Rita Nazareth
- マグニフィセントセブンは1.5%安、米統計受け米国債利回りは低下
- 金は最高値更新が続く、需要ひっ迫の兆候-原油は今年の安値を更新
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5日の外国為替市場ではドルが下落。ブルームバーグ・ドル指数は約1週間ぶりの安値を付けた。トランプ米政権による関税発動が世界貿易戦争にエスカレートすると危惧されていたが、その脅威は後退した。対ドルでの上昇率は円が主要10通貨中トップ。日本の賃金統計が強い数字となったため、日本銀行による将来の利上げ期待が強まった。
関連記事:名目賃金は28年ぶり高水準、所得環境の改善続き日銀正常化を後押し
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1297.70 | -2.88 | -0.22% |
ドル/円 | ¥152.64 | -¥1.70 | -1.10% |
ユーロ/ドル | $1.0402 | $0.0023 | 0.22% |
米東部時間 | 16時41分 |
円は一時1.4%上昇し、1ドル=152円12銭とほぼ2カ月ぶりの安値を付けた。ドルは対円で153円付近にあった100日移動平均と200日移動平均を割り込んだ。ユーロは対円で一時1.1%下げ、1ユーロ=158円80銭を付けた。
日本では名目賃金の伸び率が1997年1月以来の高水準となった。米供給管理協会(ISM)非製造業指数が発表されると、円は上げ幅を伸ばした。
ドル・円の1年物リスクリバーサルは、昨年10月中旬以来で最も強気な円見通しを示している。
ゴールドマン・サックスの通貨ストラテジスト、テレサ・アルベス氏は「対円でのドルについては、日銀の政策軌道の織り込み直しが売りの戦術を促す可能性がある一方で、米経済の見通しの方が重要性において勝ると、当社では引き続き考えている」とリポートに記した。
主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は、一時0.4%下落し1月27日以来の安値。50日間移動平均を割り込んだ。米ISM非製造業指数の低下が響いた。
ステート・ストリートのグローバルマクロ担当シニアストラテジスト、マービン・ロー氏は「関税について市場はまだ尻込みしているようだ」と語る。「ドルは強いガードになるだろう」とブルームバーグテレビジョンで述べた。
ISM統計より前に発表された民間雇用者数は予想を上回る増加だった。
Options Traders Most Bullish on Yen Since October
Source: Bloomberg
米国株
米株式相場は反発。大半のセクターが上昇した一方、一部のハイテク大手から発表された四半期決算は好感される内容ではなかった。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 6061.48 | 23.60 | 0.39% |
ダウ工業株30種平均 | 44873.28 | 317.24 | 0.71% |
ナスダック総合指数 | 19692.33 | 38.31 | 0.19% |
S&P500種株価指数は朝方の下げから上昇に転じ、約350銘柄が値上がりした。エヌビディアが半導体株の上昇をけん引したが、大型ハイテク7強の「マグニフィセントセブン」は全体で1.5%下げた。グーグルの親会社アルファベットが決算を受けて約1年ぶりの大幅安となった。アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は業績見通しが嫌気されて6.3%下落した。
一貫しない経済データや貿易を巡る緊張、人工知能(AI)に投じられた巨額の資金が奏功するのかといった疑問で、ウォール街は揺れている。ネーションワイドのマーク・ハケット氏は今年最初の数週間に流れた一連のニュースを引き合いに、ボラティリティーはいつ発生してもおかしくないことを投資家は明確に突きつけられたと述べた。
「年間を通じて投資家がいかにボラティリティーをくぐり抜けたかに比べれば、最終的な今年の株価パフォーマンスははるかに重要性で劣る」と同氏は指摘。「2022年終盤からの強くて安定したリターンで、油断した投資家がいるかもしれないが、マーケットは概して、5%から10%の下げを毎年3度経験するものだ」と述べた。
先週の市場では中国のスタートアップDeepSeek(ディープシーク)の登場で、エヌビディアの時価総額が5000億ドル吹き飛んだ。アルファベットの決算を受けて、市場では大型ハイテク企業による設備投資への疑問が浮上。大型ハイテク株は強気相場の原動力となってきた。「マグニフィセントセブン」はこの2年間、S&P500種上昇分の半分以上に寄与してきたが、利益の伸びは減速しつつある。
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ヤルデニ・リサーチの創業者エド・ヤルデニ氏は「米国株式市場の中では引き続き大型株を選好するが、S&P493への関心は強まっている」と、大型ハイテク7強を除いたS&P500種に言及。「生産性が向上し、ハイテク7強が活用し生み出した(AIや自動化といった)ハイテクのソリューションが実行されるのに伴い、7強を除いた企業の利益率が上昇し得ると当社では考えている」と述べた。「変動が大きいマクロニュースで過小評価されてきたバリュー株に押し目買いのチャンスが生まれても、罠に落ちないよう注意が必要だ」と述べた。
ハイテク株の比重が大きいナスダック100指数は0.4%下げた。ユナイテッドヘルス・グループは1%安。同社は投資家ビル・アックマン氏の投稿に対する懸念を証券取引委員会(SEC)に伝えた。ウーバー・テクノロジーズは業績見通しが嫌気され、7.6%下落した。
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著名な空売り投資家、ジム・チャノス氏は向こう6ー12カ月に米市場が直面する最大のリスクは誰にも分からないと指摘する。最近ではディープシークの例が示すように、今後の試練は予測不能な事象になるからだという。ディープシークの衝撃で米株式市場ではおよそ1兆ドル相当の時価総額が吹き飛んだ。
