Cristin Flanagan

  • 日銀利上げ見送り観測強まる、「タカ派的な利下げ予想」で米金利上昇
  • ナスダック100指数最高値更新、ブロードコム時価総額1兆ドル超え

13日のニューヨーク外国為替市場では、円が対ドルで5日続落。6月以来の長期連続安となった。日本銀行による来週の利上げ見送り観測が強まっており、主要10通貨の中で最も下げがきつかった。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1288.830.420.03%
ドル/円¥153.66¥1.030.67%
ユーロ/ドル$1.0504$0.00360.34%
  米東部時間16時57分

  円は一時、0.8%安の1ドル=153円80銭まで売られ、日中としては11月26日以来の安値をつけた。週間ベースでもおよそ2カ月ぶりの大幅安となった。

円は対ドルで下落

  ブルームバーグは今週、関係者の話として、日銀が追加利上げを急ぐ状況にはないと認識していると報じた。消費者物価の上昇に加速感が見られず、海外経済の不確実性が強まっている中で、1月以降に利上げを先送りした場合も大きなコストは伴わないとみているという。

関連記事:日銀は利上げ急がず、今月見送りでも物価加速リスク小さい-関係者

  ブルームバーグの報道を受けて、金融市場では日銀による来週の利上げ観測が後退。足元で市場は利上げ確率を16%と織り込んでおり、1週間前の64%から低下している。日銀は米連邦公開市場委員会(FOMC)の翌日となる19日に金融政策を決定する。FOMC会合では0.25ポイントの利下げが予想されているが、長期的な金利の見通しは不透明だ。

  また共同通信はこの日、日銀が18、19日に開く金融政策決定会合で、利上げの見送りを検討していると報じた。

関連記事:日銀、12月の利上げ見送りを検討-共同通信(1)

  三菱UFJ信託銀行(ニューヨーク)のセールスおよびトレーディング部門責任者、小野寺孝文氏は、来週の日銀の利上げはなさそうだと話す。米金融当局が利下げを決めつつ、来年の利下げ休止を示唆すれば、1ドル=156円まで円安・ドル高が進む可能性があると述べた。

   日銀が13日発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)では、大企業製造業の景況感は2四半期ぶりに改善した。だが、このデータが金利見通しに大きな影響を与えることはなかった。

関連記事:大企業製造業の景況感が2期ぶり改善、日銀利上げの支えに-12月短観

  バンク・オブ・アメリカ(BofA)の為替・金利戦略ストラテジスト、アダーシュ・シンハ氏は「リスクは円安方向に傾いている」と指摘。「日銀は今後の米国の経済政策を見極めるため、様子見の姿勢を取っている」と述べた。

  JPモルガンの米国担当チーフエコノミストのマイケル・フェローリ氏は、米金融当局が来週、0.25ポイントの利下げを実施し、1月には利下げを一時停止する「可能性が高い」とリポートで指摘した。

  ウェルズ・ファーゴのアナリストは「2025年および26年初頭にかけての米利下げ幅について、市場は引き続き過小評価している。米金融当局が緩和ペースを遅らせるとの考えに当社も同意するが、市場は米金融当局よりも先走っている」と述べた。

  ステート・ストリートの欧州・中東・アフリカ(EMEA)マクロ戦略責任者、ティモシー・グラフ氏は、ドル高がさらに進むと予想している。経済成長が弱い欧州と比較して、米国の緩和ペースは緩やかになる可能性があるためだという。

  ポンドは対ドルで12月2日以来の安値。10月の国内総生産(GDP)が2カ月連続のマイナスとなったことが重しとなった。

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米国株

  S&P500種株価指数が横ばいで終える一方、ナスダック100指数は過去最高値を更新した。人工知能(AI)チップ需要の急増を見込むと明らかにしたブロードコムが急伸し、ハイテク株を押し上げた。  

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6051.09-0.160.00%
ダウ工業株30種平均43828.06-86.06-0.20%
ナスダック総合指数19926.7223.880.12%

  ナスダック100指数は0.8%上昇し、ここ3日で2回目の最高値更新となった。週間でも4週連続の値上がり。

  ブロードコムは24%急伸し、過去最高値を更新。時価総額は初めて1兆ドルを突破した。同業のマーベル・テクノロジー、マイクロン・テクノロジー、エヌビディアも連れ高となった。

関連記事:ブロードコム、時価総額が初の1兆ドル超え-需要見通しを好感

  来週のFOMCで予想通り0.25ポイントの利下げが決まれば、今年駆け上がってきた米国株の勢いがさらに増す可能性がある。S&P500種はハイテク株がけん引する格好で年初来27%値上がり。ブルームバーグがストラテジストを対象に行った調査では、2025年もS&P500種は欧州株をアウトパフォームすると予想されている。

