Mark Schroers、Jana Randow、Alexander Weber、Aline Oyamada

  • 必要な限り金利を「十分に景気抑制的な水準」で維持の文言削除
  • ラガルド総裁は会見で期待ほどハト派姿勢見せず、ユーロ圏国債下落
Christine Lagarde
Christine Lagarde Photographer: Alex Kraus/Bloomberg

欧州中央銀行(ECB)は12日、3会合連続となる利下げを発表した。インフレ率が目標の2%に近づく一方で経済は低迷していることから、来年もさらなる利下げを行うと示唆した。

  中銀預金金利は0.25ポイント引き下げられ、3%となった。ブルームバーグのエコノミスト調査で1人を除く全員が予想した通りだった。

  今回の利下げにより、6月以来の金利引き下げ幅は合計で100ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)となった。

  姿勢の変化を示すように、声明からは政策金利を必要な限り「十分に景気抑制的な」水準にとどめるという文言が削除された。

  「政策委員会は、インフレ率が中期目標の2%で持続的に安定することを確実にする決意だ」とECBは表明。「適切な金融政策のスタンスを決定するに当たり、データ次第かつ会合ごとのアプローチを継続する」と続けた。

  発表後にユーロは一時0.3%安となった。市場が織り込む来年の利下げ幅は発表前とほぼ変わらず、125bp程度となっている。

  金利を「景気抑制的な水準」に維持するという文言が削除されたことが投資家の注意を引いたが、記者会見でのラガルド総裁はそれほどハト派的ではなく、イタリア債を中心にユーロ圏国債は下落した。

  10年物イタリア債利回りは11bp上昇して3.3%と、12月2日以来の高水準。2年物ドイツ債利回りは3bp上昇し1.98%を付けた。

  確固たるコミットメントはないものの、連続利下げは2025年半ばまで続くと広く予想されている。すでに低迷している欧州経済にドイツとフランスの政治的混乱が追い打ちをかけるほか、トランプ次期米大統領の政策が世界貿易に打撃を与える可能性がある。

  懸念されるのは、低成長が現在2.3%のインフレ率を目標よりも低い水準にまで押し下げ、新型コロナウイルス流行前のように、インフレを抑えるよりも物価を上昇させることに重点が置かれるようになることだ。

  12日に発表されたECBの最新予測はこうした脆弱(ぜいじゃく)な背景を反映し、来年の経済成長とインフレの見通しが下方修正された。

  ラガルド総裁は、成長へのリスクは依然として下方に傾いていると述べ、ユーロ圏経済の勢いが弱まっていることを指摘した。

  「経済は徐々に強くなるはずだが、以前の予想よりも遅いペースになるだろう」と、同氏はフランクフルトでの記者会見で述べた。「世界の貿易摩擦悪化は輸出減速や世界経済の弱体化を招き、ユーロ圏の成長を圧迫する可能性がある」と解説した。

  ラガルド氏によると、この日の決定は全会一致だったが、一部の当局者はより大幅な利下げを提案した。

  「50bpの利下げを検討すべきだという提案も幾つかあり、議論された。しかし最終的には、25bpの利下げが正しい決定だと全員が賛成した」と総裁は述べた。

  エコノミストはECBの政策金利が最終的に2%で落ち着くとみているが、短期金融市場では1.75%まで下がると見込まれている。市場の見方が正しければ、中立と見なされる水準を下回る金利となり、政策は景気刺激的なものになる可能性が高い。

  イタリア中銀のパネッタ総裁とフランス中銀のビルロワドガロー総裁は、景気拡張的な領域に踏み込む可能性を排除していない。

  ラガルド氏は、中立金利にECBが近づくにつれて、今後議論されるテーマになるだろうと述べた。

  中立金利について「一般的な意見は、恐らく以前よりも少し高いというものだ。いずれ議論することになるだろうが、現時点では時期尚早だ」と語った。

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原題:ECB Cuts for Third Straight Time to Prop Up Flagging Economy (4)ECB Cuts for Third Straight Time to Prop Up Flagging Economy (3)、Italian Bonds Fall as ECB’s Lagarde Strikes Less Dovish Tone(抜粋)