Rita Nazareth、Emily Graffeo
- 対メキシコ・カナダ関税の発動先送り報道をホワイトハウスが否定
- 一時1%近く上昇のS&P500種は値を消す、国債利回り総じて上昇
31日の金融市場は、関税に関するニュースにあらゆる資産クラスが振り回される展開となった。ハイテク銘柄を巡る懸念後退によってもたらされていた市場の落ち着きは一瞬で崩れた。
トランプ米大統領は2月1日からメキシコとカナダに25%の関税、中国には10%の関税を賦課する意向だと、ホワイトハウスのレビット報道官が確認。発動を3月1日に遅らせるとの一部報道を否定した。 これを受けて外国為替市場ではドルが買われる一方、株式相場は値を消した。
その後には、トランプ大統領が向こう数カ月に鉄鋼、アルミニウム、石油・ガス、医薬品、半導体を含む幅広い輸入品に関税を課すと発言。貿易相手国への威嚇を強めた。
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ブルームバーグ・ドル・スポット指数は5日連続で上昇し、一時は0.4%高となった。トランプ氏がカナダとメキシコに対する関税の発動を1カ月遅らせる方針だとのロイター通信の報道を受けて、同指数は下げていた。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1307.70 | 4.96 | 0.38% |
ドル/円 | ¥155.18 | ¥0.89 | 0.58% |
ユーロ/ドル | $1.0362 | -$0.0029 | -0.28% |
米東部時間 | 16時52分 |
ホワイトハウスの発表を受けて、カナダ・ドルは対米ドルで下落。月間ではおよそ8年ぶりの長期下落局面となった。
円は対ドルで下落。0.6%安の155円22銭まで売られる場面があった。ドル買い優勢の流れに加え、日本銀行の植田和男総裁のハト派的な発言を受けて早期の利上げ観測が後退し、円を圧迫した。
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ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)のシニア市場ストラテジスト、エリアス・ハダッド氏は「植田氏のコメントは日本の政策金利が向こう2年に1%前後でピークに達する可能性が高いことを示唆している」と指摘。「日銀の浅い政策正常化サイクルは円にとって継続的な逆風になっている」と述べた。
株式
米国株式市場は反落。S&P500種株価指数は一時1%近く上昇していたが、関税に関する発表を受けて売りが膨らんだ。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 6040.53 | -30.64 | -0.50% |
ダウ工業株30種平均 | 44544.66 | -337.47 | -0.75% |
ナスダック総合指数 | 19627.44 | -54.31 | -0.28% |
S&P500種は0.5%安、ナスダック100指数は0.1%安で終了。ダウ工業株30種平均は0.8%下落した。
フランクリン・テンプルトン・インベストメント・ソリューションズのマックス・ゴクマン氏は「強気派は今週の市場混乱の中でも冷静さを保とうと最善を尽くしてきたが、先行き不透明感の重圧から、株価の動向を静観することができなくなっている」と指摘。「週末を控え、大統領の側近らでも詳細を把握しているとは思われず、強気派の間では納屋に戻って想定される嵐が過ぎるのを待つ動きが出ている」と述べた。
昨年12月の米個人消費支出(PCE)統計では、連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ指標として重視するPCEコア価格指数が低い伸びにとどまり、追加利下げを後押しする内容となったが、市場の反応は限定的だった。
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エヌビディアは約4%値下がり。ブルームバーグは中国の人工知能(AI)スタートアップ、DeepSeek(ディープシーク)がシンガポール経由でエヌビディアの先端半導体を入手したか、米当局が調査していると報道した。また関係者によると、エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)はトランプ大統領と31日にホワイトハウスで会談する予定だ。
ミラー・タバクのチーフ市場ストラテジスト、マット・メイリー氏は「AIブームは今後もポジティブな要因であり続けるだろうが、過去6カ月に市場が織り込んできたほど強力なものではなくなる公算が大きい。株式市場がこうした見方に適応せざるを得なくなるまでにそれほど時間はかからないと当社ではみている」と指摘。今週の動向を受けて、AIブームによる収益押し上げ期待に少なくとも一定の抑制がかかるとの考えを示した。
ガベリ・ファンズのポートフォリオマネジャー、ジョン・ベルトン氏は「ディープシークは依然として重要なテーマだ」と指摘。「ディープシークがいくつかの素晴らしい技術的進歩を達成したことは明らかで、他のAI開発者がモデルをより効率的に構築するのに寄与するだろう」と話す。
一方で「ディープシークの進歩に関して伝えられている情報は誤解を招くものが多い。これは革命的ではなく、むしろ進化的なもので、コンピューティング能力が時間とともに効率を高めていくことで想定される自然かつ通常の技術進歩と整合する」と述べた。
米国債
米国債相場は総じて下落。2月1日の関税発動が予定される中、1月最後の取引となったこの日、取引終盤にかけて売り圧力が高まった。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.79% | 3.2 | 0.67% |
米10年債利回り | 4.54% | 2.6 | 0.59% |
米2年債利回り | 4.20% | -0.6 | -0.14% |
米東部時間 | 16時53分 |
10年債利回りは4.55%近辺と、27日につけた高水準の4.60%をやや下回る水準となった。
原油
ニューヨーク原油先物相場は小幅に下落。終日プラス圏とマイナス圏を行きつ戻りつする展開だった。カナダとメキシコに対する関税措置発動の時期と対象範囲に関して、異なる情報が飛び交った。
ホワイトハウスのレビット報道官が、カナダとメキシコ、中国に対する関税措置は2月1日に開始されるとあらためて表明したことを受け、ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は1バレル=73ドルを上回る場面があった。
それ以前には、関税発動は3月1日まで延期され、一部輸入品の免除を認め得るとしたロイター通信の報道を受けて供給混乱懸念が和らぎ、1.1%下落していた。
ダーン・ストライフェン氏らゴールドマン・サックス・グループのアナリストは「カナダとメキシコに賦課する25%関税の対象にカナダ産原油が含まれたとしたら、まず米国の中西部のガソリン価格が上昇する可能性が高い。その後、需要軟化を通じて、いずれは世界的に原油相場への重しとなるだろう。特にカナダは石油生産業者による輸出の選択肢が限られており、打撃を受けやすい」とリポートに記した。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物3月限は、前日比20セント(0.3%)安の1バレル=72.53ドルで終了。
ロンドンICEの北海ブレント3月限は11セント安の76.76ドルで引けた。3月限はこの日が最終取引日。4月限は22セント(0.3%)下げて75.67ドルで引けた。
金
金スポット相場は小幅に続伸し、初めて1オンス=2800ドルを上回った。カナダやメキシコなどに対する関税措置発動が意識され、安全資産である金への逃避買いが起きた。
トランプ米大統領による関税措置発動は貿易戦争につながり、経済成長を損なう恐れがあるとの懸念が広がった。また、同氏の減税と移民政策は米国の財政を痛め、インフレを再燃させる可能性もある。
金スポットはニューヨーク時間午後2時31分現在、前日比8.20ドル(0.3%)高の1オンス=2802.79ドル。一方、ニューヨーク商品取引所の金先物4月限は、10.20ドル(0.4%)下げて2835ドルちょうどで引けた。
原題:Stocks Jolted by Tariff Anxiety as Dollar Climbs: Markets Wrap
Dollar Jumps as White House Says Tariffs on Feb. 1: Inside G-10
Treasuries Extend Drop Into Month-End With Tariff News in Focus
Oil Settles Lower After Trump’s Tariff Whiplash Roils Markets
Gold Climbs to Record as Traders Weigh Threat From Tariffs(抜粋)