「現実のリスクというのは、突然死角から現れて人々の考えを一新するディープシークのようなものになるだろう」とチャノス氏は5日、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで話した。「それが何であるかはそもそも分からない」と語った。
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個別企業のニュースでは、中国の競争当局はアップルがアプリ開発業者に課す手数料と商慣行を巡り、調査の可能性に備え下準備を進めている。ウォルト・ディズニーの第1四半期(2024年10-12月)決算は、売上高と利益が市場予想を上回った。
米国債
米国債利回りは今年の最低を更新。ISM非製造業指数が予想より弱く、長期債利回りを中心に一時10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余り低下した。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.64% | -10.5 | -2.21% |
米10年債利回り | 4.42% | -8.8 | -1.96% |
米2年債利回り | 4.18% | -2.9 | -0.69% |
米東部時間 | 16時41分 |
経済データを受けて、市場では連邦公開市場委員会(FOMC)が年内に利下げを再開するとの見方が強まった。相場の上昇は統計発表前に始まっていた。米財務省は中長期債の発行規模を「少なくとも向こう数四半期」据え置くとするガイダンスを維持した。
Treasury Curve Extends Flattening Trend From January
Source: Bloomberg
アメリベット・セキュリティーズの米金利トレーディング・ストラテジー責任者、グレゴリー・ファラネロ氏は利回り低下につながるデータのために「資金の流れは長期債の買いに傾斜している」と指摘。10年債利回りについては短期的に4.25-4.75%のレンジを同氏は予想している。
短期債利回りの下げが比較的小幅だったのは、経済のシグナルが強弱まちまちで、トランプ政権による関税の脅威が政策金利の維持につながる可能性が意識されたからだ。モルガン・スタンレーのエコノミストは4日、3月利下げの予想を取り下げた。
FOMCは昨年3度にわたって政策金利を引き下げた。市場では数週間前から、追加利下げの予想時期が6月と9月の間で揺れている。この日の市場では6月までの利下げ織り込み具合が深まり、引き続き7月までの利下げ確率を100%と予想していることが示された。
原油
原油先物相場は続落。ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は1バレル=72ドルを割り込み、年初来安値を更新した。中東問題からエネルギーへの関税まで、トランプ米大統領の政治姿勢が原油市場のセンチメントに重くのしかかっている。
ラボバンクのグローバル・エネルギー・ストラテジスト、ジョー・デローラ氏は「次の地政学的な突発事項で再び価格が上昇するまで、原油の下落は続くとみている」と語った。
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シティー・インデックスのアナリスト、ファワド・ラザクザダ氏は「米中貿易戦争が需要に及ぼす悪影響と世界的な供給量の増加が、原油価格の足かせとなっている」とリポートに記した。
投資家はトランプ氏の動きを総じて原油には弱材料とみているが、イスラエルとパレスチナ自治区ガザを巡る問題や対イラン制裁についての同氏の姿勢は引き続き相場の波乱要因になるとみられる。
関連記事:トランプ氏、イランの「繁栄」認める新たな核合意に意欲-姿勢軟化か
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物3月限は、前営業日比1.67ドル(2.3%)安の1バレル=71.03ドルで終了。一方、ロンドンICEの北海ブレント4月限は2.1%安の74.61ドルで引けた。
金
金相場は続伸し、スポット価格は再び過去最高値を更新した。貿易戦争への懸念が安全資産への逃避需要を押し上げている。市場には短期的な需給逼迫(ひっぱく)の兆候もある。
金スポット価格は一時、前日比1.4%高の1オンス=2882.36ドルを付けた。その後、ウクライナ停戦計画を巡るブルームバーグの報道が伝わると上げ幅を縮めた。事情に詳しい複数の関係者によると、来週ドイツで開催される「ミュンヘン安全保障会議」で米国の同盟国は、トランプ政権がウクライナでの戦争を終結させる計画を発表すると予想している。
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金需要は、関税が課される前に金地金を米国に輸送しようとする金取引業者の動きでも押し上げられている。
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ストーンXグループの市場分析責任者、ローナ・オコネル氏は、ニューヨーク商品取引所(COMEX)の保管庫に金塊が流れ込んでいることで需給のタイト化に拍車が掛かっていると指摘。「もし需給が大幅に引き締まったり、市場が無秩序化する恐れがある場合には、公的部門が流動性を注入しても驚きではない。中央銀行が容認しないことの一つが金市場の混乱だからだ」と語った。
ニューヨーク商品取引所の金先物4月限は、前日比17.20ドル(0.6%)高の1オンス=2893.00ドルで引けた。
原題:Dollar Extends Slide as Immediate Tariff Risks Ease: Inside G-10(抜粋)
原題:Stock Traders Look Past AI Jitters as Bonds Climb: Markets Wrap(抜粋)
原題:Treasury Yields Slide to Year’s Lows After Services Index Drop(抜粋)
原題:Oil Falls to Lowest Settlement Price of 2025 as Traders Flee(抜粋)
原題:Gold Hits Fresh Record on Haven Demand as Tightness Persists(抜粋)