リード スティーブンソン

  • 鴻海はEV参入に向け投資増、日産買収なら製造ノウハウ取得可能に
  • 日産とホンダは23日にも協議入り発表へ、「弱者連合」との声も

日産自動車とホンダは、経営統合の可能性も視野に、協議している

日産自動車ホンダによる経営統合も視野に入れた協議は、台湾の鴻海精密工業が日産に株式取得を打診したことで加速したようだ。事情に詳しい関係者が明かした。

  スマートフォンの受託生産で急成長した鴻海は電気自動車(EV)製造参入も進めており、世界各地の拠点で自動車生産ラインの設置を進めている。経営不振で大きく下落している日産株を取得すれば、自動車製造のノウハウなどを取得できる可能性がある。

  ホンダと日産は合併に関する予備的な協議を行っていると、協議が非公開であるため匿名を条件に関係者が明かした。三菱自動車が加わる可能性もあるとしている。協議は初期段階で、合意に至らない可能性もあるという。ホンダの青山真二副社長は18日、日産自動車との経営統合など含めてさまざまな選択肢を検討しているとコメントした。持ち株会社設立についても検討しているのは事実とも述べた。

Shinji Aoyama
ホンダの青山真二副社長Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  TBSは、経営統合の協議入りについて、両社が23日にも正式に発表する見通しだと報じた。

  非公開の情報であることを理由に匿名を条件に話した関係者の一人は、鴻海が関心を持っているのは工場などの設備だけではなく会社全体だと述べた。日産が交渉に応じたかや拒否したかなどについては明らかになっていない。鴻海による日産へのアプローチについてはダイヤモンド・オンラインが先に報じていた。

  日本経済新聞は、鴻海が日産に興味を示したことで、台湾企業による買収の可能性を懸念した日産がホンダとの合併に向けた動きを加速させた、と報じた。

  日産の広報担当者はコメントを控えた。鴻海の代表者は、今のところコメントしていない。

  日産株は18日の東京株式市場で前日比24%と、ブルームバーグの記録に残る1974年以来の急騰を見せた。2018年後半にカルロス・ゴーン前会長が逮捕されて以降、日産の株価は7割近く値下がりしている。ホンダの株価は3%下落し、およそ1年ぶりの安値で取引を終えた。

  米国市場でも、日産自動車の米国預託証券(ADR)が18日の取引で一時20%上昇し、取引時間中として1998年以降で最大の上げとなっている。日産のADRは前日も11%高。この日と合わせ、2日間の上昇率は30%を超える。

苦境

  日産は足元で業績が急速に悪化し、11月に生産能力の削減や9000人のリストラを行うと発表した。魅力に欠ける商品ラインナップは消費者の人気を失い、世界全体での生産の20%削減する計画も示した。

  それ以来、日産の株式を買い集めるアクティビスト(物言う投資家)を含め、さまざまな企業が日産を取り巻いている。ホンダの時価総額は日産の4倍以上だが、生産台数は日産よりわずかに多い程度だ。ホンダは経営統合を含めさまざまな選択肢を検討しているとしているが、交渉では優位に立つことが予想される。

ルノーは前向き

  日産や三菱自の長年にわたる提携相手で、日産株の36%を保有する筆頭株主である仏ルノーの対応も、今後のあらゆる合意において鍵となる。事情に詳しい関係者によると、ルノーは今回の交渉を、日産が苦境から脱する可能性があるとして、前向きにとらえているという。

  事情に詳しい複数の関係者によると、ルノーは日産に資金を投入するつもりはなく、同社が自ら経営強化策を見いだすことを強く望んでいる。この関係者らは、ルノーは日産を強化するような取引には原則として前向きだが、自社の利益を守るという観点から、日産に対する提案は全て慎重に評価すると述べた。また、日産とホンダの協議はまだ初期段階にあるとも指摘した。

業界再編

  ホンダと日産が手を組めば、トヨタ自動車と戦える規模感の企業が誕生し、世界的な競争に打ち勝つためのより有利な立場を得ることになる。また日本の自動車業界は実質的に2つの主要グループに集約される。1つはホンダ、日産、三菱自動車によるグループ、もう1つはトヨタ自動車と、同社が資本参加するSUBARU(スバル)、スズキ、マツダによるグループだ。

  立花証券のアナリスト、庵原浩樹氏は「日本には自動車メーカーが多すぎる。世界的に競争力を高めるためには合併が必要になってきている」と述べた。

Sources: Data from companies and the Bloomberg Terminal

  それでもホンダ、日産、三菱自の3社を合わせた今年上半期の販売台数は約400万台で、トヨタ単独の520万台には遠く及ばない。日産とホンダは、中国市場で比亜迪(BYD)など人気を高めている地場勢や米テスラを相手に苦戦するなど、海外市場で伸び悩んでいる。各市場で異なるスピードで進むEVシフトを背景に、数十年間続いてきたビジネスモデルは見直しを迫られている。

  いちよしアセットマネジメントの秋野充成社長は、両社の経営統合報道について、業界での弱い者同士の統合で、大きな動きというわけではないとコメント。両社が統合してもEVで覇権は握れないだろうと述べた。英調査会社ペラム・スミザーズ・アソシエイツのアナリスト、ジュリー・ブート氏は両社は事業領域に重複する部分も多く、統合に向けて解決すべき課題は多いと指摘した。

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原題:Honda Explores Nissan Rescue With Foxconn Also in Hunt for Stake(抜粋)