▽トランプ政権2期目、司法さらに保守傾斜へ-自由と権利脅かすとの声<bloomberg日本語版>2024年11月9日 2:58 JST

返り咲きを果たしたトランプ前大統領は、1期目に司法機関の空席を相次ぎ埋め、連邦判事の構成を右派へと大きく傾けた。大統領が任命した判事を承認する上院は共和党が奪還することが確定しており、トランプ氏は2期目で再び影響力を行使できる機会を手にした。とりわけ米社会で重要かつ意見が分かれる問題について扱う高裁判事の人事で、保守色が一段と強まりそうだ。

  現時点で、高裁判事の空席は2つしかない。しかし、ブルッキングス研究所のガバナンス研究プログラムのラッセル・ウィーラー非常勤上級研究員が収集したデータによると、現職の高裁判事177人のうち、トランプ政権2期目に共和党任命の34人と民主党任命の29人が引退する可能性がある。

  これによりトランプ氏は民主党任命の判事を入れ替えることで、高裁のバランスを大きく変えることができるはずだとウィーラー氏は指摘。「司法を巡って一定の混乱が生じる可能性が高い」と述べた。

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ルイジアナ州ニューオーリンズの高裁Source: Getty Images

  トランプ氏の支持者にとって、司法のさらなる保守傾斜は、トランプ氏が2017年に着手した取り組みが結実することを意味する。トランプ政権1期目で判事任命の管理を共同で担当していたロブ・ルーサー氏(現在はジョージ・メイソン大学教授)は「判事の任命は、トランプ氏1期目で最も成功した政策イニシアチブであり、トランプ氏の返り咲きは連邦裁判所の変革を確実なものにする」と話す。

  「公民権や市民の自由、リプロダクティブ(性と生殖)に関する自由など、これらすべてがトランプ氏が新たに任命する判事によって一段と脅かされるだろう」。こう指摘するのは、進歩派の権利擁護団体「ピープル・フォー・ザ・アメリカン・ウェイ」のシニアフェロー、エリオット・ミンクバーグ氏だ。また、トランプ氏の任命する判事が高裁レベルで増えることで、行政機関の弱体化というトレンドが継続することになるという。「最高裁判所は行政機関の権限について下級裁判所が積極的に再評価するよう明確なシグナルを送った」と同氏は指摘した。

  連邦判事は終身制で、任命した大統領が退任した後も長期にわたって職にとどまるのが一般的だ。そのため、判事の影響は何十年も続くことになる。

  高裁は最高裁ほど注目されないが、金融規制、反トラスト法(独占禁止法)訴訟、人工妊娠中絶の権利など、米社会にとって重大な意味を持つ案件の多くについて最終的な判断を下す役割を担う。

  シラキュース大学ロースクールのデビッド・ドリーセン教授(憲法)は最も重要な法的問題は高裁で解決されると指摘する。そのため「これら高裁の支配は極めて重要な意味を持つ」という。

  高裁で扱われる5万件以上の訴訟のうち、最高裁に上訴されるのは全体の1割にとどまる。最高裁が審理する訴訟は年間で100件以下だ。 最高裁に上訴されない場合、高裁の判決が確定する。

  トランプ氏はまた、最高裁への影響力をさらに強める可能性もある。1期目では、保守派判事3人を任命して最高裁の右派色が大きく強まった。保守派のクラレンス・トーマス判事(76歳)とサミュエル・アリート判事(74歳)が任期中に引退すれば、トランプ氏は後任の任命を通じて最高裁における保守傾斜を今後数十年にわたって持続させることが可能になる。

(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)

原題:Trump Set to Move Courts Further Right, Deepening Judicial Clout(抜粋)

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