  ただウォール街では、ハイテク大手が快走する一方で、それ以外の銘柄が大きく後れを取っている状況に対して一部で懸念が強まっている。

  ニュースレター「ザ・セブンズ・リポート」を創業したメリルリンチの元トレーダー、トム・エッセイ氏は「ここ1週間のハイテク株の動向は、AIや量子コンピューティングといったテーマがすぐに下火になることはないと改めて想起させた」と指摘。一方で「ハイテク株の強さが、他の銘柄の平均的なパフォーマンスを覆い隠している」と述べた。

  エバコアISIのクリシュナ・グーハ氏によると、米金融当局は向こう3年の見通しに「トランプ・ショック」を完全には織り込まない見通しだ。

  元ニューヨーク連銀高官である同氏は「不確実性が高いトランプ時代に金融政策をうまく対応できるよう、米金融当局はベースラインを中心に高い柔軟性を確保するアプローチで臨んでいる」とリポートで記述した。

米国債

  米国債は5日続落。週間ではここ2カ月余りで最も大幅な下げとなった。来年の利下げペースが緩やかになるリスクが意識された。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.60%5.71.26%
米10年債利回り4.40%6.91.59%
米2年債利回り4.24%5.41.29%
  米東部時間16時57分

  米10年債利回りは4.40%に跳ね上がった。

  BMOキャピタル・マーケッツのストラテジスト、イアン・リンジェン氏は「タカ派的な利下げとなる可能性の方が高い米金融当局の次の動きに市場は備えている」と、12日付けのリポートに記述した。

原油

  ニューヨーク原油先物は反発。来年の供給過剰見通しはあるものの、地政学的リスクの高まりとロシアやイランに対する制裁措置の可能性の方がより強く意識された。ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は1バレル=71ドル台を回復。週間ベースでは約6%の上昇となった。

  ロシアはこの日、ウクライナ西部に対して大規模な攻撃を仕掛けた。戦争開始以降最大級の電力インフラへの攻撃だったと、ウクライナ当局は説明した。 バイデン米政権はロシアの石油取引に対する新たな制裁を検討している。 

関連記事:ロシアがウクライナ電力システムを再び攻撃、厳寒のなか停電広がる

  イランを巡っては、米次期政権で国家安全保障問題担当の大統領補佐官に起用されるマイク・ウォルツ下院議員が今週に入り、最大限の圧力をかけるというトランプ政権1期目の政策に回帰する方針を示した。

関連記事:トランプ氏、イランへの最大限の圧力行使に回帰へ-次期米政権高官

  需要面に目を向けると、世界最大の原油消費国である中国が2025年に政策の焦点を消費へとシフトする姿勢を鮮明にしたことで明るさが増した。ラピダン・エナジー・グループは、長期的には中国を中心に世界的な需要にけん引される形で、原油相場は2035年から好況期に入ると予想している。 

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物1月限は、前日比1.27ドル(1.8%)高の1バレル=71.29ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント2月限は1.08ドル(1.5%)上昇し、74.49ドルで引けた。

  ニューヨーク金相場は下落。ただ、FOMCが17-18日の会合で0.25ポイントの利下げを決めるとの観測を背景に、週間ベースでは上昇した。金利の低下は通常、利子を生まない金にとっては追い風となる。  

Gold Still Higher for Week | Bullion heads for gain on optimism over rate cuts

  金スポット価格は年初来では約29%上昇しており、年間ベースで2010年以来の大幅高に向かっている。その背景には、米利下げや地政学的リスクの高まりによる逃避需要、各国・地域中銀の持続的な買いがある。

  ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)は2025年の金相場について、経済成長やインフレなどが抑制要因となり、より緩やかな上昇にとどまると予想。トランプ次期米政権での貿易戦争の可能性や複雑な金利見通しが経済成長の下振れに波及し、投資家や消費者の需要に打撃を与える可能性があるとリポートで指摘した。

  金スポット価格はニューヨーク時間午後2時現在、前日比26.83ドル(1%)安の1オンス=2653.90 ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物2月限は33.60ドル(1.2%)下落し、2675.80ドルで引けた。

原題:Wall Street Weighs ‘Hawkish Cut’ While Tech Shines: Markets Wrap

  Yen, Sterling Drop the Most Against US Dollar: Inside G-10

  Oil Rises as Possible Iran, Russia Sanctions Temper Glut Outlook

  Gold Edges Lower as Traders Weigh Mixed US Data and Rate Outlook(抜粋)