Rita Nazareth

  • S&P500種、日中は方向感に乏しい展開-前日は大幅高
  • ウォラーFRB理事、向こう数カ月における利下げの可能性示唆

16日の米国株市場でS&P500種株価指数は4日ぶりに反落。日中は上げ下げを繰り返す方向感に乏しい展開となった。前日は指標でインフレ鈍化が示されたことで市場に安心感が広がり、大幅高となっていた。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数5937.34-12.57-0.21%
ダウ工業株30種平均43153.13-68.42-0.16%
ナスダック総合指数19338.29-172.94-0.89%

  この日の市場は、トランプ次期大統領が財務長官に指名したスコット・ベッセント氏の指名承認公聴会を注視。ベッセント氏は、2017年の大型減税が延長されなければ、米経済は危機に直面すると警告した。S&P500種では大半の銘柄が上げたものの、大型ハイテク銘柄が下げ、全体の重しとなった。大型ハイテク7強「マグニフィセント・セブン」に連動するブルームバーグの指数は1.9%下げた。モルガン・スタンレーとバンク・オブ・アメリカ(BofA)が好調な決算を発表したものの、主要株価指数の押し上げには至らなかった。

  インタラクティブ・ブローカーズのホセ・トレス氏は「きのうの大幅な上昇を受けて、投資家は一時停止ボタンを押した」と分析した。

  BofAのストラテジストは、2025年に起こり得る展開をまとめた予想リポートを発表。その中で、2年続けて大幅高を記録した米国株が25年も同様の上昇を見せるのは難しいとの見方を示した。

  ジャレッド・ウッダード氏ら同行ストラテジストは今週のリポートで、S&P500種について、23年に24%、24年に23%と大きく上昇したことから、高いバリュエーションにより25年に同様の好パフォーマンスを達成するのは厳しいと予想。また一部銘柄に極端に集中している状況や、財政・金融政策を巡る不透明感といったリスクもマイナス要素として挙げた。

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  市場は企業決算に注目している。UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのデービッド・レフコウィッツ氏は「向こう数週間、第4四半期の決算シーズンにより、投資家の間では一部関心がマクロデータからミクロデータに移るだろう」と指摘。「われわれは引き続き、米国株に妙味があると考えている」と述べた。

  一方、ブラックロックのヘレン・ジュエル氏は、企業の決算シーズンが堅調だったとしても、株式相場が持続的に上昇する可能性は低いとみる。経済成長とインフレを巡る懸念を背景に、相場は脆弱(ぜいじゃく)な状況が続くとの見方だ。

  インタビューでジュエル氏は、「不安定な決算シーズンになるだろう。ただ必ずしも業績の数字そのものというわけではない」と指摘。「決算が予想を下回った場合に株価がどれだけ打撃を受けるかということより、予想を上回った場合にどれだけ上昇するかを私は気にしている。特に米国ではマルチプルが非常に高いためだ」と述べた。

国債

  米国債相場は上昇(利回りは低下)。米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事が向こう数カ月における利下げの可能性を示唆し、年内の利下げが2回以上になるとの見方が強まった。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.85%-2.6-0.53%
米10年債利回り4.61%-4.3-0.92%
米2年債利回り4.23%-3.0-0.69%
  米東部時間16時42分

  米国債は朝方に一時下げていたが、ウォラー理事の発言に反応して上げに転じた。ウォラー氏は米経済専門局CNBCで、良好なインフレデータが継続すれば、FOMCによる年内の利下げは現在の予想より多く、また時期も早くなり得ると語った。

関連記事:ウォラーFRB理事、25年前半に追加利下げも-インフレ良好なら (1)

  債券トレーダーは現在、年内合計で約41ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げを織り込んでいる。この日の早い段階では38bpだった。これは、今年2回目の0.25ポイント利下げの可能性が約65%に高まったことを意味する。年内最初の利下げについては、7月までの実施が完全に織り込まれている。

  ウェルズ・ファーゴ・セキュリティーズの金利ストラテジスト、アンジェロ・マノラトス氏は、ウォラー氏の発言について、「ハト派的であることに間違いない。FOMCの利下げサイクルは終了した可能性があるとの見方に冷や水を浴びせるものだ」と述べた。

Bond Traders Boost Rate-Cut Expectations

為替

  外国為替市場ではブルームバーグのドル指数が上昇したが、この日の高値からは離れた。ウォラーFRB理事のハト派的な発言に反応し、米国債利回りが低下したことが手掛かり。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1312.691.630.12%
ドル/円¥155.13-¥1.34-0.86%
ユーロ/ドル$1.0301$0.00120.12%
  米東部時間16時42分

  円は対ドルで続伸。2日間の上げとしては昨年11月以来の大きさとなった。ブルームバーグは関係者の話として、来週予定されるトランプ米次期大統領の就任時の発言を受けて金融市場などで大きな混乱が起きなければ、日本銀行は23、24日の金融政策決定会合で追加利上げを決める公算が大きいと報じた。

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円は続伸

  短期金融市場は現在、日銀が来週の会合で0.25ポイント利上げする可能性を84%織り込んでいる。

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原油・金

  ニューヨーク原油先物相場は反落。前日は昨年7月以来の高値に上昇していたが、ロシア産原油に対する新たな制裁措置をトランプ次期政権も継続するのかどうか見極めたいとの思惑が、市場参加者にはありそうだ。

  トランプ氏が財務長官に指名したベッセント氏は、ロシアの石油大手に対する制裁を支持する意向を表明。一方、事情に詳しい関係者によると、トランプ氏のアドバイザーらは、ロシアとウクライナの外交的合意を今後数カ月に促進すると同時に、イランとベネズエラを締め付ける広範囲に及ぶ制裁戦略を練っている。一つは、ロシアの石油生産会社に恩恵をもたらす措置を講じ、和平合意の成立を後押しする案。もう一つは、制裁をさらに強化し、圧力を一段と強めて交渉のカードを増やす選択肢だという。

関連記事:トランプ次期政権、ロシアに和平促す制裁戦略を準備-イランも圧迫へ

  CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏は「市場参加者は20日の米大統領就任式を見据えており、原油相場も上昇一服といったところではないか」と指摘。バイデン大統領による任期終了間際の制裁が「トランプ氏の就任初日の状況を変えた。トランプ氏は戦略の調整が必要かもしれない」と語った。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物2月限は、前日比1.36ドル(1.7%)安い1バレル=78.68ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント3月限は0.9%下落して81.29ドルで引けた。 

  金相場は3日続伸。前日発表の米CPIを受けて再燃した米利下げ観測が、利子の付かない金には引き続き追い風となっている。スポット価格は1オンス=2700ドルを上回り、約1カ月ぶりの高値に上昇。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物2月限は33.10ドル(1.2%)高の2750.90ドルで引けた。

原題:Stock Rally Stalls as Waller Remarks Boost Bonds: Markets Wrap(抜粋)

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