外国為替市場で円は対ドルで小幅下落。日本銀行の植田和男総裁が追加利上げのタイミングについて、慎重な姿勢を示唆したとの見方から、一時は0.7%安の1ドル=155円36銭まで売られた。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1280.33 | -5.39 | -0.42% |
ドル/円 | ¥154.61 | ¥0.31 | 0.20% |
ユーロ/ドル | $1.0599 | $0.0059 | 0.56% |
米東部時間 | 16時37分 |
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のストラテジスト、リー・ハードマン氏は「日銀は現時点において、最近の円相場の動きにそれほど違和感を覚えていないようだ。植田総裁の発言は、年末にかけて円売りを続けるよう市場参加者に促すだろう」と述べた。
ストーンXファイナンシャルの為替トレーダー、呉明賾氏は「植田総裁の発言がある程度、円安を裏打ちしている」と指摘。「日銀によるタカ派的な見解の欠如に投資家は反応している」と話した。
この日は薄商いの中、ブルームバーグのドル指数も下落。月初から大きく上昇した後、値固めする展開となった。
ジェフリーズの外国為替グローバル責任者ブラッド・ベクテル氏は「足元では、長期的なドル上昇局面のピークに近づいており、買われ過ぎの水準に近づいている」とリポートで指摘。「従って、私はドルロングの取引にまだそれほど執着するつもりはない」と述べた。
一方、ゴールドマン・サックス・グループの為替ストラテジストは、トランプ次期米大統領が掲げる関税引き上げ計画により、ドルは新たな強気相場に入りつつあるとの見方を示した。
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株式
S&P500種株価指数が反発。トランプ次期政権に関するニュースに引き続き注目が集まっている。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5893.62 | 23.00 | 0.39% |
ダウ工業株30種平均 | 43389.60 | -55.39 | -0.13% |
ナスダック総合指数 | 18791.81 | 111.69 | 0.60% |
ハイテク銘柄中心のナスダック100指数は0.7%高。6営業日ぶりに上昇し、1月以来の長期下落局面がストップした。テスラは5.6%値上がり。トランプ政権移行チームが完全自動運転車に関する連邦政府の枠組みを運輸省の優先事項の一つにする方針だと伝わったことが材料視された。週内に決算発表を予定するエヌビディアは下落した。
モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は、「トランプ次期政権の政策が経済に与え得る影響、および米金融当局が利下げキャンペーンを減速させる可能性を市場は意識しているようだ」と指摘。「今週は経済指標の発表が比較的少ないため、企業決算、特にエヌビディアの業績に焦点は移る。市場の短期的なモメンタムを左右するのは決算かもしれない」と述べた。
モルガン・スタンレーのストラテジスト、マイケル・ウィルソン氏は、経済成長の改善と米金融当局のさらなる利下げを背景に、S&P500種が来年末までに6500前後に達すると予想した。一方、RBCキャピタル・マーケッツのロリ・カルバジーナ氏は先週の株安について、最大10%に及ぶ大幅な下落の始まりかもしれないとの見方を示した。
国債
米国債は上昇。トランプ次期政権の政策が経済や米金融政策に及ぼす影響が意識される中、朝方には大きく売られ、10年債利回りは4.5%に接近、30年債利回りはほぼ6カ月ぶりの水準に上昇していた。ただ、こうした高い利回りが買いを誘ったこともあり、相場は上げに転じた。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.61% | -1.0 | -0.21% |
米10年債利回り | 4.41% | -2.6 | -0.58% |
米2年債利回り | 4.28% | -2.3 | -0.54% |
米東部時間 | 16時37分 |
30年債利回りは一時6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇して4.68%を付けた。
この日は高格付け企業の起債も相次ぎ、それが米国債や金利スワップ市場へのヘッジ関連フローにつながった可能性もある。
リチャード・バーンスタイン・アドバイザーズの債券担当ディレクター、マイケル・コントプロス氏は、「成長は力強い上、インフレは完全に抑制されておらず、財政赤字は拡大する可能性が高く、長期債利回りが低下する理由はほとんどないとの認識が一般的だ」と述べた。
