Rita Nazareth

  • 米求人件数が予想より減少、米国債利回り低下-アルファベット決算
  • 米中が関税の応酬、金はまた最高値更新-景気減速懸念で原油反落

4日の金融市場は前日の乱高下から落ち着きを取り戻し、米株式相場は反発。再び押し目買いが活発になり、大型ハイテク株が上昇をけん引した。

  引け後に発表されたグーグルの親会社アルファベットの決算では、売上高がアナリスト予想に届かず、株価は時間外で下落。クラウド事業の成長減速が示された。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6037.8843.310.72%
ダウ工業株30種平均44556.04134.130.30%
ナスダック総合指数19654.02262.061.35%

  貿易戦争を巡る不透明感で下げていた株式相場は、一連の企業決算を消化しながら勢いを取り戻した。パランティア・テクノロジーズやインフィニオン・テクノロジーズなど大型ハイテク企業が強気な売上高見通しを示し、センチメントを明るくした。ブルームバーグがまとめたハイテク7強「マグニフィセントセブン」指数は1.7%上昇。メタ・プラットフォームズは12営業日連続高と、最長記録を更新した。

DOJ Will Push Google To Sell Chrome To Break Search Monopoly
注目されるアルファベットの決算Photographer: Gabby Jones/Bloomberg

  パイパー・サンドラーのクレイグ・ジョンソン氏は「短期的な市場の動揺は、短期的に良好な買い場だ」と述べた。

  この日発表された昨年12月の米求人件数は予想以上に減少し、3カ月ぶり低水準となった。労働市場の漸進的な減速と整合的だった。エバコアISIのクリシュナ・グーハ氏はこのデータが7日に発表される雇用統計に向け、上方向のリスクを緩和すると指摘。連邦準備制度理事会(FRB)と市場にとっては追い風となり得ると述べた。

  米中による関税の応酬は、習近平国家主席が第1次トランプ政権時代よりも慎重な姿勢で臨んでいることを浮き彫りにした。トランプ米大統領はメキシコとカナダに対する関税発動を土壇場で1カ月先送りする一方、中国に対しては予定通り発動。中国は10日から約80品目への追加関税を発動する対抗措置を即座に打ち出した。

  パルナサス・インベストメンツの最高投資責任者、トッド・アールステン氏は「一連の関税が最終的にもたらすインパクトは、予想されていたほどではないと考えるのはまずまず妥当だろう」と話す。「これらの関税はまた、最終交渉の第1ラウンドも意味し、そのために最終的なインパクトは弱まる可能性がある」と述べた。

  ハイテク株の比重が大きいナスダック100指数は1.3%上昇。パランティアは24%上げた。スーパー・マイクロ・コンピューターは11日に最新の業況説明を行う計画を明らかにし、株価は8.6%高。

Big Tech Leads Stock-Market Rebound
ブルームバーグ・マグニフィセント7トータルリターン指数出所:ブルームバーグ

  ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)がまとめたデータによれば、1月に下げたセクターはテクノロジーだけだった。S&P500種は同月に2.7%上昇し、2000年からの1月平均(0.1%安)を大きく上回った。

  BIのジーナ・マーティン・アダムズ、マイケル・キャスパー両ストラテジストは「米株相場は1月に上昇し、過去最高値近辺で堅調に推移したものの、水面下では問題が噴出していた」と指摘する。「当社のマーケットパルス指数が示唆したセンチメントは異様な熱気を帯びていた。市場が崩れやすいという警告サインが出ていたところに、関税という大きなリスクが再浮上した」と説明した。

  個銘柄のニュースでは、個別銘柄のニュースでは、メルクがヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン「ガーダシル」の対中国輸出を一時停止すると明らかにした。エスティローダーは5800-7000人の人員削減を行うと発表。新しい最高経営責任者(CEO)の下で経営立て直しを進める。ファイザーの昨年10ー12月期(第4四半期)決算は、新型コロナウイルスのワクチンと飲み薬の販売が好調だったため、売上高は予想を上回った。

米国債

  米国債相場は総じて上昇。利回りは4-5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下した。朝方に12月の米求人件数が予想以上に減少したことを受け、取引は活発になった。相場上昇は午後の取引でもおおむね維持された。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.75%-4.5-0.94%
米10年債利回り4.51%-4.4-0.98%
米2年債利回り4.21%-3.7-0.88%
  米東部時間16時48分

