場に先行き不透明感をもたらす中、一部の為替ストラテジストは円相場が今後数週間のうちに1ドル=155-160円まで下落する可能性があるとみている。

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円が対ドルで反発

  ユーロは対ドルで上昇。フランスの製造業信頼感が4年ぶりの水準に急低下する一方、ドイツのPMIは予想を上回った。

  クレディ・アグリコルCIBのG10為替調査・戦略責任者、バレンティン・マリノフ氏は「ユーロは安堵(あんど)感から買われた格好だが、市場の悲観的な見通しを覆すには、景気回復が停滞していないことを示す一段の証拠が必要だろう」と述べた。

  一方、英銀スタンダードチャータードは今月のドル高について、米大統領選で共和党候補のトランプ前大統領が勝つとの見通しが賭け市場で強まっていることが主な要因だとみている。

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原油・金

  原油相場は続落。イスラエルがイランに報復攻撃をするリスクよりも、供給過剰への懸念がより強く意識された。

  ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)の期近2限月間のスプレッドはバレル当たり34セントと、8月時点の1.79ドルから縮小。供給が潤沢なことを示唆している。

  CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏は「地政学情勢に新たな展開がない中、原油相場で最もあり得るのは下落方向への動きのようにみえる」と指摘した。

   米国とイスラエルによれば、イスラエルとイスラム組織ハマスの仲介役を担う交渉担当者は、ガザでの戦闘停止に向けた新たな取り組みとして、数日以内に会合を開く見通しだ。この情報を受け、中東での紛争が激化するとの見方も後退した。

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Oil Falls as Mideast Risk Appears to Abate | Crude sinks by roughly 1% to trade just above $70

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物12月限は、前日比58セント(0.8%)安の1バレル=70.19ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント12月限は0.8%安の74.38ドルで引けた。

  金スポット相場は反発。ただ、米経済の底堅さを示すこの日の統計を受けて金融当局が緩和策を慎重に進めるとの見方が強まり、日中高値水準からは上げを縮小した。

  スポット価格はニューヨーク時間午後3時20分現在、前日比0.7%高の1オンス=2734.29ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物12月限は19.50ドル(0.7%)高の2748.90ドルで引けた。

原題:S&P 500 Sees First Gain This Week as Tesla Up 22%: Markets Wrap(抜粋)

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Oil Falls as Oversupply Signals Outweigh War Risk (Correct) 

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