Rita Nazareth

  • テク銘柄上昇、トランプ氏の鉄鋼・アルミ関税計画で素材株も堅調
  • 米国債まちまち、ドル指数は伸び悩み-金は最高値更新

10日の米株式相場は反発。先週末はインフレや米関税を巡る懸念で下げていたが、この日はテクノロジー株や素材株が買いを集め、指数を押し上げた。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6066.4440.450.67%
ダウ工業株30種平均44470.41167.010.38%
ナスダック総合指数19714.27190.870.98%

  ナスダック100指数は1.2%高で終了。エヌビディアは5営業日続伸となり、この間の上昇率は約15%となった。メタ・プラットフォームズはこれで16営業日続伸。

  トランプ大統領が米国が輸入する全ての鉄鋼とアルミニウムに25%の関税賦課を計画していることを受け、素材株も堅調。USスチールやアルコアが買われた。

Last Day Of Trading For 2024 At The NYSE And NASDAQ
市場は今週、関税や物価統計、FRB議長の議会証言に注目Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

  世界貿易の動向以外に投資家が今週注目しているのは、米インフレ指標とパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言だ。

  ニューヨーク連銀がこの日公表した米消費者の1年先と3年先インフレ期待はいずれも3%で、前月から変わらずだった。

関連記事:米消費者の1年先インフレ期待、1月は変わらず-NY連銀調査 (1)

  モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのマネジングディレクター、クリス・ラーキン氏は今週の相場について、「インフレ統計やパウエルFRB議長の議会証言、関税が動かすことになるだろう」と指摘。

  「S&P500種が2カ月に及ぶ膠着(こうちゃく)状態を脱するには、ネガティブサプライズの小休止が必要かもしれない。DeepSeek(ディープシーク)や関税、消費者センチメントといった要素が過去2週間にわたって足をすくってきた」と述べた。

   ヘッジファンドが先週、米国株の大量購入者として浮上した。予想を上回る好調な企業決算を受けて、それまでの弱気な姿勢を転換した。ゴールドマン・サックス・グループのプライムブローカレッジがまとめた7日締めのリポートによると、5週連続で売り越しを続けていたヘッジファンドは、11月以来のペースで米国株を買い進めた。

関連記事:ヘッジファンド、米国株大量買いの動き-好調な企業決算受け強気に

  マグニフィセント・セブンに関するブルームバーグの指数は0.4%高。小型株で構成するラッセル2000指数も0.4%高で引けた。

  ビスポーク・インベストメント・グループのストラテジストらは「旧約聖書には神でさえ7日目に休んだとある」と指摘。「トランプ氏の2期目は、就任早々からノンストップでニュースが飛び込んでくる。ただ、そうした中でも市場は驚くほど落ち着いている」と分析した。

  アメリプライズのアンソニー・サグリンビーン氏は「ニュースのサイクルに反応しない方が良い投資成績を上げられるかもしれない」と指摘。「短期的には関税やハイテク大手、金利に関する動向を静観すべきだろう。まだ結果が分からないことを基にして投資の決定を下せば、事態が反対方向に動いた場合、間違えるリスクが高まる」と述べた。

米国債

  米国債市場では短中期債が上昇(利回り低下)し、長期債が下落(利回り上昇)。欧州債市場の多くでイールドカーブがスティープ化した流れを受けた。

  ただ、明日以降に重要イベントを控え、この日はそれほど大きな値動きにはならなかった。10年債利回りはほぼ変わらずの4.5%。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.71%1.70.36%
米10年債利回り4.50%0.40.09%
米2年債利回り4.27%-1.5-0.34%
  米東部時間16時54分

  11日には米3年債、12日に10年債、13日に30年債の入札がそれぞれ行われる。

外為

  外国為替市場ではドル指数が続伸。トランプ大統領が、米国に輸入する全ての鉄鋼とアルミニウムに25%の関税を賦課する計画を発表すると前日に表明。リスク回避でドルを買う動きが優勢となった。

  円は他の主要10通貨全てに対して下落した。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1303.512.740.21%
ドル/円¥152.00¥0.590.39%
ユーロ/ドル$1.0305-$0.0023-0.22%
  米東部時間16時54分

  ドル指数は一時0.3%上昇し、4日以来の日中高値を付けたものの、その後は伸び悩む展開。関税措置の発表が相次いでいることに、市場関係者がやや閉口している状況が示唆される。 

  JPモルガン・チェースのストラテジスト、ミーラ・チャンダン氏とアリンダム・サンディリア氏は、関税を巡るめまぐるしい動きを踏まえると「関税措置によってドルが第1四半期に大幅に上昇するとは、もはや言えないかもしれない」と述べた。

