25日の米金融市場では国債が大幅高。22日にスコット・ベッセント氏の次期米財務長官への起用が発表されたことが背景にある。ベッセント氏はウォール街のベテランであり、市場ではトランプ次期政権の貿易・経済政策をより穏やかな方向に導くとの見方が広がっている。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.46% | -12.5 | -2.72% |
米10年債利回り | 4.27% | -12.7 | -2.89% |
米2年債利回り | 4.27% | -10.2 | -2.34% |
米東部時間 | 16時51分 |
米国時間に原油が値下がりする中、米国債は上げを拡大。利回りは幅広い年限で軒並み10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余り低下した。
スコシアバンクのチーフ外為ストラテジスト、ショーン・オズボーン氏は「ベッセント氏は次期政権の政策を和らげる効果をもたらす可能性があると捉えられている」と指摘。「関税に対する漸進的なアプローチの姿勢はその一例だ」と付け加えた。
マクロヘッジファンド運営会社キー・スクエア・グループを率いるベッセント氏は、貿易制限の実施について漸進的なアプローチを呼び掛けており、関税の正確な規模について交渉することにオープンな姿勢だと見受けられている。同氏は米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで、トランプ氏のさまざまな減税の公約を果たすことが自らの政策の優先課題だと説明。また歳出削減、「世界の準備通貨としてのドルのステータス維持」にも重点的に取り組むとしている。
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BMOキャピタル・マーケッツの米金利戦略責任者、イアン・リンジェン氏は「ベッセント氏の起用は、貿易戦争と関税が改めて焦点となることによる潜在的な影響を完全に否定することにはならないが、一部の極端なシナリオが排除され、債券市場の見通しに一定の安心感が広がったことは確かだ」と分析した。
株式
S&P500種株価指数は6営業日続伸。次期財務長官に起用されたスコット・ベッセント氏が、職務を遂行する上でウォール街の意向を考慮するとの見方が広がった。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5987.37 | 18.03 | 0.30% |
ダウ工業株30種平均 | 44736.57 | 440.06 | 0.99% |
ナスダック総合指数 | 19054.84 | 51.19 | 0.27% |
S&P500種は6000付近で推移。小型株のラッセル2000指数は過去最高値付近で引けた。
今週の米国株市場はリスクオンのトーンで始まった。ベッセント氏は世界の金融システムに精通しており、その点が投資家に好感された。またベッセント氏はトランプ次期大統領の関税方針やトランプ減税の延長を支持する考えを示しているが、イデオロギー信奉者として知られているわけではなく、ウォール街ではベッセント氏が政治的な点数稼ぎよりも経済と市場の安定を優先するとの期待が強まった。
ミラー・タバクのマット・メイリー氏は、ベッセント氏の財務長官起用について、「トランプ氏の企業寄りの政策提案にゴルディロックス・シナリオをもたらすと、投資家は受け止めている」と分析した。
ゴールドマン・サックス・グループのスコット・ルブナー氏は、年末ラリーによりS&P500種は6200に達すると予想している。
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RBCキャピタル・マーケッツのロリ・カルバジーナ氏は、S&P500種は2025年末までに6600に達するとの見通しを示した。来年も経済と企業利益の堅調な成長が見込まれるほか、政治面での追い風、インフレの一段の緩和を理由としている。
またバークレイズのストラテジストは、建設的なポジショニングと堅調なマクロ経済を背景に、2025年の株式相場は一段と上昇すると予想。ただ、昨年と今年に見られた脅威的なペースからは減速するとの見通しを示した。
ベヌ・クリシュナ氏率いるチームは、S&P500種の年末目標を6600とし、従来目標の6500から引き上げた。
為替
ニューヨーク外国為替市場ではドルが下落。円は対ドルで上昇し、1ドル=154円台前半。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1285.05 | -6.17 | -0.48% |
ドル/円 | ¥154.24 | -¥0.54 | -0.35% |
ユーロ/ドル | $1.0492 | $0.0074 | 0.71% |
米東部時間 | 16時51分 |
後藤祐二朗氏や宮入祐輔氏ら野村のストラテジストは、今後2、3週間にドルが対円で上昇傾向となれば、日本銀行は12月会合での金融政策決定に関してよりタカ派的なスタンスに傾きそうだと分析した。
原油
原油先物相場は大幅安。イスラエルと親イラン民兵組織ヒズボラが近く停戦合意に至る可能性が意識された。感謝祭を前に商いが低調となる中、ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は3%余り下げて1バレル=70ドルを割り込んだ。
イスラエルのヘルツォグ駐米大使はイスラエル軍ラジオに対し、「われわれは合意に近づいている」と説明。最終的な争点のいくつかはなお対処の必要があるとしつつ、停戦合意は「数日以内に実現するかもしれない」と述べた。
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トータス・キャピタル・アドバイザーズのシニア・ポートフォリオマネジャー、ロブ・サメル氏は、レバノン停戦となれば、トランプ次期米政権が来年1月にイラン産原油に対する厳格な制裁を科す可能性を弱めると指摘。「もしイランからの供給が維持されるのであれば、来年には相当な量が市場に供給されることを意味する」と語った。
イランは現在、石油輸出国機構(OPEC)第3位の産油国として、日量340万バレルを供給している。ラピダン・グループのボブ・マクナリー社長は先週、米国が対イラン制裁を最大化すれば、日量50万バレルの供給減になる可能性があると指摘していた。
市場参加者は、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成される「OPECプラス」が12月1日に開催する会合に注目。ブルームバーグが先週実施した調査によると、トレーダーやアナリストは、OPECプラスが来年1月に予定している供給拡大を再び見送ると予想している。
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一方で米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)によると、次期財務長官に指名されたベッセント氏は、日量数百万バレル相当の原油増産をトランプ氏に提言した。ただ、来年に供給過剰に直面する米国のシェールオイル業者には、生産量を増やすインセンティブはほとんどない。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物1月限は、前営業日比2.30ドル(3.2%)安い1バレル=68.94ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント1月限は2.9%安の73.01ドル。
金
金相場も中東での緊張緩和の兆しを受けて急反落。先週には地政学リスクの高まりを受け、週間ベースで昨年3月以来の大幅高となっていた。
市場ではベッセント氏の財務長官起用も意識され、米経済と金融市場に安定をもたらす賢明な人事との受け止めが広がった。トランプ氏が掲げる政策で物価高が再燃するとの懸念が和らぎ、インフレ対策としての金の投資妙味を低下させたとみられる。
今週は米金融当局がインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)価格指数など、今後の政策金利見通しを占う上で重要な経済指標の発表が相次ぐ。
IGアジアの市場ストラテジスト、ジュンロン・イープ氏は「金価格には引き続き、地政学リスクと米金融当局のハト派的見通し後退の相互作用が働いている」と指摘。その上で「インフレの上振れサプライズがあれば12月の金利据え置き観測がさらに高まり、利下げペース鈍化が見込まれるようになれば金相場の上値を抑えるとみられる」と語った。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時現在、前営業日比97.38ドル(3.6%)安の1オンス=2618.81ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物2月限は前営業日比94.60ドル(3.5%)安の2642.60ドルで引けた。
原題:US Treasuries Rally on Bets Bessent Will Soften Trump’s Plans(抜粋)
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