原油
ニューヨーク原油相場は大幅反発。くすぶり続ける地政学的な緊張とドルの軟調が、市場が発する弱気シグナルを打ち消した。ドルの軟調はドル建てで取引される商品の投資妙味を高める効果がある。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は3%余り上昇し、バレル当たり69ドル台で引けた。米国はウクライナにロシア領内への長距離ミサイル攻撃を許可し、当事国間の緊張をさらに高めた。原油相場は株式市場にもつれ高となった。
WTI先物の期近2限月は弱気示唆のコンタンゴ(順ざや)に転じた。期近限月の価格が期先より安いコンタンゴは2月以来。いわゆるプロンプトスプレッドがディスカウントに転じるのは、短期的な需要を供給が上回っている兆候と受け止められる。
みずほセキュリティーズUSAのエネルギー先物部門ディレクター、ロバート・ヨーガー氏は「先物相場が3%近く急伸しながら、同時にスプレッドが圧迫されコンタンゴに転じる状況はめずらしい」と指摘する。「しかし先物の最終取引を前に投機勢が期近売りと期先買いを急ぎ、スプレッドをならそうとする場合、こうしたことは比較的起こりやすい」と述べた。
CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏によれば、ウクライナが強気な行動に出ることでロシアのエネルギー資産がリスクにさらされ、米国と北朝鮮の関与がより直接的になる可能性が高まることも、原油売りの緊急性を弱めている。
シェブロンがカザフスタンで操業するテンギス油田が、メンテナンス入りを理由に今月の産油量を30%カットすることも相場を支援した。ここ最近の米政府データで在庫積み上がりの兆候が見られない状況に、イランへの制裁が強化される可能性が加わり、相場への追い風を強めた。
ここ数週間の原油相場は、中東の緊張に供給不安を時折あおられながら、上昇と下落を繰り返してきた。同時にドルの堅調は原油価格を圧迫してきた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物12月限は、前営業日比2.14ドル(3.2%)高い1バレル=69.16ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント1月限は3.2%上昇の73.30ドル。
金
ニューヨーク金相場は8月以来の大幅高。ゴールドマン・サックスのアナリストは2025年末までにオンス当たり3000ドルに到達するとの予測をあらためて示し、投資家に金投資を推奨した。
18日の金スポット相場は2%上昇し、オンス当たり2600ドル台に乗せた。米大統領選挙をトランプ氏が制した後はドルが上昇し、金の重しとなっていた。
ゴールドマンは米利下げと、中央銀行による金購入、トランプ次期米政権を理由に2025年の商品トップ取引に金を挙げた。
関連記事:ゴールドマン、「金に投資せよ」-中銀の買いと米利下げ追い風
金相場は先月記録した過去最高値から6%ほど下落。一方のドルは2年ぶり高値に急伸した。商品先物取引委員会(CFTC)の建玉(未決済約定)データによれば、こうした状況を背景にヘッジファンドなど投機勢による金強気のポジションは3カ月ぶりの水準に減少した。
しかし、ゴールドマンのアナリストは相場下落は「金を買う魅力的な入り口」だとみている。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)の商品ストラテジスト、フランシスコ・ブランチ氏も金は来年末までに3000ドルに到達すると予想する。しかし米国のインフレ圧力が利下げ軌道を脅かす場合は、短期的に2500ドルに下げる可能性もあるとブルームバーグテレビジョンで警告した。
「金相場はかなり大幅な利下げを織り込んでいる」とブランチ氏。「それが実現しないとすれば、やや荒れた展開になるだろう」と述べた。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時36分現在、前営業日比46.41ドル(1.8%)高い1オンス=2609.66ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物12月限は44.50ドル(1.7%)高い2614.60ドルで引けた。
原題:Nasdaq 100 Halts Five-Day Slide as Treasuries Gain: Markets Wrap(抜粋)
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