  欧州時間に円は対ドルで一時0.75%安の1ドル=152円54銭。その後は主に151円台後半から152円台前半での推移となった。

  マネックスの外国為替トレーダー、ヘレン・ギブン氏は、円が先週、対ドルで約2.5%上昇したことを受け、利益確定の動きが見られたと指摘。「関税に関する議論が実際の関税導入を意味するわけではないことを考えると」、安全資産への逃避で円が買われる状況はそこまで見られなかったと述べた。

原油

  ニューヨーク原油相場は続伸。需給ひっ迫の兆候と、地政学的緊張の高まりが価格を押し上げた。依然としてトランプ大統領の関税計画にセンチメントを圧迫され、価格は年初来安値付近で推移した。

  ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)はバレル当たり72ドル台で引けた。先週までは週間ベース3週連続で下げ、昨年9月以来の長期下落局面となっていた。1月のロシア原油生産は、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成される「OPECプラス」が同国に割り当てた産油量に届かず、供給超過の不安を和らげた。欧州では天然ガス価格が2年ぶり高値に達し、石油を熱源とする発電を促している。現物トレーダーは中東の緊張激化にも注目している。イスラエルとイスラム組織ハマスは、6週間の停戦合意が破られたとお互いを非難している。

  原油価格は1月高値から10%下落。ヘッジファンドは過去2週間にWTIのロングポジションを手じまい、ショートポジションを2カ月ぶり高水準に膨らませた。

  CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏は「ポジショニングの急激な調整で相場上昇の余地ができた。エクスポージャーを縮小したトレーダーは多い」と述べた。

Oil Edges Higher as Trump's Tariffs Reverberate | WTI's backwardation has narrowed sharply in recent sessions
上段:WTI先物、下段:WTIのプロンプトスプレッド出所:CME、ブルームバーグ・ドル指数

  トランプ政権は先週、予定通りに対中関税を発動。これに対抗する中国の報復関税は10日に発動された。貿易戦争はOPECプラスに現行生産枠の再延長を促すリスクがあると、マルタイン・ラッツ氏らモルガン・スタンレーのアナリストはリポートで指摘した。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物3月限は、前営業日比1.32ドル(1.9%)高い1バレル=72.32ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント4月限は同1.6%上げて75.87ドルで引けた。

  ニューヨーク金相場は再び過去最高値を更新。トランプ米大統領が表明している鉄鋼・アルミニウム関税の発表を控え、金融市場では世界的に不透明感が深まった。

  金スポット価格は1オンス=2911.72ドルまで上昇。先週は2.2%上げていた。米政権から相次いで打ち出される貿易への脅威が、安全資産の需要を押し上げている。

関連記事:トランプ氏、鉄鋼とアルミに25%関税発表へ-日鉄はUSS過半保有せず

  ウエストパック銀行のアナリスト、リチャード・フラヌロビッチ氏は「金はまだスウィートスポットにある。これを阻む材料は見られない」とリポートで指摘。「トランプ氏は同盟国も敵対国も関係なく、関税で脅し、予想がつかない。BRIC諸国が脱ドル化を進めるなら100%の関税を課すとも脅している。これらは全て安全な金の魅力を高める」と述べた。

Spot Gold Rallies to Record High Amid Haven Buying | Bullion has advanced above 10% this year in march to new all-time highs
金スポット価格(右軸)とブルームバーグ・ドル指数(左軸)出所:ブルームバーグ

  トレーダーらは米金融政策の方向性を把握しようと、11日と12日に行われるパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の証言も注目している。パウエル氏は追加利下げを急いでいない主な理由として、経済の底堅さを強調するとみられている。その場合、投資家に利息を与えない金投資には理論上、弱気なシナリオとなる。

  それでも金には価値保存という役割があり、不確実性の時代に投資意欲を喚起し続けている。貿易と移民に関する米政策がインフレ再燃につながり、経済成長に影響するのかどうか、市場は米経済と金融政策への意味合いを解読しようと務めている。

  中国人民銀行(中央銀行)は1月に金を購入。これで3カ月連続での準備拡大となった。金が過去最高値圏にあってもなお、準備多様化のコミットメントが変わらないことを示唆した。同中銀はまた、国内の大手保険会社に資産の最大1%を金に投資することを認める試験プログラムを発表。民生証券のリポートによると、これは2000億元(約4兆1600億円)に上る可能性がある。

関連記事:中国の保険会社、最大4.2兆円の金投資可能に-試験プログラム始動

  金スポット価格はニューヨーク時間午後2時22分現在、前営業日比44.34ドル(1.6%)高の1オンス=2905.41ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物4月限は、同46.80ドル(1.62%)高い2934.40ドルで引けた。

原題:Stocks Climb as Traders Brush Aside Tariff Threats: Markets Wrap(抜粋)

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