8日の米株式相場は上昇。S&P500種株価指数は連日の最高値で終え、週間ベースでは今年最大の上昇率を記録した。
次期大統領となるトランプ氏の景気拡大策が米企業収益を押し上げるとの見方が背景。この日発表された経済指標も景気の底堅さを示唆した。
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株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5995.54 | 22.44 | 0.38% |
ダウ工業株30種平均 | 43988.99 | 259.65 | 0.59% |
ナスダック総合指数 | 19286.78 | 17.32 | 0.09% |
S&P500種は4日続伸。一時6000の大台に達し、今年に入って50回目となる最高値更新で引けた。週間の上昇率は4.7%だった。
この日はディフェンシブ銘柄が堅調だった。一部の銘柄が売られ過ぎの領域にあったことが背景にある。時価総額の大きな銘柄はまちまちで、テスラが上昇する一方、エヌビディアは反落した。テスラの時価総額は2022年以来初めて1兆ドルを超えた。
トランプ氏が大統領選での勝利を宣言した6日に、米国の株式ファンドには200億ドル(約3兆円)の資金が流入したと、バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジストが指摘した。1日当たりの流入額としては5カ月ぶりの大きさだったという。
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カルベイ・インベストメンツのクラーク・ゲラネン氏は、S&P500種が「心理的に重要な節目」である6000の大台に乗せたと指摘。「マネー・マーケット・ファンド(MMF)と債券市場に依然として大規模な資金が滞留しており、株式に対する投資家の関心はさらに高まる可能性がある」と述べた。
同氏はまた、選挙後の株高には一段の上昇余地がありそうだとした上で、年末に向けて相場が再び上昇傾向となる前に勢いが一服しても驚かないと付け加えた。
米国債
米国債相場は週間ベースで、9月上旬以来の大幅高。トランプ前米大統領が大統領選を制し、相場変動の大きい1週間だった。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.47% | -6.2 | -1.37% |
米10年債利回り | 4.30% | -2.1 | -0.49% |
米2年債利回り | 4.25% | 5.0 | 1.20% |
米東部時間 | 16時57分 |
トランプ氏の勝利が明らかになった後、同氏の政策がインフレを加速させるとの懸念から米長期債利回りは大幅に上昇したが、その後は低下している。30年債利回りは6日に一時24ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)急上昇し、約4.68%を付けたが、8日には一時4.45%に低下した。
一方、年限が短めの国債の利回りはこの日、上昇。ゴールドマン・サックス・グループなど複数の金融機関が来年の米利下げ予測を、従来より後退させたことが影響している。
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米国債の下落とドル上昇に賭けるいわゆるトランプトレードは、時間とともに勢いがやや弱まってきた。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は7日の記者会見で、次期政権の財政政策の影響を考慮するのは時期尚早だと述べた。
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みずほインターナショナルの金利ストラテジスト、エブリン・ゴメスリヒティ氏は「政策措置は従来想定されていたほど早期に導入されることはないかもしれないと、市場参加者は考えている」と述べた。
外為
ニューヨーク外国為替市場ではドル指数が反発。トランプ氏の米大統領選勝利やパウエルFRB議長の会見を受けて、エコノミストや市場関係者の間で来年の米利下げ予想が後退したことが背景にある。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1267.77 | 7.66 | 0.61% |
ドル/円 | ¥152.64 | -¥0.30 | -0.20% |
ユーロ/ドル | $1.0719 | -$0.0086 | -0.80% |
米東部時間 | 16時56分 |
ブルームバーグ・ドル・スポット指数は一時0.8%上昇した。週間ベースでは6週連続の上昇と、6月以来の長期連続高。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のアナリストであるデレク・ハルペニー氏とリー・ハードマン氏、アブドゥルアハド・ロックハート氏は「米大統領選に勝利したトランプ氏は、選挙戦で掲げた公約の実現に向けて非常に強い信任を得た」とリポートで指摘。「投資家はそれらが迅速に実施されることを見越してポジションを構築する可能性が高く、それが国債利回りを支え、ドルを押し上げる」と予想した。
一方、円は主要10通貨に対して上昇。欧州時間帯には1ドル=152円14銭まで上昇する場面もあった。その後は上げを縮小し、152円台半ば近辺での推移となった。
ドル指数はこの日、ロバート・ライトハイザー氏がトランプ次期政権の米通商代表部(USTR)代表への就任を要請されたという英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)報道を受け、上げ幅を拡大した。
マネックスの外国為替トレーダー、ヘレン・ギブン氏はこの報道について、「トランプ氏の公約を裏付ける人事だ。選挙戦で主張してきた貿易政策を同氏が積極的に追求することを示している」と分析。これが「ドル上昇に少し勢いを与えている」と述べた。
ライトハイザー氏はトランプ政権1期目にUSTR代表を務め、共和党の保護主義的な通商政策を主導してきた。
原油
ニューヨーク原油相場は反落。中国の景気刺激策が期待外れとなった。ただ、7月以来の小幅な取引レンジから大きく逸脱するほどではなかった。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は今週、約3ドルの値幅で推移。米大統領選でのトランプ氏勝利を受けて、市場では様子見ムードが根強い。中東での紛争やイラン産原油の輸出に同氏がどう対応するのか不透明な中、ボラティリティーが高まり、流動性が低下している。ただしこの日は、世界最大の原油消費国である中国の需要を巡る懸念が再燃し、売りが優勢となった。
みずほセキュリティーズUSAのエネルギー先物部門ディレクター、ロバート・ヨーガー氏は「原油にとってトランプ氏の勝利が吉と出るか凶と出るか、市場は見極めようとしている。中心となるテーマが形成されて、トレンドが確立するまで、ボラティリティーの高い状況が続く」と指摘。「目先は中国の需要崩壊が材料になりそうだ」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物12月限は、前日比1.98ドル(2.7%)安の1バレル=70.38ドルで終了。ただ、週間では1.3%上昇した。ロンドンICEの北海ブレント1月限は1.76ドル(2.3%)下げて、73.87ドルで引けた。
金
金スポット相場は反落。米金利の道筋やトランプ氏の大統領当選がもたらす影響が意識された。
この日はドルが中国人民元に対してさらに上昇。中国の景気刺激策が市場の失望を招いたことが背景にある。ドル高は、ドル建ての金の妙味低下につながる。
米共和党の大勝が濃厚となる中、ウォール街のエコノミストは利下げ回数が選挙前の想定よりも少なくなるとみている。トランプ氏が関税引き上げや減税、規制緩和を推し進め、インフレを誘発する可能性があるためだ。
ジョバンニ・スタウノボ氏らUBSのストラテジストは、米政府の借り入れ増加に伴うインフレ圧力に対するヘッジとして、金は支えられる可能性が高いと指摘。米選挙の翌日に金価格が大幅安となったのは「驚きかつ行き過ぎだった」と述べた。
6日にはトランプ氏の勝利を受けてドルが大きく買われ、金は3%値下がりしていた。
金スポット相場はニューヨーク時間午後3時5分現在、0.7%安の1オンス=2686.56ドル。一時は1%下げた。週間では5月以来の大幅安となりそうだ。ニューヨーク商品取引所の金先物12月限は11ドルちょうど(0.4%)安の2694.80ドルで終了した。
原題:S&P 500 Notches Its 50th All-Time High in 2024: Markets Wrap(抜粋)
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