  2-10年と5-30年のスプレッドは朝方に拡大したものの、徐々に縮小に向かい、前日終値から1bp以内に収まった。

  相場上昇の大半は午前の求人件数発表後のもの。5日には民間雇用者数、7日には1月の雇用統計が発表される。

  午後の取引では目立った動きがなく、出来高は20日平均を5%上回る程度だった。連邦公開市場委員会(FOMC)の日程を考慮したスワップ取引にも変化は見られず、3月会合に向けては3bpの利下げ、年間では累計43bpの利下げが織り込まれている。

外為

  ドル指数は6営業日ぶりに下落。メキシコとカナダに対する米関税の適用先送りと、中国への関税発動の解釈が進む中、米国債利回りが低下したことが背景にある。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1300.58-9.21-0.70%
ドル/円¥154.32-¥0.41-0.26%
ユーロ/ドル$1.0379$0.00350.34%
  米東部時間16時48分

  主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は0.7%下げた。日中取引としては、20日にトランプ大統領が就任して以来の大幅安となった。

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  サンタンデールの米担当チーフエコノミスト、スティーブン・スタンレー氏は中国関税について「世界経済における米国の優位性を見せつけたいトランプ氏にとって、これは最初の号砲に過ぎない可能性が高い」と指摘。「どう対応するかは中国側が決める。10%関税に対する報復は、最初の一歩としては本気の度合いを示すのに十分だが、エスカレーションを招くほど強硬とは必ずしも言えない」と述べた。

  ブルームバーグ・ドル指数の1カ月物リスクリバーサルは3日のピークから下げたものの、依然として昨年6月に記録した高水準に近い。

Options Sentiment Remains Positive on Dollar

Risk reversals ease but stay near most bullish since June

https://www.bloomberg.com/toaster/v2/charts/tuelytekkqwa8z3ehjboayi73lr2wdj4.html?brand=cojp&webTheme=default&web=true&hideTitles=true

Source: Bloomberg

  円は0.3%上昇し、一時は1ドル=154円17銭を付けたが、対ドルでの上昇としては主要10通貨の大半に見劣りする。リスク志向の改善が背景にある。

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原油

  ニューヨーク原油先物相場は反落。米国が発表した対イラン制裁強化よりも、米中貿易戦争による景気減速懸念の方が強く意識された。

  ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は早い時間帯には、米中関税が世界の経済成長を阻害し、エネルギー需要を減少させるとの懸念から一時3.4%安となった。その後、トランプ氏がイランへの経済的圧力を強化する措置に署名したことを受けて下げ幅を縮小した。

Oil Whipsawed by Trump's Tariff Actions
WTI先物出所:NYMEX

  イランは過去4年間、制裁回避や米国の制裁執行緩和により、原油輸出を日量約100万バレル増やしてきた。制裁が強化されればイランの石油輸出は約3分の2削減される可能性がある。  

  中国は米国による追加関税への報復措置として、米国からの石炭と液化天然ガス(LNG)に15%、石油と農業用機器に10%の関税を課すと発表した。昨年の米国の対中原油輸出は日量平均約25万バレルにとどまり、相対的には多くない。ただ、世界の二大経済大国間の貿易摩擦が激化すれば広範な影響を及ぼし、世界の消費に打撃を与える恐れがある。

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  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物3月限は、前営業日比46セント(0.6%)安の1バレル=72.70ドルで終了。一方、ロンドンICEの北海ブレント4月限は0.3%高の76.20ドルで引けた。

  金相場は上昇。スポット価格は連日の最高値更新となった。米中による報復関税合戦への懸念を受けた逃避需要で金が買われている。

Gold's Rally Gets Trade-War Boost | Precious metal hovering near record high
金スポット相場出所:ブルームバーグ

  コメルツ銀行のアナリスト、カーステン・フリッチ氏は「関税を巡るトランプ大統領の不規則な意思決定が不確実性を強めており、それが安全資産としての金の追い風になっている」と語った。

  金スポットはニューヨーク時間午後2時10分現在、前日比28.14ドル(1%)高の1オンス=2843.35ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物4月限は、18.70ドル(0.7%)高の2875.80ドルで引けた。

原題:Stock Buyers Step In to Fuel Wall Street Rebound: Markets Wrap(抜粋)

原題:Alphabet Falls After Disappointing Cloud Sales Drag on Revenue(抜粋)

原題:Treasuries Rally After Soft Jobs Data, Hold Gains Across Curve(抜粋)

原題:Dollar Slides With Yields as Traders Weigh Tariffs: Inside G-10(抜粋)

原題:Oil Falls as Trade War Fallout Concerns Outweigh Iran Sanctions(抜粋)

原題:Gold Rises to a New Record as Trump Embarks on China Trade War(抜粋)