Rita Nazareth
- ハイテク銘柄が上げ主導-パウエル議長、米経済著しく良好だと発言
- 円は前日比1%余り安い1ドル=151円23銭まで下落
4日の米株式相場は上昇。S&P500種株価指数は今年56回目の最高値更新となった。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、米経済は著しく良好だとの見方を示した。 フランス国民議会(下院)はバルニエ首相率いる内閣への不信任決議案を賛成多数で可決したが、ユーロ相場は比較的落ち着いた反応を見せている。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 6086.49 | 36.61 | 0.61% |
ダウ工業株30種平均 | 45014.04 | 308.51 | 0.69% |
ナスダック総合指数 | 19735.12 | 254.21 | 1.30% |
この日はハイテク銘柄が上げを主導。ナスダック100指数は1%余り上昇した。半導体大手エヌビディアは3%を超える上昇となり、同社を含むハイテク大手7社「マグニフィセント・セブン」の指数は年初来の上昇率が65%に迫っている。
パウエル議長は、景気を刺激も抑制もしない中立水準に向けて金利を引き下げる上で、当局には慎重になれる余裕があるとも述べた。
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エバコアISIのクリシュナ・グーハ氏は「我々は発言をややタカ派的と受け止めている。しかし、12月利下げが基本シナリオとの確信を強めている市場の見方を揺らすには程遠い」と語った。
モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は「現時点では、今月に追加利下げが行われ、1月は据え置きの公算が大きい。ただ、雇用情勢の大きな変化がパズルのピースを並べ替える可能性はある」と述べた。
米地区連銀経済報告(ベージュブック)は、11月に入って経済活動が若干拡大し、米企業は需要見通しについて楽観を強めたと指摘した。
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LPLファイナンシャルのジョージ・スミス氏は、株式相場の歴史を振り返ると、相場の勢いは当面持続する可能性があるとみている。
同氏によると、1950年以降で月間リターンがプラスになっている割合は12月が約74%と、どの月よりも高くなることが多い。
ただ、今年は地政学的リスクが急上昇する恐れがあるため、同氏は短期的に弱含む可能性は排除していない。また、米利下げサイクルが市場の織り込みよりも緩やかかつ浅くなる可能性に相場が再調整を迫られる可能性があるとも指摘した。
「ポジティブなマクロ環境、企業収益の伸び、米金融当局が引き続き市場を支援していることを踏まえ、我々は年末に向けて戦術的な強気を維持する」とリポートに記したのは、アンドルー・タイラー氏率いるJPモルガン・チェースのマーケットインテリジェンス・チームだ。「市場の勢いに乗り、1月中旬まで調整の可能性は低いとみるのが賢明だ」と同チームはみている。
一方、リソルツ・ウェルス・マネジメントのチーフ市場ストラテジスト、キャリー・コックス氏は、11月に大きく上昇した米株相場のサンタクロース・ラリーにやや懐疑的な見方を示す。
「まだ流動的かもしれない経済にとって、ハードルはかなり高くなった。利回りは過去2カ月で期待が大きく動いたことを示しているが、経済データには持続的で明確な勢いは見られない。期待は重要だ。雇用市場の細部に注目が集まる」と語った。
国債
米国債相場は上昇(利回りは低下)。予想よりも弱い数字となった米ISM非製造業総合景況指数を受け、今月のFOMC会合で利下げが決定されるとの見方が強まった。
政策金利動向に敏感な2年債利回りは一時6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余り低下して4.11%と、11月1日以来の低水準となった。
関連記事:米ISM非製造業指数、3カ月ぶり低水準-受注や雇用が伸び悩む (2)
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.35% | -5.5 | -1.24% |
米10年債利回り | 4.18% | -4.5 | -1.05% |
米2年債利回り | 4.13% | -5.4 | -1.29% |
米東部時間 | 16時49分 |
パウエルFRB議長の発言について、TDセキュリティーズの米金利戦略責任者ジェナディー・ゴールドバーグ氏は「ほとんど材料にはならなかった」と指摘。「12月会合に向けてあらゆる選択肢を残すようにみえるが、追加利下げでまとまると我々は引き続き予想している」と語った。
FOMC会合まで残り2週間となったが、0.25ポイント追加利下げの見通しは依然不透明だ。
セントルイス連銀のムサレム総裁はこの日、性急な利下げのリスクは緩和が不十分なリスクよりも大きいと述べ、早ければ今月にも利下げを一時停止するのが適切かもしれないとの見解を示した。
関連記事:セントルイス連銀総裁、利下げ一時停止の時期は近い可能性
市場は現在、12月の0.25ポイント利下げの可能性を約70%織り込んでいる。来年末までの予想利下げ幅は約80bpとなっている。
為替
円相場は対ドルで下落。日本銀行の12月会合での追加利上げ観測が後退し、日米金利差縮小を見込んだ円買い・ドル売りポジションを解消する動きが出ている。
円は一時、前日比1%余り安い1ドル=151円23銭まで下落した。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1280.81 | -0.40 | -0.03% |
ドル/円 | ¥150.57 | ¥0.97 | 0.65% |
ユーロ/ドル | $1.0513 | $0.0004 | 0.04% |
米東部時間 | 16時49分 |
主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数はほぼ変わらず。
米ISM非製造業指数が3カ月ぶり低水準になったことについて、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの市場戦略グローバル責任者、ウィン・シン氏は「久しぶりの本当に弱い経済データだが、米金融政策に大きな影響を与えるとは思わない」と語った。
ユーロは対ドルで上げを消す展開。 対ドルで0.3%高まで買われる場面もあったが、フランス国民議会で内閣不信任決議案が賛成多数で可決されると、再び売りに押された。
クレディ・アグリコルCIBのG10為替調査・戦略責任者、バレンティン・マリノフ氏は「市場の反応が限られているのは、ユーロ相場にはすでに多くのネガティブ要因が織り込み済みであることを示唆している」と指摘。市場の注目は6日の米雇用統計と来週の欧州中央銀行(ECB)政策委員会会合に移っていると述べた。
原油・金
ニューヨーク原油相場は反落。ISM非製造業指数が市場予想を下回る弱い内容だったため、米国のエネルギー需要への懸念が広がった。テクニカル分析上の上値抵抗線も意識された。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は50日移動平均の水準である1バレル=70ドルを上回った後、すぐに下落に転じた。このことがネガティブな雰囲気を強めた。
CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏は「WTIが70ドル台を維持できず、50日移動平均を下回ったことが、この水準を上値抵抗線として一段と意識させた」と指摘。「きょうは取引高も過去10日間の平均に比べて著しく少なかった。年末が近づく中で市場関係者が様子見姿勢である可能性が示唆された」と述べた。
米エネルギー情報局(EIA)が発表した週間統計はまちまち。原油在庫は先週、507万バレル減少。一方でガソリン在庫が大きく増えたほか、留出油の在庫も7月以来の大幅増となり、需要減退が示唆された。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物1月限は、前日比1.40ドル(2%)安の1バレル=68.54ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント2月限は1.8%安の72.31ドルで引けた。
金相場は続伸。スポット価格はニューヨーク時間午後3時57分時点で、前日比0.3%高の1オンス=2650.46ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物2月限は8.30ドル(0.3%)上昇し、2676.20ドルで引けた。
原題:Stocks Climb as Powell Says Economy in Good Shape: Markets Wrap
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Euro Trims Gains as France Government Falls on Vote: Inside G-10
Oil Slides as Negative Technical Momentum Compounds US Data