By Andrea Shalal, Jarrett Renshaw, David Lawder
[1日 ロイター] – トランプ米大統領は1日、カナダとメキシコからの輸入品に25%の関税、中国からの輸入品に10%の追加関税を4日から課す大統領令に署名した。世界経済を減速させ、インフレを再燃させる恐れのある新たな貿易戦争につながる可能性がある。
メキシコとカナダは報復関税を課すと表明し、中国は世界貿易機関(WTO)を通じて異議を申し立てるとともに、他の「対抗措置」を取る方針を示した。
トランプ氏は不法移民や合成麻薬「フェンタニル」の流入を巡る国家非常事態が終わるまで関税を継続するとしている。
石油精製会社や中西部諸州からの懸念を踏まえ、カナダからのエネルギー製品に対する関税率は10%とする。メキシコからのエネルギー輸入には25%の関税を課す。
米国勢調査局によると、2023年のカナダからの原油輸入は1000億ドル近くに上り、同国からの輸入全体の約4分の1を占めた。
自動車メーカーは特に大きな打撃が予想される。カナダとメキシコで生産される自動車は、最終組み立て前に部品が複数回、国境を越えるケースもあるため、新たな関税によって広範なサプライチェーン(供給網)に負担が生じることになる。
カナダのトルドー首相は、米国の関税措置に対抗して1550億カナダドル(約1065億米ドル)相当の米国製品に25%の関税を課すと記者会見で表明した。また、トランプ氏の関税により食料品やガソリンの価格が上昇し、自動車組立工場が閉鎖され、ニッケル、カリウム、ウラン、鉄鋼、アルミニウムなどの供給が制限される可能性があると米国民に警告した。 もっと見る
メキシコのシェインバウム大統領はXへの投稿で、関税および非関税の対抗措置を講じるよう経済相に指示したと明らかにした。 もっと見る
カナダとメキシコはトランプ氏の関税に対抗するため協力していると述べた。
中国商務省は対抗措置の詳細を明らかにしていない。同省は米国に率直な対話と理解も呼びかけ、協議の余地を残した。 もっと見る
大統領令によると、関税徴収は米東部時間4日午前0時01分(日本時間午後2時01分)に始まる。1日午前0時01分より前に船舶や、米入国前の最終輸送手段に積み込まれた貨物は対象外となる。
トランプ氏は関税の裏付けとして、「国際緊急経済権限法」と「国家非常事態法」に基づき国家非常事態を宣言した。これにより、大統領は危機に対処するために制裁を科す幅広い権限を得るが、専門家によると、両法に基づく広範な関税発動の権限については未検証という。
ホワイトハウス当局者は、関税に適用除外は設けられないとし、3カ国が米国からの輸入品に対し報復措置を取った場合、トランプ氏は関税を引き上げる可能性が高いと述べた。
さらに、カナダについては800ドル未満の小口貨物に対する関税免除措置を取り消すと説明。カナダがメキシコとともに、税関検査があまり行われない小口貨物を通じてフェンタニルやその原料となる化学物質を米国に輸送するルートになっていると述べた。
共和党は今回の措置を歓迎。一方、業界団体や民主党は物価への影響に強い懸念を示した。
全米外国貿易評議会(NFTC)のプレジデント、ジェイク・コルビン氏は、トランプ氏の措置が「アボカドから自動車まであらゆるもの」の価格を押し上げるとし、米、カナダ、メキシコに事態の悪化を回避するため早急に解決策を見いだすよう訴えた。
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▽自動車株が大幅安、トヨタ5%超安 トランプ関税に懸念<ロイター日本語版>2025年2月3日午前 9:49 GMT+9
▽メキシコ、米関税への対抗措置を3日発表-シェインバウム大統領<bloomberg日本語版>2025年2月3日 7:38 JST
▽トランプ氏、3日にカナダとメキシコの首脳と電話会談へ<ロイター日本語版>2025年2月3日午前 9:57 GMT+9